1型糖尿病患児の看護過程作成に悩んでいる看護学生の皆さん、こんにちは。
ゴードンの機能的健康パターンを用いた小児の1型糖尿病の看護過程は、血糖コントロール、インスリン療法の導入、幼児期特有の発達段階への配慮、家族への指導など、多面的なアセスメントが求められるため、多くの学生が難しく感じるテーマです。
本記事では、1型糖尿病で入院した6歳男児の架空事例を用いて、13の機能的健康パターン別にアセスメントのポイントと看護問題の導き方を具体的に解説します。
この記事を読むことで、小児糖尿病患者の全体像把握から看護計画立案までの流れが理解でき、実習記録作成の参考になるはずです。
事例紹介|1型糖尿病で入院した6歳男児
患者プロフィール
M君、6歳男児、保育園年長組
診断名:1型糖尿病
既往歴:特記事項なし
家族構成:両親と3人暮らし(一人っ子)、近所に祖父母在住
発症の経緯
1月中旬から水分を欲しがることが増え、トイレの回数も増加していました。
1月下旬からご飯をおかわりすることが多くなり、お菓子をねだることも増えました。
元気な子だと思っていましたが、最近ソファで横になっていることが多く心配になりました。
保育園からもトイレの回数増加の連絡があり、1月末に近医を受診しました。
2月初旬に1型糖尿病と診断され、緊急入院となりました。
入院時データ(2月1日)
身長115cm、体重21kg、ローレル指数138.1(普通体重)
バイタルサイン:体温36.8℃、脈拍100回/分、呼吸数26回/分、血圧90/60mmHg、SpO2 98%
血糖値350mg/dL、HbA1c 9.0%(著明な高血糖)
検査データ:TP 7.0g/dL、Alb 4.1g/dL、Hb 12g/dL、Na 150mEq/L、K 4.0mEq/L
尿検査:尿糖(3+)、尿ケトン体(2+)
現在の状態(2月9日、入院9日目)
バイタルサイン:体温36.6℃、脈拍90回/分、呼吸数22回/分、血圧104/58mmHg
血糖値:食前98〜105mg/dL、食後120〜130mg/dL(正常範囲)
眼底検査:正常(合併症なし)
治療内容
インスリン療法:1日3回(各食前)
食事療法:1550kcal/日、塩分6g/日
自己血糖測定:指導開始、自己実施可能
13の機能的健康パターン別アセスメントのポイント
1. ヘルスプロモーション(健康知覚・健康管理パターン)
主観的データ(S情報)
お菓子、お菓子
1日3回も注射するの嫌だよ
注射嫌だな、おうちにかえりたいな
客観的データ(O情報)
6歳男児、保育園年長組
1型糖尿病
出生:在胎38週5日、出生体重2800g、乳幼児健診問題なし
予防接種:年齢相応に接種済み
入院時:BS 350mg/dL、HbA1c 9.0%
現在:BS食前98〜105、食後120〜130(正常化)
1月中旬:多飲多尿
1月下旬:食欲増進、お菓子要求増加
自己血糖測定:2月4日から自己実施可能
アセスメントの要点
幼児期後期では、言語能力が発達し、病気や治療の必要性を子どものわかる言葉で説明すると理解できるようになります。
しかし、初めての経験には不安や恐怖のため強く抵抗することが少なくありません。
入院初期・治療開始初期であり、血糖コントロールができていない状態でした。
自覚症状がなく、糖尿病の成り行きについて十分な知識がないため、危機と感じていませんでした。
病識が乏しいと、症状発見が遅れ、ケトアシドーシスなど危険な合併症を引き起こす恐れがあります。
インスリン注射や血糖測定に恐怖心がありましたが、2月4日には自己血糖測定ができるようになっています。
一人っ子で甘やかされており、母親に依存している部分が多いため、健康管理は母親への指導を中心に行う必要があります。
母親は早期に受診しており、M君の健康状態に注意していることから、今後も適切な健康管理が期待できます。
看護問題
