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看護計画

排泄セルフケア不足の看護計画|原因・観察・具体策まで看護師がわかりやすく解説

この記事は約12分で読めます。

排泄は、人が毎日くり返す最も基本的な生活行動の一つです。

しかし病気・怪我・加齢・術後の経過などによって、トイレに行く・衣服を下ろす・後始末をするといった一連の動作が自分一人ではできなくなることがあります。

この状態を看護診断では排泄セルフケア不足と呼びます。

セルフケア不足という言葉は、アメリカの看護理論家ドロセア・オレムが提唱した「セルフケア理論」に由来しており、日本の看護計画でも広く用いられている概念です。

排泄セルフケア不足は、単に「排泄の介助が必要な状態」を指すのではありません。

その人が本来持っているセルフケア能力と、今の身体・精神・環境の状況との間にギャップが生まれている状態を意味しています。

だからこそ看護師には、そのギャップをできる限り埋める関わりが求められます。

全部介助してしまうのではなく、残っている力を活かしながら、その人らしい排泄を支えることが排泄セルフケア不足の看護の核心です。

このブログでは、排泄セルフケア不足の原因・アセスメント・看護計画の立て方まで、看護学生や若手ナースが実践に使えるよう、わかりやすくまとめました。


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排泄セルフケア不足が生じる原因を整理する

排泄に関するセルフケアができなくなる背景は、身体的・認知的・心理的・環境的な要因に分けて考えることができます。

実際には複数の要因が重なっていることが多く、どれが主な原因かを丁寧に見極めることがアセスメントの出発点になります。

▼ 身体的な原因

筋力低下と廃用症候群は、排泄セルフケア不足のもっとも多い背景です。

長期の入院・術後安静・慢性疾患の進行によって下肢筋力や体幹筋力が落ちると、トイレへの移動・立ち上がり・便座への座位保持・衣服の着脱といった一連の動作が難しくなります。

麻痺も大きな要因です。

脳血管疾患後の片麻痺・脊髄損傷による下肢麻痺・末梢神経障害による感覚・運動障害がある場合、自力での排泄動作に大きな支障が生じます。

疼痛も排泄セルフケアを妨げます。

術後創部の痛み・骨折後の疼痛・関節炎の痛みがあると、動作をするたびに痛みが増すため、患者さんはセルフケアそのものを避けるようになります。

関節拘縮・関節可動域の制限がある場合も、衣服の操作や便座での姿勢保持が難しくなります。

疲労感・倦怠感も見落とせません。

がん治療中・透析患者さん・心不全の患者さんなど、体力の消耗が大きい疾患では、排泄のような基本動作でさえ体に大きな負担がかかります。

▼ 認知・神経学的な原因

認知症・認知機能の低下があると、トイレの場所がわからない・手順を忘れる・紙で拭く動作が理解できないといった着衣失行・行為失行が生じます。

これは能力がないのではなく、脳の機能変化によって動作の順序や意味の理解が難しくなっている状態です。

せん妄状態では、尿意・便意の訴えが困難になるうえ、衝動的な行動で転倒リスクも高まります。

意識障害・傾眠傾向がある場合は、尿意・便意の知覚そのものが鈍くなります。

▼ 心理的な原因

排泄セルフケアには、心理的な問題も大きく関わります。

羞恥心と自尊心の低下は、患者さんが排泄ケアを受けることへの強い抵抗感を生み出します。

「他人に下の世話をしてもらうなんて情けない」という気持ちが、ナースコールを押すことへのためらいや、無理に自力でトイレへ行こうとする危険な行動につながることがあります。

うつ状態・意欲の低下があると、排泄動作への意欲そのものが失われます。

不安・転倒への恐怖も行動を抑制します。

一度転倒を経験した患者さんは、動くことへの恐怖から自力での排泄行動を避けるようになります。

▼ 環境的な原因

病棟環境がセルフケアを難しくしている場合もあります。

トイレまでの距離が遠い・手すりがない・ナースコールが届かない位置にある・点滴ラインが多くて動けない・夜間照明が暗いといった環境要因が、排泄セルフケアの妨げになります。


