肺炎患者の看護計画作成に悩んでいる看護学生の皆さん、こんにちは。
老年看護学実習における誤嚥性肺炎患者の看護計画は、急性期の呼吸管理、再発予防、嚥下障害への対応、退院後の生活調整、高齢の配偶者への介護支援など、多面的な視点が求められるため、多くの学生が難しく感じています。
本記事では、誤嚥性肺炎で入院した83歳男性患者の架空事例を用いて、ゴードンの機能的健康パターン別にアセスメントのポイントと看護計画の立案方法を具体的に解説します。
この記事を読むことで、肺炎患者の全体像を捉えたアセスメントと実践的な看護計画が作成でき、実習記録作成の参考になるはずです。
事例紹介|誤嚥性肺炎で入院した83歳男性
患者プロフィール
G氏、83歳男性、元採石場作業員
診断名:誤嚥性肺炎(4回目の入院)
既往歴:脳梗塞(68歳時)、高血圧、ラクナ梗塞
家族構成:妻と二人暮らし(子供なし)
性格:頑固、几帳面、決めたことはする
身体データ
身長172cm、体重78kg、BMI 26.37(軽度肥満)
入院時(6月1日):体温38.2℃、脈拍98回/分、血圧90/68mmHg、呼吸32回/分(浅い)、SpO2 93%
6月7日:体温37.2℃、脈拍80回/分、血圧96/58mmHg、呼吸18回/分、SpO2 96%
意識レベル:JCS I-1(入院時)、問いかけへの返答はやや遅い
神経学的所見
脳梗塞後遺症:右上下肢不全麻痺、嚥下障害、軽度の関節拘縮
軽い構音障害あり
検査データ(入院時)
総蛋白6.0g/dL、アルブミン3.0g/dL(低栄養)
CRP 4.0mg/dL、WBC 10800/μL(感染徴候)
Na 138mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 108mEq/L(正常範囲)
BUN 21mg/dL、Cr 0.7mg/dL(正常範囲)
尿量1500mL
入院前の生活
60歳で43年間勤めていた採石場の作業員を退職、妻と年金生活
63歳で高血圧とラクナ梗塞を指摘されたが、自覚症状はなく治療せず放置
喫煙:1日20本、飲酒:日本酒1日2合
食習慣:3食規則的だが、若い頃から塩辛い味付けが好きで、肉や揚げ物を好む
毎日晩酌し22時就寝、翌朝5時まで睡眠
午前中は散歩や買い物を妻と一緒に、旅行にも出かけていた
68歳で脳梗塞発症、右上下肢不全麻痺、嚥下障害出現、2ヵ月後に自宅退院
ADLの状態
移動:ベッドからの起き上がりは自力で可能、左上肢で柵などにつかまっての立位や杖歩行はできるが、時折バランスが悪くふらつきあり
食事:セッティング介助必要、利き手交換をおこない食事は自立摂取できるが、水分の多いものでは咳き込み、むせが多い
排泄:トイレは手すりを使ってゆっくりと歩行できる、排泄時は便座への移動動作の見守りとズボン・下着の上げ下げの介助、排便時はトイレットペーパーを使用分切ることはできないので介助、排便は1回/2日
清潔:利き手交換した左手で歯磨きや洗面は時間をかければできる、デイサービスで入浴2回/週(浴室の見守りと浴槽への移動、タオルを絞る動作の介助、背中を洗う動作の一部介助)
社会資源の利用
要介護3、介護保険で訪問看護を週1回、デイサービス2回/週を利用
2人の年金で生活に支障なく過ごしている
発症の経緯
5月24日:デイサービスで食事時のむせが頻繁に見られるようになり微熱を指摘されたが、訪問看護を受けているため受診せず
5月31日夜より38.0度の発熱と胸の痛みを訴えた
6月1日:訪問看護師より促され受診し、誤嚥性肺炎で入院
過去に3回ほど誤嚥性肺炎で入院経験あり
現在の状態(入院6日目、6月7日)
湿性の咳嗽あり、胸が痛いと訴え、自力で痰を喀出している
点滴:ビーフリード500mL×2、ユナシン(1.5g)
