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看護計画

コーピング機能障害の看護計画|ストレスにうまく対処できない患者さんへの支援と関わり方

この記事は約11分で読めます。

「どうすればいいか分からなくて、頭が真っ白になってしまう」「考えれば考えるほど、どんどん追い詰められていく気がする」「病気のことを誰にも言えなくて、ずっと一人で抱えてきた」——こうした言葉を患者さんから聞いたことはないでしょうか。

人は誰でも、生きていく中でさまざまなストレスや困難に直面します。

病気の告知、手術、長期療養、仕事や家族関係の変化——こうした出来事に対して、人それぞれの方法で対処しながら日常生活を維持しています。

しかしその対処の方法がうまく機能しなくなったとき、ストレスは心身の健康を大きく脅かす力を持ちます。

この状態は看護診断においてコーピング機能障害と呼ばれ、慢性疾患、精神疾患、重大な生活上の変化を経験している患者さんに広く見られます。

今回は、この看護診断の概要から看護計画の立案まで、臨床で活用できる内容を詳しくまとめました。


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コーピング機能障害とはどういう状態か

コーピングとは、ストレスや困難な状況に対して、心理的・行動的に対処しようとする取り組み全般のことです。

問題の原因に直接働きかける「問題焦点型コーピング」と、ストレスによる感情的な苦痛を和らげようとする「情動焦点型コーピング」の二つに大きく分けられます。

たとえば、病気の診断を受けたとき「治療法について調べて医師に質問する」のが問題焦点型コーピング、「信頼できる人に気持ちを打ち明けて楽になる」のが情動焦点型コーピングです。

NANDA-Iでは、コーピング機能障害を「ストレス因子の評価が誤っていること、または適切な選択ができないこと、あるいは利用可能な資源を使えないことによって、ストレス因子を管理する能力が不十分な状態」として定義しています。

たとえば、次のような状態がコーピング機能障害に当てはまります。

がんの告知を受けた後、「どうせ治らない」と思い込んで治療の情報収集を完全にやめてしまっている患者さん。

ストレスを感じるたびにアルコールや過食に頼るようになり、かえって状況が悪化している患者さん。

問題に直面するたびに「自分には何もできない」と感じ、何も行動できなくなっている患者さん。

不安や恐怖から問題そのものを無視し続け、受診を先延ばしにしている患者さん。

何度も同じ失敗パターンを繰り返しているが、自分では気づいていない患者さん。


なぜこの看護診断が重要なのか

コーピングの方法は、身体的な健康と精神的な健康の両方に深く関わっています。

ストレスへの対処がうまくいかない状態が続くと、免疫機能の低下、慢性的な疼痛の悪化、高血圧や心疾患リスクの上昇、うつ病や不安障害の発症など、身体・精神の両面に問題が生じることが分かっています。

また、不適切なコーピング(アルコール、薬物、自傷行為、回避など)は、問題を一時的にやり過ごせるように感じさせながら、実際には状況をさらに悪化させます。

一方で、適切なコーピングスキルを身につけることができれば、同じ困難な状況にあっても精神的な安定を保ち、問題に向き合い続ける力が生まれます。

看護師は患者さんの日常の言動を観察しながら、コーピングの問題に気づき、患者さんが新たな対処方法を見つけられるよう支援する役割を担っています。


関連因子とリスク因子を整理する

コーピング機能障害に関わる因子はいくつかに分類できます。

心理・精神的な因子として、うつ病、不安障害、パーソナリティ障害、過去のトラウマ体験、自己効力感の低さ、認知の偏り(物事を極端に悲観的に捉えるパターンなど)が挙げられます。

社会・環境的な因子として、社会的孤立、サポートする人の少なさ、経済的困窮、仕事や家族関係でのストレス、急激な生活環境の変化が関わります。

疾患・身体的な因子として、慢性疾患(糖尿病、心疾患、がんなど)の診断、身体機能の変化、慢性的な疼痛、長期入院による生活リズムの乱れが挙げられます。

知識・スキルに関わる因子として、ストレス対処の方法を知らない、問題解決のスキルが身についていない、感情を言葉にするのが難しいことが関わります。

発達的な因子として、幼少期に適切なコーピングのモデルを経験していない、ストレス対処を学ぶ機会がなかったことが影響することがあります。


看護目標を設定する

長期目標

患者さんが自分に合ったコーピングの方法を複数身につけ、ストレスや困難な状況に直面したときに、適切な方法を選んで対処できるようになる。

短期目標

現在のストレスや困難について、自分の言葉で看護師に話すことができる。

自分がこれまでとってきたコーピングのパターンを振り返り、うまくいっていた部分とそうでなかった部分を言葉にすることができる。

新しいコーピングの方法をひとつ試し、その結果について看護師に話すことができる。


観察計画(オーピー)