排泄セルフケア不足のアセスメント

排泄セルフケア不足のアセスメントでは、「どの動作が、なぜできないのか」を細かく見ていくことが大切です。

排泄に必要な一連の動作は次のように分けられます。

尿意・便意を感じる → ナースコールを押すか自力で動き出す → 移動・歩行 → 衣服を下ろす → 便座への移乗と座位保持 → 排泄する → 後始末(拭く・流す) → 衣服を整える → 手洗い → 元の場所に戻る

このどのステップでつまずいているかを把握することで、介入すべき点が明確になります。

バーセルインデックスや機能的自立度評価表などのスケールも活用しながら、現状の自立度を数値で把握しておくと、チーム内での共有や目標設定がしやすくなります。


看護目標

◆ 長期目標

残存機能を最大限に活かし、排泄セルフケアの自立度が段階的に回復し、尊厳ある排泄生活が維持できる。

◆ 短期目標

① 排泄に関する動作の中で、患者さん自身ができる部分を一つでも増やせる

② 排泄時の羞恥心・不安・恐怖が和らぎ、介助を遠慮せずに頼めるようになる

③ 転倒などの事故が起きることなく、安全な方法で排泄動作が行える


観察計画(観察のポイント)

▼ 排泄セルフケアに関わる身体機能の観察

下肢・体幹・上肢の筋力を観察します。

ベッドからの起き上がり・立ち上がり動作、歩行の安定性、便座への移乗と座位保持がどの程度できるかを把握します。

関節可動域の制限(肩・肘・膝・股関節など)と拘縮の有無を確認します。

衣服の着脱に必要な手指の巧緻性(ボタン・ファスナーの操作、紙での後始末など)を観察します。

疼痛の有無・部位・動作時の増強を把握します。

活動時の疲労感・息切れ・動悸の有無を確認します。

麻痺の有無と程度、利き手との関係を評価します。

排泄後の手洗い動作が自力でできるかを確認します。

▼ 排泄機能の観察

尿意・便意の知覚の有無とその強さを確認します。

失禁の有無(種類・頻度・タイミング)を把握します。

排尿の状況(回数・量・尿の性状・残尿感)を観察します。

排便の状況(回数・便の性状・腹部膨満感・腸蠕動音)を把握します。

膀胱超音波による残尿測定を行い、排尿困難や溢流性失禁がないかを評価します。

▼ 認知・精神機能の観察

認知機能を評価します。

トイレの場所の認識・排泄手順の理解・後始末の方法がわかっているかを観察します。

意欲・気分の状態(セルフケアへの意欲があるか、消極的になっていないか)を把握します。

羞恥心・自尊心の低下がないかを、発言や表情から読み取ります。

せん妄・不穏の有無と、夜間の排泄行動のパターンを観察します。

ナースコールへのアクセス状況(押せているか・押すことをためらっていないか)を把握します。

▼ 環境の観察

ベッドからトイレまでの距離・経路の安全性(障害物・照明・手すりの有無)を確認します。

点滴ライン・ドレーン・チューブ類が動作の妨げになっていないかを観察します。

使用している排泄用品(おむつ・尿取りパッド・ポータブルトイレ・差し込み便器)の種類と状態を把握します。

自助具(手すり・便座高さ調整・長柄の拭き取り具など)の使用状況を確認します。

▼ 皮膚の観察

陰部・臀部・鼠径部の皮膚の状態を観察します。

失禁関連皮膚炎(湿潤・発赤・びらん)の有無と程度を把握します。

褥瘡の前段階となる発赤・表皮剥離がないかを確認します。


ケア計画(実際に行うケア)

▼ 疼痛コントロールと体力の回復を優先する

排泄セルフケアへの取り組みを始める前に、痛みのコントロールが十分にできているかを確認します。

鎮痛薬の効果が出ているタイミング(内服後30分〜1時間以内など)に合わせて排泄ケアを組み込むことで、患者さんへの負担が減ります。

疲労感が強い患者さんには、排泄のために使うエネルギーを優先して確保できるよう、他の活動との順番を調整します。

▼ 残存機能を活かす自立支援型の介助

排泄セルフケアの介助は、できる部分は患者さん自身にやってもらうという姿勢を軸にします。

たとえば「歩行は見守りで行ける」「衣服を下ろすのは介助が必要だが便座への移乗は自力でできる」「後始末の拭き取りは難しいが流すレバーは自分で押せる」というように、動作を細かく分けて役割を決めます。