塩分制限食7g/日
食事摂取量:おかゆ5口と副食2口のみ
食事以外の水分摂取も少なく、訪問看護でも時折看護師から指導を受けている
夜間、胸の痛みと倦怠感で断続的な睡眠しか取れていない
妻に足をさすってもらううちに入眠した
16時、点滴の滴下状態を確認するために看護師が訪室すると尿失禁していた、やや濃縮した尿
倦怠感があり、G氏の許可を得て紙おむつを使用
12時、おむつ交換時に仙骨部の皮膚に浸軟がみられる
仙骨部の評価はブレーデンスケールで14点
口唇と口腔粘膜に乾燥あり
ギャッチアップし含嗽を介助するとうなだれた姿勢になってしまう、頭部を起こし深呼吸してもらうと覚醒状態も改善する
患者の発言
甘いものは嫌い、お粥は味もしないし力もでん!白米がいい
顔を洗っても人前に出るわけでないし
(おしっこが)出たのが、わからなかった
うちは二人暮らしで、家内も無理はできないから
味がわからない、おいしないね、早くベッド下げて
もうお昼ですか(覚醒状態が悪い時)
面会に来た妻に「だいじょうぶだから…毎日来なくていい」と言う
ゴードンの機能的健康パターン別アセスメント
1. 健康知覚・健康管理パターン
情報
83歳男性
脳梗塞の既往により右上下肢不全麻痺、嚥下障害、軽度の関節拘縮
妻と二人暮らし、子供はいない
60歳で43年間勤めていた採石場の作業員を辞め、自宅で妻と年金生活
63歳で高血圧とラクナ梗塞を指摘されたが、自覚症状はなく治療せず放置
喫煙1日20本、日本酒1日2合
食習慣は3食規則的に食べていたが、若い頃から塩辛い味付けが好きで、肉や揚げ物を好んでいた
68歳で脳梗塞、右上下肢不全麻痺、嚥下障害、2ヵ月後に自宅退院
要介護3、介護保険で訪問看護を週1回、デイサービス2回/週を利用
過去に3回ほど誤嚥性肺炎で入院経験
おかゆ5口と副食2口のみ摂取
うちは二人暮らしで、家内も無理はできないから
分析・解釈
【誤嚥性肺炎の発症要因】
G氏は脳梗塞の既往により右上下肢不全麻痺、嚥下障害、軽度の関節拘縮があります。
高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症といった生活習慣病や、喫煙習慣、飲酒習慣は、動脈硬化や血栓の危険因子ですが、これまでのG氏の食生活から、それらの因子を多く有していたことが考えられます。
アルコールの節度ある適度な飲酒量は1日平均純アルコールで約20g程度とされており、これは日本酒1合に相当します。
G氏は2合飲んでいたことから、1日にアルコール約40gを摂取していたと考えられます。
1日当たりのアルコール摂取量が男性で約40g以上になると生活習慣病のリスクを高める飲酒量と定義されており、G氏もリスクが高い状態にありました。
また、常習的に塩辛い物や揚げ物を摂取しており、それらは動脈硬化の要因となり高血圧を引き起こします。
これらの要因が重なって脳梗塞を発症したものと考えられます。
しかし、自覚症状が無く放置していたことから、健康管理の意識も低かったことが推測されます。
【不顕性誤嚥のリスク】
脳梗塞を発症すると、明らかな身体症状がなくても、神経伝達物質の欠乏(ドーパミンの不足による嚥下反射物質サブスタンスPの放出低下)によって咳反射や嚥下反射の神経活動が低下します。
そのため、不顕性誤嚥による誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。
それによって今回の発症に至ったと考えられます。
また、過去に3回ほど誤嚥性肺炎で入院経験があることから、退院後も引き続き誤嚥性肺炎の再発に注意していく必要があります。
【自己による健康管理の困難】
G氏は83歳であり、後遺症による障害も残っていることから、自己による健康管理は今後も難しいことが予測できます。
