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看護計画

周術期体位性損傷リスク状態の看護計画|手術中の体位による合併症を防ぐために

この記事は約7分で読めます。

手術を受ける患者さんにとって、麻酔中の体位は自分では変えられない。

そのため、手術中に長時間同じ姿勢を保つことで、皮膚や神経、血管にさまざまな障害が起こるリスクがある。

これを「周術期体位性損傷リスク状態」という。

看護師として周術期に関わるなら、この概念をしっかり理解したうえで、患者さんを守るための看護計画を立案できるようになることがとても大切だ。

今回は、周術期体位性損傷リスク状態について、原因から看護目標、具体的な看護介入まで丁寧に解説する。


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周術期体位性損傷リスク状態とは

周術期体位性損傷リスク状態とは、手術中に患者さんが特定の体位で固定されることによって生じる、皮膚・神経・血管・筋肉などへの障害リスクが高い状態のことをいう。

手術中、患者さんは全身麻酔や脊髄くも膜下麻酔などによって意識がなく、痛みや不快感を自覚できない状態にある。

通常、私たちは無意識のうちに体位を変え、圧迫を避けている。

しかし手術中はその防御反応が失われ、長時間の同一体位によって組織への血流が低下し、虚血性変化が起こりやすくなる。

手術時間が長くなるほど、また患者さんの全身状態が低下しているほど、損傷のリスクは高くなる。

これは単に「床ずれ」と呼ばれる褥瘡だけの話ではない。

神経麻痺や、コンパートメント症候群、眼球損傷、頸部損傷など、重大な合併症につながることもある。


発生しやすい体位とそのリスク

手術ではさまざまな体位が用いられる。

それぞれの体位に応じた損傷リスクを理解しておくことが、看護師としてのアセスメント力につながる。

仰臥位(背臥位)

最も多く用いられる体位で、踵部・仙骨部・後頭部・肩甲骨部などの骨突出部に圧迫がかかりやすい。

また、腕を外側に広げると上腕神経叢や橈骨神経への牽引・圧迫が起こることがある。

截石位(砕石位)

婦人科や泌尿器科手術で多く用いられ、股関節や膝関節を屈曲・外転させる体位だ。

この体位では、腓骨神経麻痺や大腿神経損傷のリスクが高い。

また、下肢が挙上されることで下肢末梢の血流が変化し、コンパートメント症候群が起こるリスクもある。

腹臥位(伏臥位)

整形外科や脊椎手術で用いられる体位で、眼球への圧迫による視力障害、顔面・鼻・前額部の皮膚損傷、男性では陰部への圧迫損傷が問題になる。

側臥位

腎臓や肺の手術などで用いられ、下側の腕の神経や血管への圧迫、腸骨稜・膝関節外側の骨突出部への圧迫が問題になりやすい。


損傷が起こるメカニズム

体位性損傷が起こる主なメカニズムは、圧迫・伸展・ずれ・摩擦の4つだ。

圧迫は骨突出部などにかかる外力で、毛細血管の閉塞を引き起こし、組織への酸素供給が途絶えることで壊死が起こる。

伸展・牽引は、関節の過度な可動域を超えた姿勢によって神経・腱・血管が引き伸ばされることで損傷が生じる。

ずれ・摩擦は皮膚表面と深部組織がずれることで毛細血管に損傷が起こる。

また、低体温や低血圧、糖尿病、末梢血管障害、貧血などの全身的な要因がある患者さんは、それだけで組織の耐久性が下がっている。

術前から患者さんの全身状態を評価し、リスクの高い患者さんを早期に特定しておくことが看護師の大切な役割だ。


看護アセスメントのポイント

周術期体位性損傷のリスクをアセスメントするうえで、以下の点を確認しておくことが望ましい。

術前のスキンアセスメントとして、皮膚の状態(乾燥・菲薄化・発赤・浮腫など)を評価する。

体重・BMI・栄養状態(血清アルブミン値など)も組織耐久性に関わるため重要だ。

糖尿病・末梢血管障害・皮膚疾患などの既往歴も確認する。

術式・予測手術時間・使用する体位を事前に把握しておく。

術中は体位固定器具の使用状況、パッドやクッションの適切な設置、循環動態の安定性を確認する。

術後には、圧迫を受けた部位の発赤・腫脹・疼痛・神経症状などを注意深く観察することが重要だ。


看護目標

長期目標

手術中・手術後を通じて、体位性損傷(褥瘡・神経麻痺・コンパートメント症候群など)を起こさず、安全に手術を終えることができる。

短期目標

手術前(術前) 術前のスキンアセスメントが適切に実施され、リスク因子が明らかになっている。

手術中(術中) 適切な体位固定と除圧が行われ、骨突出部への長時間の圧迫が回避されている。

手術後(術後) 術後早期に皮膚・神経・循環の状態が評価され、異常の早期発見と対応ができている。

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具体的な看護介入

観察計画(OP)