全介助を続けることで残存機能が失われていきます。

毎日の介助の中に「自分でやる場面」を一つでも多く作ることが、廃用予防につながります。

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片麻痺がある患者さんの更衣では、患側から着て患側から脱ぐ原則を守ります。

衣服の着脱では、患側の腕・足から先に通すことで関節への負担が少なくなります。

▼ 排泄環境の整備

トイレへの経路を安全に整えます。

夜間用の足元灯の設置・手すりの活用・障害物の撤去・転びにくい履物への変更を行います。

ナースコールをベッド柵や手の届く場所に固定し、いつでも押せる状況を作ります。

移動が難しい患者さんには、ベッドサイドへのポータブルトイレの設置を検討します。

点滴ラインやドレーンは、移動の妨げにならないよう整理します。

衣服は操作しやすいものを選びます。

前開きタイプ・マジックテープ式・ゴムウエストのものが着脱しやすく、排泄時の動作負担を減らします。

▼ 自助具の活用

自助具の使用が、セルフケアの自立を大きく後押しすることがあります。

長柄の拭き取り補助具・便座の高さを上げるための補高便座・手すり付きの簡易トイレフレーム・尿器・差し込み便器など、患者さんの状態に合わせた用具を選びます。

作業療法士と連携し、その患者さんに最適な自助具を選定してもらうことが大切です。

▼ 定時誘導と排泄パターンの活用

排泄日誌をもとに患者さんの排泄リズムを把握し、尿意・便意が来る前にトイレへ誘導します。

「食後30分でトイレへ行きましょう」「朝食後は便意が来やすいですね」という形で、患者さんが自分のリズムを意識できるよう声かけします。

排泄のタイミングをつかむことで、失禁を未然に防ぎ、患者さんの自信の回復につながります。

▼ 皮膚ケア

失禁後はすぐに陰部・臀部を洗浄・清拭します。

皮膚を強くこすらず、押さえるように拭くことで摩擦刺激を減らします。

保湿剤・皮膚保護クリームを使って皮膚バリア機能を保ちます。

失禁関連皮膚炎が生じている場合は、皮膚・排泄ケア認定看護師や褥瘡チームと連携して対応します。

▼ 心理的サポートと自尊心への配慮

排泄ケアを行う際は、プライバシーに最大限の配慮をします。

カーテンを閉める・不必要に複数のスタッフが関わらない・さりげなく手早く対応するといった姿勢が、患者さんの羞恥心を和らげます。

失禁があった後は、責めるような言い方を避け「すぐに対応しますね」と淡々と声をかけます。

「ナースコールを押してくれてよかったです」という声かけの積み重ねが、次回も遠慮なく呼べる関係性を作ります。

「今日は自分で後始末まできました」「昨日より時間が短くなりましたね」という小さな変化を言葉にして伝えることが、患者さんの自己効力感を育てます。


教育・指導計画(患者さんと家族への関わり)