「うちは二人暮らしで、家内も無理はできないから」という発言もあり、キーパーソンである妻の年齢は不明ですが、家庭でも十分なサポートは得られない状況にあると考えられます。
食思は低下しており、栄養状態は今後悪化する一方ですが、意欲や身体機能の向上が見られない限り、改善は難しい状況です。
今後、訪問看護師や他職種と連携し、G氏の誤嚥性肺炎の再発防止に向けて関わっていく必要があります。
看護問題
自己による健康管理が困難である
2. 栄養・代謝パターン
情報
食習慣は3食規則的に食べていたが、若い頃から塩辛い味付けが好きで、肉や揚げ物を好んでいた
セッティング介助必要、利き手交換をおこない食事は自立摂取できるが、水分の多いものでは咳き込み、むせが多い
食事以外の水分摂取も少なく、訪問看護でも時折看護師から指導を受けている
甘いものは嫌い、お粥は味もしないし力もでん!白米がいい
食事摂取量:ほぼ出されたものは全量食べている(入院前)→おかゆ5口と副食2口のみ(入院後)
身長172cm、体重78kg、BMI 26.37
TP 6.0g/dL、Alb 3.0g/dL
塩分制限食7g/日
口唇と口腔粘膜に乾燥あり
CRP 4.0mg/dL、WBC 10800/μL
仙骨部の評価はブレーデンスケールで14点
分析・解釈
【栄養状態の評価】
高齢者の1日の栄養摂取カロリーは、70歳以上の身体活動レベルⅠではおおよそ1850kcalといわれています。
G氏の場合は、食事は規則的に3食とも摂取していましたが、情報として摂取カロリーが明記されていないため判断ができません。
BMIは26.37であり軽度の肥満Ⅰとなっています。
TP 6.0g/dL、Alb 3.0g/dLで血清総タンパクやアルブミン値はやや低めですが、数日前からの発熱と食欲低下もみられていることから考えると、肺炎による影響で食欲や栄養状態を示す数値がやや低下していますが、生命の危機に直結する可能性は低く、明らかな逸脱とはいえません。
【誤嚥リスク】
食欲がなく経口摂取もおかゆ5口、副食2口ということから考えても、咳嗽や呼吸苦などの症状がある中で、食事を摂取することは、誤嚥を助長することになり、状態の悪化を招くおそれがあります。
食事摂取時の観察、評価は必須であり、必要時、食事形態の変更として普通食からとろみ食やペースト食、あるいは非経口食への切り替えが必要です。
【感染と代謝亢進】
肺炎により炎症反応がCRP 4.0mg/dL、WBC 10800/μLであり感染徴候はあります。
発熱は代謝を亢進させ、エネルギーの消費を増大させるため、解熱をはかり、必要なエネルギー量が摂取できるよう援助が必要です。
【口腔内の衛生】
安静により、口唇乾燥や含嗽も介助が必要な状況となっていることから、口腔内の衛生が保てていないと思われます。
このため、口腔洗浄不十分以外にも唾液量不足が強い口臭を起こしていると考えます。
口渇に対する明らかな自覚がなく、訴えたり、飲水行動を起こすことができていません。
高齢者は身体活動低下に合わせ体内水分量も減少傾向にあります。
そのため、脱水の危険性が高い状況です。
脱水は電解質バランスを狂わせ、精神機能や筋活動の低下・生命危機を招くリスクがあるため、栄養のバランスとともに脱水の予防が必要です。
看護問題
感染リスク状態(肺炎、栄養不良、侵襲的ライン、口腔洗浄不十分に関連した)
3〜11. その他のパターン(要点のみ)
3. 排泄パターン
電解質異常なし、腎機能正常
発熱による不感蒸泄・発汗の増加
濃縮尿、尿失禁
水分摂取量の低下により便秘リスク
**看護問題:**便秘リスク、尿失禁
4. 活動・運動パターン
肺炎により換気・血流比の不均衡、ガス交換障害
労作時の呼吸苦、体動に対する呼吸困難