糖尿病、インスリンの投与、病識の乏しさに関連した血糖不安定リスク状態
発病直後・入院初期で幼児のため病気・治療への知識不足、穿刺の恐怖があることに関連した非効果的健康管理
2. 栄養
主観的データ(S情報)
先生、僕ね、最近すぐお腹が減るし、トイレに行くことが増えて嫌なんだ
客観的データ(O情報)
身長115cm、体重21kg、ローレル指数138.1(普通体重)
入院時:BS 350mg/dL、HbA1c 9.0%、TP 7.0g/dL、Alb 4.1g/dL、Hb 12g/dL
電解質:Na 150mEq/L、K 4.0mEq/L
1月中旬から多飲多尿
1月下旬から食欲増進、お菓子要求増加
母親:料理が苦手で外食やファストフード多い
入院後:1550kcal/日、全量摂取
栄養士指導実施
アセスメントの要点
ローレル指数138.1で普通体重です。
栄養状態は良好(TP、Alb、Hb正常)です。
電解質はNa 150mEq/Lとやや高値ですが、大きな乱れはありません。
入院前の高血糖は、エネルギー摂取過多(外食、ファストフード多用)が要因です。
1型糖尿病の食事療法は、同年代の健康な子どもと同じエネルギー摂取、各栄養素のバランスが基本です。
1日の総エネルギーは1000+(年齢×100)kcalが目安で、M君は1600kcalが適正です。
病院食1550kcal/日を全量摂取しており、必要なカロリーが摂取できています。
両親は栄養士の指導に積極的であり、今後の適切な食事管理が期待できます。
看護問題
高血糖に関連した体液量不足リスク状態(治療により改善傾向)
3. 排泄
主観的データ(S情報)
先生、僕ね、最近すぐお腹が減るし、トイレに行くことが増えて嫌なんだ
客観的データ(O情報)
1月中旬から多飲多尿
保育園からトイレ回数増加の連絡
排尿回数:2/2は11回、2/3は10回、2/4は8回(徐々に正常化)
排便回数:1回/日(正常)
BUN 10mg/dL、Cr 0.8mg/dL(腎機能正常)
尿検査:尿糖(3+)、尿ケトン体(2+)→改善傾向
電解質:Na 150mEq/L(高ナトリウム血症)
アセスメントの要点
多飲多尿は高血糖症状によるものです。
高ナトリウム血症を呈していますが、重症レベル(160mEq/L以上)ではありません。
排尿回数は入院時は頻尿でしたが、徐々に正常化しています。
排便回数は正常で、便秘は見られていません。
腎機能は正常で、糖尿病性腎症の徴候はありません。
看護問題
なし(治療により改善)
4. 活動/休息
主観的データ(S情報)
はやくクラブのみんなとサッカーしたいな
客観的データ(O情報)
入院前:サッカーが好きで、友達と公園で遊んでいた
入院後:病棟内散歩、プレイルーム、リフティング毎日実施
リフティング後、低血糖症状(手の震え)出現
バイタルサイン正常範囲内
筋・骨格系の障害なし、ADL自立
アセスメントの要点
サッカー(共同・組織化された遊び)を好み、リフティングができることから、6歳児として正常な発達を遂げています。
バイタルサインに異常なく、循環器系・呼吸機能に問題ありません。
1型糖尿病では制限される運動はなく、どのような競技でも実施できます。
運動は血糖値を下げるため、低血糖予防に補食をしたうえで参加することが重要です。
退院後も学校で運動を継続することは、良好な血糖コントロールを保つうえで大切です。
看護問題
なし
5. 認知/知覚
主観的データ(S情報)
先生、僕ね、最近すぐお腹が減るし、トイレに行くことが増えて嫌なんだ
客観的データ(O情報)
母親:どうしてうちの子が…注射をするなんてかわいそう
母親:退院してから病院と同じように作れるか心配です
母親:誕生日にはケーキくらい食べていいですよね
父親:カレーやハンバーグが好きだけど食べられますか
眼底検査:正常(合併症なし)
アセスメントの要点