コーピング機能障害の状態を把握するためには、患者さんのストレスへの反応パターン、感情状態、行動の特徴を継続的・多角的に観察することが必要です。

ストレス反応と対処パターンの観察として、患者さんがストレスを感じたときにどのような反応を示すかを把握します。

泣く、黙り込む、怒鳴る、その場から離れる、食べ過ぎる、眠れなくなるといった反応パターンは、その患者さんのコーピングスタイルを示しています。

「いつもこうなってしまう」「どうせ何をしても無駄だ」というパターン化した言動は、コーピングの柔軟性が低くなっているサインです。

認知パターンの観察として、患者さんが自分の状況や問題についてどのように解釈しているかを把握します。

「自分が悪い」「どうせ変わらない」「誰にも分かってもらえない」という発言が繰り返される場合、認知の偏りがコーピングを妨げている可能性があります。

現実を過度に悲観的または楽観的に捉えていないかを確認します。

感情状態の観察として、不安、抑うつ、怒り、無力感、罪悪感の程度を把握します。

感情を言葉にすることができているか、感情が爆発的に表出されることがないかも観察します。

感情の麻痺(何も感じられなくなっている状態)も、コーピングの問題を示していることがあります。

身体症状の観察として、睡眠の状態(不眠、過眠)、食欲と体重の変化、頭痛・胃腸症状・動悸などの身体的な愁訴、疲労感を確認します。

これらはストレスへの身体的な反応であるとともに、コーピングがうまく機能していないサインでもあります。

不適切なコーピングの観察として、アルコールや薬物への依存傾向、過食・拒食、自傷行為、問題の回避・先延ばし、過度な他者依存がないかを確認します。

これらは短期的にはストレスを和らげる効果があるように感じられますが、長期的には状況を悪化させるコーピングです。

社会的サポートの状況の観察として、頼れる家族・友人・支援者がいるか、相談できる人がいるか、現在どのような支援を受けているかを把握します。

社会的サポートが少ない患者さんは、コーピング機能障害のリスクが高くなります。


ケア計画(ティーピー)

ケア計画では、患者さんが自分のコーピングパターンに気づき、より適切な対処方法を少しずつ身につけられるよう支援することを中心に考えます。

まず、患者さんが安心して話せる関係と環境をつくることが出発点です。

「今どんな気持ちですか」「最近一番辛いことは何ですか」という開かれた質問で会話を始め、患者さんが自分の内側にある感情や困難を言葉にできるよう働きかけます。

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患者さんの話を評価したり解決策をすぐに提案したりするのではなく、まずは「そうなんですね」「それは大変でしたね」という受け止めの言葉を大切にします。

患者さんが自分のコーピングパターンを振り返れるよう支援します。

「いつも同じような状況でうまくいかないと感じているとしたら、そのとき何をしていますか」というような問いかけで、患者さんが自分のパターンを客観的に見られるよう働きかけます。

自己批判につながらないよう、「今まで自分なりにやってきたんですね。それは大切なことです」という言葉を添えることも忘れません。

新しいコーピングの方法を一緒に考え、試す機会をつくります。

深呼吸やリラクゼーション法(筋弛緩法、マインドフルネスなど)、気持ちを書き出すこと(日記・ジャーナリング)、信頼できる人に話す、軽い運動をする、趣味の時間をつくるなど、患者さんの状況と好みに合った方法を一緒に探します。

「完璧にできなくていいです。まずは一度だけ試してみましょう」という言葉かけで、患者さんが新しい方法に取り組みやすくなります。

問題解決のプロセスを一緒に整理します。

「今の一番の問題は何ですか」「その問題に対してできることをいくつか考えてみましょう」「それぞれのやり方のメリットとデメリットは何でしょうか」というように、問題解決の手順を一緒に踏むことで、患者さんが自分で考える力を取り戻せるよう支援します。

不適切なコーピング(アルコール、自傷など)が見られる場合には、批判せずに、その行動の背景にある苦しさを受け止めた上で、代替的な方法について話し合います。

「それをしているとき、どんな気持ちになりますか」「同じ効果が得られる別の方法はないか、一緒に考えてみましょうか」という姿勢で関わります。

臨床心理士や精神科リエゾンチームへの橋渡しを積極的に行います。

コーピングの問題が深く、看護師だけでの対応が難しい場合や、認知行動療法などの専門的な心理療法が必要と考えられる場合には、専門職との連携を早めに検討します。

社会的なサポートを広げる支援を行います。

患者さんが孤立している場合には、信頼できる人とのつながりを少しずつ広げていけるよう支援します。

地域の相談窓口、自助グループ、患者会などの情報を提供し、「一人でなくてもいい」という環境をつくります。


教育計画(イーピー)

