下痢は患者さんにとって身体的にも精神的にも大きな負担となる症状です。
適切な看護ケアにより、症状の改善と患者さんのQOL向上を目指すことができます。
この記事では、下痢症状を持つ患者さんへの看護問題、看護目標、そして詳しい看護計画について解説します。
看護問題
下痢がある
看護目標
長期目標
有形便となり、患者が排便状況に満足する
短期目標
排便回数が減る
便の性状が改善される
腹部症状が軽減する
看護計画
OP(観察項目)
排便回数・便性状(色、量、硬さ、混入物、臭い)
腹部症状・腹鳴亢進の有無
食事摂取量・食形態・水分摂取量
脱力感・倦怠感・活気の有無
脱水症状の有無(皮膚・粘膜の乾燥・口渇・尿量・尿回数・尿性状など)
肛門周囲の皮膚の状態・肛門部痛の有無
下痢の原因と誘引の有無(食物、内服薬、精神的ストレス、寒冷)
不安、ストレスの有無
睡眠状況
検査データ(BUN、尿比重、K、Na、TP、Alb)
脱水ではBUN:15mg/dl以上、ケトン体陽性、尿比重1.025以上となります。
低K血症ではK:2.0mEq/l以下、低Na血症ではNa:135mEq/l以下となります。
低栄養状態では血漿蛋白6.0g/dl以下、アルブミン2.5g/dl以下となります。
TP(ケア項目)
水分出納の管理・点滴管理
肛門部の清潔を保つ
腹部を保温(必要時、湯たんぽや使い捨てカイロ、電気毛布を使用)し、冷感刺激を避ける
食形態の工夫をする(食物繊維の少ない食品の摂取)
排泄物を処理する時は、スタンダードプリコーションを遵守する
排泄の際の消音、換気、カーテンを用いてプライバシーを確保する
患者さんの訴えを丁寧に聞き、不安の軽減を図る
EP(教育項目)
腹部症状や下痢便が悪化した時は知らせて下さい
感染対策について説明します
水分摂取の大切さを説明します
下痢による身体症状と看護の関わり
倦怠感について
頻回の排便・脱力感によって軽度の疲労を感じることがあります。
低栄養状態で体力が低下していることも倦怠感の原因となります。
患者さんは動くことさえつらく感じる場合があります。
十分な休息時間を確保し、無理のない日常生活動作を心がけるよう支援します。
ベッド周りの環境を整え、必要なものは手の届く場所に配置します。
患者さんのペースに合わせたケアの提供が大切です。
食欲の低下について
下痢は、空腹中枢の働きを抑制し、食欲を低下させます。
また、下痢に伴うさまざまな苦痛によって食欲が低下し、食事摂取量が減少します。
患者さんは食べることへの恐怖感を持つことがあります。
食べたらまた下痢をするのではないかという不安が食欲をさらに低下させます。
消化の良い食品を少量ずつ摂取するよう勧めます。
患者さんの好みや希望を聞きながら、食形態を調整していきます。
無理に食べさせるのではなく、食べられるものから始めることが大切です。
脱水について
下痢では、塩分を含んだ消化液が大量に体外に排出されます。
水・電解質のバランスが崩れるので、多彩な症状があらわれます。
ことに高齢者の場合、水の代謝調節能力が低く、体液の絶対量が少ないため、容易に脱水を起こしやすいです。
脱水は倦怠感など、さまざまな症状を引き起こします。
皮膚の張りや粘膜の状態を細かく観察します。
口渇の有無や尿量の変化にも注意を払います。
水分摂取を促し、必要に応じて点滴による補液を行います。
経口補水液の活用も効果的です。
精神的ストレスについて
下痢では、便意が頻回に生じるうえに、いつ便意が生じるかわからない不安が生じます。
また、水分や食物を摂取することに不安・恐怖感が生じます。
そのため、食欲不振となり欲求不満が高まります。
不安や恐怖、心理的動揺、欲求不満などの精神的ストレスは、自律神経のバランスを崩します。
腸管の運動を亢進させ、下痢を増強させてしまいます。
患者さんの話をゆっくり聞く時間を作ります。
トイレの近くにベッドを配置するなど、環境調整を行います。
いつでもトイレに行ける安心感を持ってもらうことが大切です。
排泄の際は、カーテンや個室の利用でプライバシーを守ります。
腹痛について
下痢の原因となる腸の痙攣・収縮や過伸展、炎症などは副交感神経や交感神経を介して大脳皮質に伝えられ、痛みが生じます。
腸管には知覚神経は分布していませんが、腹膜や腸間膜などに分布している知覚神経が刺激されると痛みを感覚します。
腹痛の程度や性質、持続時間を詳しく観察します。
痛みの部位を確認し、記録に残します。
温罨法や安静により、痛みの軽減を図ります。
必要に応じて医師に報告し、鎮痛薬の使用を検討します。
睡眠障害について
頻回な便意の発生や、不安は睡眠を障害します。
睡眠障害は、痛みが加わるといっそう増強され、精神状態はより不安定となります。
夜間のトイレ回数を記録します。
睡眠時間や睡眠の質について患者さんに聞き取ります。