M君は自分の身に起きたことを論理的に他者に話すことができており、6歳児として正常な発達です。
M君と両親は初めてのことで、1型糖尿病に関する知識が不足しています。
1型糖尿病の食事療法は、摂取してはならない食品があるわけではありません。
糖質を多く含む菓子類は血糖値上昇をきたすため、間食の内容・習慣の見直しが必要です。
母親は子どもの病気を受け入れられず、混乱している可能性があります。
合併症である網膜障害や末梢神経障害の徴候はありません。
看護問題
突然の糖尿病発病に関連した知識不足
6. 自己知覚
主観的データ(S情報)
1日3回も注射するの嫌だよ
はやくクラブのみんなとサッカーしたいな
客観的データ(O情報)
注射嫌だな、おうちにかえりたいな
リフティング後に低血糖症状出現
入院前はサッカーを楽しんでいた
アセスメントの要点
注射を嫌がっており、これは幼児特有の自己中心性です。
自分の置かれている状況を理解し、そのための行動を取ることができていません。
入院前の生活との違いに違和感や焦りを感じていますが、あまり不安は感じられません。
今後、理解度を把握しながら疾患の成り行きを説明し、危機感を持ってもらうことで血糖コントロールへの動機づけが必要です。
看護問題
なし
7. 役割関係
主観的データ(S情報)
はやくクラブのみんなとサッカーしたいな
客観的データ(O情報)
父親:子供のことは妻に任せきりだったが、今後は食事や運動のサポートをしていきたい
母親:私も一緒にインスリン注射や食事を習ってサポートしたい
母親:ママ友に知られたらどうしよう
入院後:リフティング毎日継続
近所に祖父母在住
アセスメントの要点
集団での遊び(サッカー)を行うなど、幼児期後期相応の行動で正常な発達です。
両親の発言から、今後の療養生活への協力が得られます。
祖父母も近所に住んでおり、サポートを受けやすい環境です。
入院によりサッカーができず不満がありますが、リフティングで若干の満足感が得られています。
入院期間が長いと、友人との交流が図れず、発達への悪影響のおそれがあります。
保育園職員との連携が必要です(低血糖対処法、補食の必要性など)。
母親は1型糖尿病であることをママ友に知られることを気にしていますが、周知は療養生活で重要です。
看護問題
なし
8. セクシュアリティ
主観的データ(S情報)
なし
客観的データ(O情報)
6歳男児
アセスメントの要点
6歳であり、現時点でこのパターンに関する問題は考えられません。
看護問題
なし
9. コーピング/ストレス耐性
主観的データ(S情報)
1日3回も注射するの嫌だよ
客観的データ(O情報)
注射嫌だな、おうちにかえりたいな
1月下旬からお菓子要求増加
入院後:病棟内散歩、プレイルーム、リフティング毎日継続
2月4日:自己血糖測定可能に
アセスメントの要点
これまでのコーピングでは、情動焦点型が優先し、低血糖症状に対しカロリー過剰摂取など不健康な行動をとっていました。
治療の重要性を理解できていません。
しかし、2月4日には自己血糖測定ができるなど、自己管理方法を獲得しつつあります。
「おうちにかえりたいな」と入院生活にストレスを感じていますが、風船リフティングで適切なストレス対処ができています。
看護問題
なし
10. 生活原理(価値・信念パターン)
主観的データ(S情報)
なし
客観的データ(O情報)
なし
アセスメントの要点
家族の子育てに関する価値観が子どもへの対応に影響するため、今後情報収集が必要です。
看護問題
なし
11. 安全/防衛
主観的データ(S情報)
なし
客観的データ(O情報)
リフティング後、低血糖症状(手の震え)
入院前:サッカー、自転車で活発
冬休みに自転車練習で転倒、膝擦過傷、血を見るのが苦手に
アセスメントの要点
危険を察知して回避する知的能力に乏しく、年齢相応の発達です。
活発であり、思わぬ事故も発生しやすい状況です。