教育計画では、患者さんがコーピングの仕組みを理解し、自分に合った方法を主体的に活用できるよう支援します。

患者さんに対して、コーピングとは何か、なぜ今うまく機能していないのかを分かりやすく説明します。

「ストレスへの対処の方法は、誰もが持っています。ただ、状況が変わったり、負担が大きくなりすぎると、これまでうまくいっていた方法が通じなくなることがあります」という説明が、患者さんの自己否定感を和らげます。

ストレス反応が身体に与える影響について説明します。

「ストレスが続くと、身体にもさまざまな変化が起きます。頭痛、睡眠の乱れ、食欲の変化、疲れやすさなどはすべて、身体がストレスに反応しているサインです」という説明で、患者さんが自分の身体のサインに気づけるよう促します。

いくつかの具体的なコーピング方法について説明し、実際に試してもらいます。

腹式呼吸(ゆっくり息を吸って、長く吐く)、漸進的筋弛緩法(身体の各部位に力を入れてから脱力する方法)、気持ちを書き出すことなど、病棟の中でもできる方法を具体的に紹介します。

「まず一週間、毎日一回だけやってみてください」というように、小さな目標を設定することで取り組みやすくなります。

助けを求めることの大切さを伝えます。

「困ったときに人に頼ることは、弱さではなく賢い対処法です」というメッセージを繰り返し伝えることで、患者さんが孤立したコーピングから抜け出しやすくなります。

「誰かに話すと楽になることがある。その誰かになりたいと思っています」という言葉かけも、患者さんの孤立感を和らげる助けになります。

家族や支援者に対しては、患者さんのコーピングの困難についての理解を促します。

「本人はがんばっているのに、うまくいかない状態にあります。責めるのではなく、話を聞いてあげることが最大のサポートになります」という説明が、家族の関わり方を前向きに変えるきっかけになります。

また、家族自身もストレスを抱えていることが多いため、家族自身のコーピングについても気にかけることを伝えます。

退院後に利用できる相談窓口や支援サービスについて情報を提供します。

かかりつけ医への相談、心療内科・精神科の外来、地域の相談窓口、自助グループ、ストレスマネジメントのプログラムなど、患者さんの状況に合った資源を具体的に紹介します。


臨床でよく見られる場面と対応のポイント

慢性疾患(糖尿病・心疾患・がんなど)を抱える患者さんでは、長期にわたる療養生活の中でコーピングの疲弊が生じやすいです。

「もう治療が嫌になってきた」「どうせ良くならない」という言葉が出てきたときは、コーピング機能障害のサインとして捉え、感情に寄り添う関わりから始めます。

治療の意味や目標を患者さん自身が見直せるような対話の機会をつくることも有効です。

がんの告知直後の患者さんでは、強いショックと不安から認知が混乱し、情報が頭に入らない、何もできなくなるという状態が見られることがあります。

「今は何もできなくていいです。一つずつ一緒に考えましょう」という言葉かけで、患者さんの焦りを和らげます。

情報提供は段階的に行い、一度に多くを伝えないようにします。

うつ病・不安障害の患者さんでは、認知の偏りがコーピングを大きく妨げていることが多いです。

「どうせ無駄」「最悪の事態になる」という思い込みに対して、「本当にそうでしょうか。別の見方はないでしょうか」と穏やかに問いかける認知再構成の視点が有効です。

専門的な認知行動療法が必要な場合は、臨床心理士への橋渡しを行います。

自傷行為やアルコール依存が見られる患者さんでは、批判せず、その行動の背景にある苦しさを受け止めることが最優先です。

「その方法に頼らなくてもよくなるための、別の方法を一緒に探しましょう」という姿勢で関わり、専門的なケアへのつなぎを進めます。

長期入院中の患者さんでは、入院生活そのものがストレス源となり、コーピングの余力が低くなることがあります。

日課の中に気分転換の時間を取り入れる、読書や音楽など好きな活動をできる範囲で続けるなど、日常のストレス管理を支援します。


まとめ

コーピング機能障害は、患者さんの身体的・精神的な健康と日常生活の質に広く影響する、看護において見逃すことのできない診断です。

ストレスへの対処がうまくいかない状態は、意志の弱さや努力不足ではなく、状況と個人の力のバランスが崩れたときに誰にでも起こりうることです。

そのことを患者さんと共有した上で、より適切な対処方法を一緒に探していく姿勢が、すべての支援の土台になります。

観察、ケア、教育の三つの柱をバランスよく組み合わせながら、患者さんが自分に合ったコーピングの方法を見つけ、困難な状況においても自分らしく生きていける力を取り戻せるよう、継続的な視点で関わり続けることが大切です。

看護計画は患者さんの状態と状況の変化に合わせて柔軟に見直しながら、その人らしいストレス対処の回復を支える支援を続けていきましょう。

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