夜間の照明を調整し、安眠できる環境を整えます。
日中の活動と休息のバランスを考えます。
体力の低下について
下痢は、便の移送や水分の分泌・再吸収の亢進や、頻回な排便行為などによって、エネルギー消費量が増加します。
一方で、食欲不振による食事摂取量の減少によって体力が低下します。
患者さんの活動レベルを観察します。
疲労の程度を確認し、無理のない範囲での活動を勧めます。
栄養状態を評価し、必要に応じて栄養士と相談します。
高カロリー輸液や経腸栄養の導入も検討します。
肛門周囲の皮膚障害について
下痢便には、塩類や消化液、腸内の常在細菌など皮膚を脆弱化させる物質が多く入っています。
便によって肛門周囲の皮膚が汚染されると、発赤や湿疹、びらんなどが容易に生じます。
これらは不快感とかゆみをまねき、掻破すると感染の危険性も高くなります。
また、頻回な排便は肛門部に痛みを生じさせます。
肛門周囲の皮膚状態を毎日観察します。
発赤やびらんの有無を確認します。
排便後は必ず洗浄を行い、清潔を保ちます。
温湯や洗浄器を使用し、優しく洗浄します。
トイレットペーパーでの強い拭き取りは避けるよう指導します。
皮膚保護剤の使用も効果的です。
症状緩和のための詳しいケア方法
温罨法を活用する
腹部が冷えると腸管を刺激して、腸蠕動を亢進させてしまいます。
温熱は鎮静作用があるほか、腹部を温めることによって消化管の循環血液量を増加させます。
消化吸収を促す効果も期待できます。
温熱刺激は、交感神経に働きかけて腸管の運動を抑制するので下痢を抑えるのに有効です。
温湿布やカイロなどによって腹部に温熱刺激を与えるのもよいです。
また入浴によって全身的に温めるとよいです。
湯たんぽを使用する場合は、低温やけどに注意します。
電気毛布を使う際は、温度設定に気をつけます。
患者さんの好みや状態に合わせて、温め方を選択します。
腹部への圧迫を避ける
腹部を圧迫することは、腸管を機械的に刺激し、腸管の運動を亢進させるので避けます。
たとえば、腹痛を緩和しようとして腹部を強くマッサージしたりしないように指導します。
あるいは保温のための腹帯を強く巻きすぎたりしないように注意します。
便を出そうと下腹部を強く押したりしないように説明します。
衣類も締め付けの少ないものを選ぶよう勧めます。
ベルトやウエストゴムのきついものは避けてもらいます。
就寝時の体位も工夫します。
腹部に負担のかからない楽な姿勢を見つけるよう支援します。
安静について
体動により腸管の蠕動運動も亢進するため、腸蠕動の鎮静を図るために安静を保つことが大切になります。
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心身を安静にすることが症状改善につながります。
不安・恐怖などのストレスを除去します。
頻回の下痢によって体力を消耗している患者さんは、床上排泄やポータブルトイレの使用となることがあります。
その場合には、他の患者さんや看護師への遠慮がかえってストレスを増強してしまうことがあります。
そのため、排泄には換気(消臭)、カーテンを用いてプライバシーを確保するなど工夫していく必要があります。
精神的ストレスは自律神経失調となり副交感神経を刺激し腸蠕動を亢進させてしまいます。
ベッド上で過ごす時間が長くなるため、褥瘡予防にも注意します。
体位変換や皮膚の観察を定期的に行います。
寒冷刺激を避ける
寒冷刺激は、皮膚の知覚神経を刺激し、反射的に副交感神経を興奮させて腸管の運動を亢進させ下痢を激しくさせます。
そのため、エアコンなどの風が身体に当たらないように配慮します。
夜間睡眠中の腹部の露出に対しては、腹巻や腹帯をして冷やさないように注意します。
病室の温度管理を適切に行います。
患者さんの感じ方を確認しながら調整します。
冷たい飲み物や食べ物も控えめにするよう説明します。
室温程度のものを摂取することを勧めます。
肛門とその周囲の清潔を維持する
胃腸からの分泌液を多量に入れた便は、肛門周囲の皮膚を汚染・湿潤させて湿疹やびらんを発生させ、かゆみを引き起こします。
したがって、排便後には、洗浄器や温湯を用いて肛門部とその周囲を洗浄します。
洗浄後は、柔らかいタオルで優しく押さえるように水分を拭き取ります。
こすらないように注意します。
皮膚の状態に応じて、保湿剤や皮膚保護剤を塗布します。
ウォシュレットを使用する場合は、水圧を弱めに設定します。
清潔を保つことで、皮膚トラブルの予防と早期発見ができます。
食事指導の実際
消化の良い食品を選ぶよう指導します。
おかゆや煮込んだうどんなど、柔らかく調理したものがよいです。
食物繊維の少ない食品の摂取を勧めます。
白米よりもおかゆ、生野菜よりも煮た野菜を選びます。
脂肪分の多い食品や刺激の強い食品は避けるよう説明します。