糖尿病患者は傷が治りにくく、重症化することがあり注意が必要です。
足の傷は糖尿病足病変に進展することがあり、予防、早期発見、早期治療が大切です。
家族が事故予防方法を理解し、安全な環境を整えられるよう指導が必要です。
看護問題
なし
12. 安楽
主観的データ(S情報)
1日3回も注射するの嫌だよ
はやくクラブのみんなとサッカーしたいな
客観的データ(O情報)
注射嫌だな、おうちにかえりたいな
入院前:サッカーを楽しんでいた
自転車練習で転倒、血を見るのが苦手に
入院後:リフティング毎日継続
アセスメントの要点
クラブのみんなとサッカーをしたいと不満を訴えています。
血を見るのが苦手で、注射や血糖測定に抵抗を見せています。
入院に対し不満や不安を抱えており、治療意欲が減退し、適切な血糖自己管理を習得できないおそれがあります。
血糖コントロールが良好であれば、退院後も今まで通りサッカーができることを伝え、治療意欲向上につなげます。
入院中もリフティングを継続し、サッカーをしたいという欲求に寄り添います。
看護問題
入院生活に関連した安楽障害
13. 成長/発達
主観的データ(S情報)
1日3回も注射するの嫌だよ
客観的データ(O情報)
注射嫌だな、おうちにかえりたいな
母親:自分たちで注射ができるようになるか不安、毎日何回も注射することがかわいそう
母親:退院してから病院と同じように作れるか心配です
アセスメントの要点
注射を嫌がる自己中心的発言は、年齢相応の発達です。
母親は今後の療養生活に不安を抱いています。
血糖コントロール不良が続き入院が長期化すると、幼児期〜学童期相応の社会生活や学習活動ができず、発達遅延のリスクが生じます。
段階的に疾患や治療を説明し、健康管理を獲得することで早期退院が可能となり、発達遅延リスクを解消できます。
看護問題
入院の長期化や社会生活への支障が生じた場合、発達遅延リスク状態となる
看護問題の優先順位と看護計画の立案
13の機能的健康パターンでアセスメントを行った結果、以下の看護問題が抽出されます。
優先度の高い看護問題
糖尿病、インスリンの投与、病識の乏しさに関連した血糖不安定リスク状態
発病直後・入院初期で幼児のため病気・治療への知識不足、穿刺の恐怖に関連した非効果的健康管理
突然の糖尿病発病に関連した知識不足
看護目標の例
退院時までに、適切な血糖コントロールができる
退院時までに、M君と家族が1型糖尿病の管理方法を理解し実践できる
1週間以内に、インスリン注射と血糖測定を受け入れることができる
看護計画(OP・TP・EP)の例
OP:血糖値の変化、低血糖・高血糖症状、バイタルサイン、食事摂取量、活動量、インスリン注射・血糖測定への反応、M君と家族の理解度、家族の不安の観察
TP:インスリン注射・血糖測定時の付き添いと励まし、できたことを褒める、低血糖時の適切な対応、活動時の見守り、家族への精神的支援、保育園との連携調整
EP:M君の理解度に合わせた疾患説明、インスリン療法の必要性の説明、低血糖症状と対処法の指導、食事療法の指導、運動時の補食の必要性の指導、家族への総合的な指導
まとめ|小児1型糖尿病看護過程のポイント
小児1型糖尿病患者の看護過程を機能的健康パターンで展開する際は、血糖コントロール、発達段階に応じた指導、家族への支援、退院後の生活調整を総合的にアセスメントすることが重要です。
本事例のM君のように、幼児期の患児では、病識の獲得、治療への動機づけ、家族を中心とした自己管理指導が重要な看護の柱となります。
看護学生の皆さんは、このような架空事例を参考にしながら、実際の患児の個別性を大切にした看護過程を展開してください。
小児糖尿病看護は、急性期の血糖管理から退院後の長期的な自己管理支援まで継続的な視点が必要であり、患児が疾患と上手に付き合いながら、健やかに成長発達できるよう支援することが看護の重要な役割となります。