ADL低下(バランス悪くふらつきあり、うなだれた姿勢)
仙骨部の皮膚に浸軟(ブレーデンスケール14点)
廃用症候群のリスク
**看護問題:**ガス交換障害(肺炎に関連した)、活動耐性低下(酸素の供給/需要のアンバランス、呼吸器疾患、床上安静に関連した)
5. 睡眠休息パターン
入院前:毎日晩酌し22時就寝、翌朝5時まで睡眠(アルコールは睡眠の質・量を低下させる)
入院後:夜間、胸の痛みと倦怠感で断続的な睡眠しか取れていない
環境変化への不適合
**看護問題:**睡眠障害
6. 認知・知覚パターン
発熱に伴う倦怠感、意識障害(JCS I-1)
咳嗽、喀痰、胸痛による安楽障害
自覚症状を述べることができている
自己や他者の状況を認知し、理解し、問題解決や意思決定を行うことが可能
**看護問題:**安楽障害(咳嗽、胸痛、倦怠感に関連した)
7. 自己知覚・自己概念パターン
急な入院、身体機能の低下に直面
食事に対する意欲もなく、持続した苦痛
高齢の妻に対する配慮(夫としてやさしい一面)
現時点では自己概念に影響を与えるような問題はない
**看護問題:**不安(呼吸数の増加、胸痛、入院に関連した)
8. 役割・関係パターン
妻と二人暮らし、子供なし、キーパーソンは妻
年金生活、要介護3
訪問看護週1回、デイサービス2回/週利用
繰り返す入退院によりADL低下、妻の介護負担増大
**看護問題:**非効果的役割遂行、介護者役割緊張リスク状態
9. セクシュアリティ・生殖パターン
妻と二人暮らし、子供なし
**看護問題:**なし
10. コーピング・ストレス耐性パターン
咳嗽と胸の痛みといった身体症状によるストレスや不安
フィンクの危機モデル:防衛的退行の段階
自力で痰を喀出している(対処行動)
妻への配慮ができている
**看護問題:**非効果的コーピング
11. 価値・信念パターン
繰り返す再発に対する不安
デイサービス利用で生活リズムを整えていたが、以前のような妻との外出などの余暇はない
**看護問題:**道徳的苦悩(不安、自信喪失に関連した)
看護計画(優先順位第1位)
看護問題:ガス交換障害(関連因子:肺炎)
期待される成果(看護目標)
安静時の呼吸苦が消失する
労作時の呼吸苦が改善される
OP(観察計画)
呼吸器症状の有無(呼吸苦・咳嗽など)
安静時と労作時の呼吸の状態(回数・性状・リズム)、循環(脈拍数・動悸など)の状態
呼吸音(左右差、副雑音の聴取・減弱など)、SpO2、血液ガスデータ
喀痰の有無、性状、量
酸素の投与量
呼吸苦が出現する状況
食事摂取時に誤嚥を疑う症状がないか
安楽な姿勢
胸部X線検査所見
TP(ケア計画)
安楽な姿勢がとれるように調整する
労作時の酸素消費量が最小限に抑えられるように援助する
EP(教育計画)
呼吸苦が出現した場合や、痰の量、性状に変化があった場合の観察方法や対応方法について説明する
労作について無理をしないよう説明する
まとめ|肺炎患者看護のポイント
誤嚥性肺炎患者の看護では、急性期のガス交換障害への対応、誤嚥予防、栄養管理、再発予防、高齢の配偶者への介護支援が重要な柱となります。
本事例のG氏のように、脳梗塞後遺症による嚥下障害があり、過去に複数回の誤嚥性肺炎の既往がある患者には、退院後の再発予防が最重要課題となります。
また、高齢の妻が主たる介護者である場合は、介護負担の軽減と社会資源の活用が不可欠です。
看護学生の皆さんは、このような架空事例を参考にしながら、実際の患者さんの個別性を大切にした看護計画を立案してください。
肺炎看護は、急性期の呼吸管理から回復期のADL向上、退院後の再発予防まで継続的な視点が必要であり、患者とその家族が安心して生活できるよう支援することが看護の重要な役割となります。