揚げ物や辛い料理は控えめにします。
乳製品が下痢を悪化させる場合もあります。
患者さんの症状を見ながら、摂取の可否を判断します。
少量ずつ頻回に摂取する方法も有効です。
一度に多く食べると腸管への負担が大きくなります。
カフェインやアルコールは避けるよう指導します。
これらは腸管を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。
水分管理のポイント
下痢による水分喪失を補うため、十分な水分摂取が必要です。
ただし、冷たいものは避け、常温や温かいものを勧めます。
経口補水液は、水分と電解質を同時に補給できるため効果的です。
市販のものや、自宅で作れるレシピを紹介します。
お茶やスープなども水分補給に役立ちます。
患者さんの好みに合わせて選択できるよう情報提供します。
点滴による補液が必要な場合もあります。
経口摂取が困難な時や、脱水が進行している時には医師に報告します。
水分出納バランスを記録します。
摂取量と排泄量を正確に把握することで、脱水の程度を評価できます。
感染対策の実施
下痢は感染性のものである可能性もあります。
スタンダードプリコーションを遵守します。
排泄物の処理時には、手袋やエプロンを着用します。
処理後は必ず手洗いを行います。
便の性状や色、臭いから感染の可能性を判断します。
血便や粘液便が見られる場合は、すぐに医師に報告します。
必要に応じて便培養検査を実施します。
感染性下痢の場合は、隔離対策も検討します。
他の患者さんへの感染拡大を防ぐため、トイレの使い分けなども行います。
患者さんや家族にも手洗いの大切さを説明します。
検査データの見方と評価
血液検査データを定期的に確認します。
電解質異常の有無を評価します。
低K血症は不整脈のリスクがあるため、特に注意が必要です。
脱水の指標となるBUNや尿比重をチェックします。
栄養状態を示す血漿蛋白やアルブミン値も重要です。
低栄養が続くと、免疫力の低下や創傷治癒の遅延につながります。
検査値の異常があれば、すぐに医師に報告します。
治療方針の変更や追加の検査が必要になることもあります。
検査結果を患者さんにも分かりやすく説明します。
数値の意味や今後の治療計画について、理解を深めてもらいます。
多職種との連携
医師との連携では、症状の変化や検査データについて情報共有します。
治療方針の確認や薬剤調整について相談します。
栄養士との連携も重要です。
患者さんの食事摂取状況や好みを伝えます。
適切な食形態や栄養補給方法について助言を得ます。
薬剤師との連携では、内服薬の影響について確認します。
下痢の原因が薬剤性の可能性もあるため、服薬内容を見直します。
理学療法士との連携では、体力低下に対するリハビリテーションを検討します。
無理のない範囲での運動や活動を計画します。
ソーシャルワーカーとの連携では、長期療養が必要な場合の支援を相談します。
退院に向けた指導
下痢症状が改善しても、再発予防が大切です。
食生活の注意点について、退院前に再度説明します。
ストレス管理の方法についても指導します。
規則正しい生活リズムの大切さを伝えます。
異常な症状が出た時の対処法を説明します。
どのような時に医療機関を受診すべきか、具体的に伝えます。
外来通院の計画を立てます。
定期的な経過観察の必要性を説明します。
内服薬がある場合は、服薬方法や副作用について確認します。
疑問点がないか、患者さんに尋ねます。
緊急時の連絡先を伝えます。
夜間や休日の対応についても説明します。
看護記録の書き方
排便回数と便の性状を詳しく記録します。
ブリストルスケールなどを用いて、客観的に表現します。
患者さんの訴えや表情の変化を記載します。
不安の程度や睡眠状態についても記録します。
実施したケアとその効果を書きます。
温罨法や清潔ケアの実施時間と患者さんの反応を記録します。
水分摂取量と排泄量を正確に記載します。
点滴の内容や量も漏れなく記録します。
検査データや医師への報告内容も記録に残します。
時系列で症状の変化が分かるようにします。
まとめ
下痢症状を持つ患者さんへの看護は、身体的ケアと精神的サポートの両面から取り組む必要があります。
症状の観察を丁寧に行い、異常の早期発見に努めます。
脱水や電解質異常、栄養状態の悪化を防ぐことが大切です。
患者さんの不安や恐怖に寄り添い、安心感を提供します。
プライバシーへの配慮も忘れずに行います。
清潔の保持と皮膚トラブルの予防に力を入れます。
快適な療養生活が送れるよう、環境調整を行います。
多職種と連携しながら、適切な看護計画を立案・実践します。
患者さん一人ひとりの状態に合わせた、個別性のあるケアを提供することが重要です。
下痢症状の改善だけでなく、患者さんのQOL向上を目指した看護を心がけていきましょう。