▼ 患者さんへの説明と意欲支援

排泄のセルフケアを少しずつ取り戻すことが、退院後の生活を豊かにするという見通しを、患者さんが理解できる言葉で伝えます。

骨盤底筋訓練など、患者さん自身が日常的に取り組める方法があればわかりやすく説明します。

「全部自分でやらなくていい。一つでも増やすことが大事です」という言葉が、過度なプレッシャーを取り除きながら意欲を引き出すことがあります。

飲水を自分で制限してしまう患者さんには、水分を十分に摂ることが膀胱の健康を守ること、さらに便秘予防にもなることを伝えます。

▼ 家族への説明と介助方法の指導

家族が面会時に行う介助の仕方と、やりすぎないことの大切さを丁寧に伝えます。

「できる動作まで手伝いすぎると、逆に自立が遅れてしまう」という点を、家族が納得できるように説明します。

排泄介助の手順(ポータブルトイレへの移乗・衣服の下ろし方・後始末の補助)を実際に見せながら練習します。

失禁があっても叱ったり、情けないといった言葉をかけないよう伝えます。

家族の関わり方が患者さんの自尊心に大きく影響することを説明します。

▼ 退院後の生活に向けた指導

自宅でのトイレ環境の整備について、退院前から準備を始めることが大切です。

手すりの設置位置・トイレ入り口の幅・夜間照明の確保・ポータブルトイレの置き場所などについて、家族とともに相談します。

訪問看護・訪問介護・通所リハビリなどの介護サービスについて、医療ソーシャルワーカーと連携しながら情報を提供します。

排泄に関わる専門的な相談先(泌尿器科外来・皮膚・排泄ケア認定看護師の外来など)についても、必要に応じて案内します。


排泄セルフケア不足に伴う二次的な問題

排泄のセルフケアが十分にできない状態が続くと、さまざまな二次的な問題が生じます。

廃用症候群の進行は最も重大な問題の一つです。

排泄という日常的な動作さえも全介助になることで、患者さんが体を動かす機会が大幅に失われます。

その結果、下肢筋力・体幹機能・関節可動域がさらに低下し、回復が難しくなる悪循環に陥ります。

失禁関連皮膚炎は、失禁後のケアが不十分だったり、おむつの中が長時間湿潤した状態になったりすることで起きます。

皮膚が赤くただれ、痛みを伴うことも多く、褥瘡への移行リスクも上がります。

尿路感染症は、おむつ使用・残尿・不十分な陰部清潔が続くことで起きやすくなります。

発熱・尿の混濁・排尿時痛といった症状に注意します。

転倒リスクの上昇も大きな問題です。

急な尿意・便意で焦ってベッドから降りようとする場面や、排泄後の立ち上がりの際に転倒が起きやすくなります。

自己肯定感の低下・意欲の減退も見過ごせません。

排泄のたびに他者の介助を受けることへの羞恥心・無力感が積み重なると、生きる意欲そのものに影響することがあります。

排泄ケアの丁寧さと関わりの姿勢が、患者さんの精神的な回復にも深く関わっています。


チームで支える排泄セルフケアの回復

排泄セルフケア不足の回復には、多職種が協力して取り組む姿勢が欠かせません。

理学療法士は、立ち上がり・歩行・バランス機能の改善を担います。

作業療法士は、衣服の着脱・トイレでの姿勢保持・自助具の選定と訓練を担います。

皮膚・排泄ケア認定看護師は、失禁管理・排便ケア・皮膚炎の専門的な評価と介入を担います。

管理栄養士は、便秘予防に向けた食事内容の調整と栄養管理を担います。

医師は、排尿障害・排便障害の診断と薬物療法の管理を担います。

社会福祉士・医療ソーシャルワーカーは、退院後の介護サービスや自宅環境の整備を支援します。

看護師は、このチームの中で毎日のケアを通して患者さんの小さな変化をとらえ、チームに伝える役割を果たします。

リハビリで習得した動作を病棟でのケアに続けること・排泄日誌を丁寧に記録すること・カンファレンスで情報を共有することが、患者さんのセルフケア回復を支える土台になります。


まとめ——排泄セルフケア不足の看護で大切にしたいこと

排泄セルフケア不足の看護計画について、原因から目標設定・観察・ケア・指導まで解説しました。

最後に大切なポイントを振り返ります。

・排泄セルフケア不足は、身体的・認知的・心理的・環境的な原因が重なって生じる

・アセスメントでは「どの動作が、なぜできないか」を排泄の一連のステップに沿って見極める

・看護目標では、尊厳ある排泄の維持を長期的なゴールとして置く

・ケアでは「全部やってあげる」ではなく、残存機能を活かす自立支援型の関わりを軸にする

・環境の整備・自助具の活用・定時誘導が、セルフケア自立を後押しする

・排泄後の声かけ・プライバシーへの配慮・小さな達成を言葉にすることが、患者さんの自尊心と意欲を守る

・二次的問題(廃用・皮膚炎・感染・転倒・意欲低下)を念頭に置いた、全般的な計画が必要

・チーム連携と記録の積み重ねが回復の土台になる

排泄ケアは、患者さんの「その人らしさ」を守る場面の一つです。

技術の正確さと同じくらい、関わる姿勢と言葉の丁寧さが大切になります。

この記事が、日々のケアや実習・看護計画の立案に少しでも役立てれば嬉しいです。

次回は、入浴・清潔セルフケア不足の看護計画について詳しく解説していく予定です。

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