ヘンダーソンの14の基本的看護の構成要素のうち、「身体の位置を動かし、またよい姿勢を保持する」は、患者が歩く、座る、立つ、寝返るなどの動作を自分で行い、楽でよい姿勢を保てているかをアセスメントする項目です。この記事では、集めるべき情報、アセスメントの視点、記載例をまとめます。
この項目でアセスメントすること
- 歩行、立位、座位、寝返り、移乗などの動作を、どの程度自分で行えているか
- 安楽でよい姿勢(良肢位)を保てているか
- 動作や姿勢を妨げている原因は何か
- 動けないことで起こりうる問題(褥瘡、拘縮、転倒など)はないか
集める情報
S情報(主観的情報)の例
- 動くときの痛み、だるさ、息苦しさの訴え
- 楽な姿勢、希望する体位
- 「歩くのが怖い」「ふらつく」などの不安
- 体位変換や移動の介助に対する思い(遠慮、要望)
- 動くことへの意欲
O情報(客観的情報)の例
- 歩行、立位、座位、寝返り、移乗の自立度と介助の方法
- 歩行補助具(杖、歩行器、車椅子)の使用状況
- 麻痺、筋力(MMT)、関節可動域、バランス能力
- 疼痛の部位と程度、呼吸困難、倦怠感
- 安静度、手術や治療による動作の制限(禁忌の肢位など)
- 点滴、ドレーン、ギプスなどの医療器具
- 意識レベル、認知機能、視力
- 皮膚の状態(発赤、褥瘡)、転倒歴
- 年齢、入院前の活動の状況
アセスメントの視点
1. 動作の自立の程度を判断する
寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、移乗、歩行など、動作ごとに、どこまで自分でできるかを具体的に判断します。
2. 動作や姿勢を妨げている原因を探す
| 原因の分類 | 例 |
|---|---|
| 身体的な要因 | 麻痺、筋力低下、関節の痛みや拘縮、加齢による平衡感覚の低下、視力の低下 |
| 疾患・治療の影響 | 骨折、手術後の創痛、ドレーンなどの医療器具、安静の指示、倦怠感、呼吸困難 |
| 心理的な要因 | 転倒への恐怖、意欲の低下 |
| 環境の要因 | ベッドの高さ、手すりの有無、履物、介助方法が合っていない |
3. 動けないことによる影響を予測する
活動が制限されると、筋力の低下や関節の拘縮、褥瘡、深部静脈血栓症、肺炎などの廃用症候群が起こりやすくなります。また、転倒のリスクにも注意が必要です。ほかの項目(排泄、清潔、休息など)への影響もあわせて考えます。
4. ヘンダーソンの視点で整理する
動作ができない原因を「体力」「意思力」「知識」の不足から考えます。たとえば、筋力の低下で立ち上がれないのは体力の不足、痛みへの恐怖で動こうとしないのは意思力の不足、脱臼を防ぐ動き方を知らないのは知識の不足と整理できます。
アセスメントの記載例
80歳代女性、右大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術を受けて術後3日目の場合の例です。
術後2日目から車椅子への移乗が許可され、現在は歩行器を使って病室内を見守りで歩行している。右股関節に動作時の痛み(NRS 4)があり、「また転ぶのが怖い」との発言がある。手術の方法から、股関節を深く曲げる、内側にひねる、脚を組むなどの姿勢は脱臼の危険があるが、低いベッドから立ち上がるときに股関節を深く曲げる動作がみられ、脱臼を防ぐ動き方についての知識が不足していると考えられる。疼痛と転倒への恐怖から活動量が減ると、筋力の低下や廃用症候群が進むおそれがある。鎮痛薬を活用して痛みを和らげ、ベッドの高さの調整と脱臼を防ぐ動作の指導を行いながら、安全に活動量を増やせるよう援助する必要がある。
よくある指摘
- 「歩行は見守り」とだけ書かれ、どの動作にどんな介助が必要かがわからない
- 動作を妨げている原因(痛み、筋力、恐怖心など)の分析がない
- 治療上の制限(禁忌の肢位、安静度)が考慮されていない
- 廃用症候群や転倒などの今後の予測がない
ヘンダーソンの14項目の全体像は、次の記事で解説しています。
ねこ先生
自分の言葉で書けます
看護過程サポートなら、参考例と添削で理解しながら進められます
✓アセスメントから看護問題につなげられない
✓教科書の知識を事例につなげられない
✓指導者の指摘への対応に悩む
ご自身で理解し、まとめられるようにサポートします
動作の自立度を評価するスケール
動作の自立の程度を客観的に表し、変化を比べるために、次のような評価スケールがよく使われます。
| スケール | 内容 |
|---|---|
| バーセルインデックス(BI) | 食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、更衣、排便・排尿の管理の10項目を、自立・一部介助・全介助などで点数化する(満点は100点) |
| 機能的自立度評価表(FIM) | 運動項目と認知項目を、1〜7点の7段階で評価する。「できる動作」ではなく「している動作」を評価する |
カルテにリハビリテーションの評価結果が記載されていることも多いため、看護の観察とあわせて情報として活用しましょう。
良肢位と体位変換
自分で体を動かすことが難しい患者では、関節が固まったり(拘縮)、皮膚に圧が集中したりしないよう、姿勢を整えることが大切です。
- 良肢位:関節が動かなくなっても、日常生活の動作に支障が少ない姿勢。肘は90度程度に曲げる、足関節は90度に保つなど
- 体位変換:同じ部位に圧がかかり続けないよう、一般に2時間ごとを目安に体の向きを変える(体圧分散マットの種類や皮膚の状態によって調整する)
- ポジショニング:枕やクッションを使って、体を安定させ、圧が一か所に集中しないようにする
▶ あわせて読みたい:良肢位とは?看護・介護で知っておくべき基本姿勢の保ち方
関連する看護問題の例
- 右片麻痺により、移乗や歩行に介助が必要である(身体可動性障害)
- 術後の疼痛と点滴・ドレーン類により、自分で体位を変えることが難しく、褥瘡のおそれがある
- 長期の臥床により、関節拘縮や筋力の低下が進むおそれがある
- 転倒への恐怖から活動を控えており、ADLが低下するおそれがある
動作や姿勢の問題は、ほかの項目(食事、排泄、清潔など)に大きく影響します。どの生活動作に、どの程度の影響が出ているかを具体的に結びつけてアセスメントしましょう。
情報収集のときのポイント
動作の観察は、リハビリテーションの場面だけでなく、トイレへの移動、食事のときの座位、ベッド上での寝返りなど、生活の中の実際の動作で行うことが大切です。「できる動作」と「している動作」が違うことも多く、たとえばリハビリ室では歩けても、病棟では転倒を心配して車椅子で移動していることがあります。その違いの理由を考えることが、援助の方向性を決める手がかりになります。
まとめ
「身体の位置を動かし、よい姿勢を保持する」のアセスメントでは、動作ごとの自立の程度、妨げている原因、動けないことによる影響の予測を、根拠とともに書くことが大切です。安全に配慮しながら、患者が自分で動ける範囲を広げられるよう援助を考えましょう。