術前に皮膚の色調・乾燥度・浮腫・発赤・損傷の有無を全身評価する。

患者さんの栄養状態(血清アルブミン・体重・BMI)を確認する。

糖尿病・末梢血管障害・ステロイド服用などの皮膚脆弱性に関わるリスク因子を確認する。

術式・体位・予測手術時間を把握する。

術中は体位固定部位への圧迫・牽引の状態を定期的に確認する。

術中の血圧・体温・血中酸素飽和度など循環・呼吸動態を持続的に観察する。

術後は、手術体位で圧迫を受けた部位(骨突出部・神経走行部位など)の皮膚状態を評価する。

術後に疼痛・しびれ・感覚鈍麻・筋力低下などの神経症状がないかを確認する。

下肢のコンパートメント症候群の徴候(疼痛・腫脹・皮膚緊満・感覚障害・血流低下)を観察する。

術後の眼球損傷(視力障害・眼痛・角膜損傷)がないかを確認する。

ケア計画(TP)

術前に手術体位に対応した適切なパッドやクッション類を準備する。

体位固定の際は、骨突出部(仙骨部・踵部・肩甲骨部・後頭部・膝部・肘部など)に除圧パッドを確実に設置する。

関節が生理的な可動域を超えないよう、過度な外転・屈曲・伸展を避けて体位を整える。

截石位では、両下肢を同時にゆっくりと挙上・下降させ、急激な体位変換を避ける。

腹臥位では、眼球・耳介・鼻・陰部などへの直接圧迫がないよう慎重に体位を整える。

手術時間が長くなる場合は、可能な範囲で定期的な除圧・体位の微調整を行う。

術中の体温低下を防ぎ、組織の循環維持に努める。

体位固定具(ボルスター・ビーンバッグ・脚台など)が適切な位置に設置されているか、手術開始前に確認する。

術後は観察した皮膚状態・神経症状を記録し、異常所見があれば医師へ報告する。

教育・指導計画(EP)

術前に患者さんへ、手術中は同一体位を保つこと、目覚めたあとに痛みやしびれを感じた場合はすぐに伝えてほしいことを説明する。

術後に皮膚の発赤・腫れ・痛み・しびれなどの症状が出た場合は、我慢せずに看護師や医師へ伝えるよう説明する。

糖尿病や末梢血管障害がある患者さんには、皮膚の感覚が低下していることで自覚症状が出にくい場合があることを丁寧に説明する。

術後のリハビリテーション開始時には、体位性損傷の有無を確認したうえで安全に進めていくことを患者さんに伝える。


周術期体位性損傷で注意すべき合併症

褥瘡(圧迫性潰瘍)

最も多く見られる体位性損傷で、仙骨部・踵部・後頭部などに発生しやすい。

手術時間が2時間を超えると褥瘡のリスクは高くなる。

術前・術後のスキンアセスメントと術中の除圧が褥瘡予防の中心になる。

末梢神経損傷

上肢では尺骨神経・橈骨神経・腕神経叢が、下肢では総腓骨神経・大腿神経が損傷を受けやすい。

損傷の症状としては、手術後のしびれ・感覚障害・筋力低下・疼痛などが見られ、重症例では回復に時間がかかることがある。

コンパートメント症候群

截石位などで下肢の筋肉が虚血状態になり、筋肉内の圧力が高まることで血流がさらに低下する悪循環が起こる。

放置すると筋壊死や腎不全(ミオグロビン尿症)にまで進行することがある重大な合併症だ。

術後に下肢の激しい疼痛・腫脹・硬直感が見られた場合は、ただちに医師への報告が必要だ。

眼球損傷・視力障害

腹臥位手術で発生しやすく、眼球への直接圧迫による角膜損傷、網膜中心動脈閉塞症、虚血性視神経症などが起こることがある。

最悪の場合、永続的な視力障害につながることがある。


患者さんのリスク評価ツール

体位性損傷のリスク評価には、褥瘡リスクスケールとしてよく知られているブレーデンスケールが参考になる。

このスケールでは知覚認知・湿潤・活動性・可動性・栄養・摩擦とずれの6項目を評価し、点数が低いほどリスクが高い。

術前の評価に加えて、術後にも再評価を行い、変化があれば看護計画を見直していくことが望ましい。

患者さんひとりひとりのリスクに合わせた個別性のある計画を立案することが、周術期看護の質を高めることにつながる。


まとめ

周術期体位性損傷リスク状態は、手術を受けるすべての患者さんに起こりうるリスクだ。

看護師は、術前・術中・術後を通じて継続的に患者さんの状態を観察し、体位による合併症を防ぐための介入を行う。

特に手術時間が長い場合や、高齢・低栄養・糖尿病などのリスク因子がある患者さんでは、より細やかなアセスメントとケアが求められる。

今回の看護計画を土台にしながら、患者さんの個別性に合わせた計画を立案・修正していくことで、より質の高い周術期看護を提供できるようになる。

看護師として、手術室での体位管理の重要性を十分に理解し、チームで連携しながら患者さんの安全を守っていこう。

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