はじめに
入院によって仕事などの社会的な役割遂行が困難になった患者に対する看護は、身体的ケアだけでなく、心理的・社会的サポートも重要です。
この記事では、そのような患者の看護問題、看護目標、そして具体的な看護計画について詳しく解説します。
看護問題
入院によって社会的役割が遂行できない
長期目標
役割が遂行できないことによる不安が軽減する
短期目標
- 疾患や治療を受け入れる言葉を述べる
- 仕事に対する焦りの発言が無くなる
看護計画
OP(観察計画)
- 表情
- 訴え
- 発言内容
- 仕事の調整状況
- 経済的状況
TP(治療計画)
- 不安や焦りの訴えを受容的態度で傾聴し、気持ちの表出を図る
- 仕事との調整ができるよう家族も含めて話し合いを進める
- 入院中にもできる仕事をすすめる
- 本人の気分転換法があれば一緒にすすめる
EP(教育計画)
- 仕事よりもまずは自分の健康を優先すべきであることを伝える
- 休息の必要性を伝える
- 本人が仕事をしなくても経済的に大きな支障がないことを伝える
役割遂行困難に対する看護の重要性
入院による役割遂行の困難は、患者の心理的ストレスや社会的アイデンティティの喪失感につながる可能性があります。適切な看護介入により、以下のような効果が期待できます:
- 患者の不安やストレスの軽減
- 治療への積極的な参加意欲の向上
- 退院後の社会復帰へのスムーズな移行
- QOL(生活の質)の維持・向上
具体的な看護アプローチ
心理的サポート
- 傾聴と共感:患者の気持ちを十分に聴き、理解を示す
- 不安の具体化:漠然とした不安を具体的な問題に分解し、対処可能な形にする
- ストレス管理法の指導:リラクセーション技法や認知行動療法的アプローチの導入
社会的サポート
- 家族との連携:患者の状況を家族と共有し、協力体制を構築する
- 社会資源の活用:必要に応じてソーシャルワーカーと連携し、利用可能な社会資源を紹介する
- 職場との調整支援:患者の希望に応じて、職場とのコミュニケーションをサポートする
入院生活の充実
- 日課の設定:規則正しい生活リズムを維持し、目的意識を持たせる
- 趣味活動の奨励:可能な範囲で趣味や創作活動を行えるよう支援する
- 他患者との交流促進:同じ境遇の患者との交流を通じて、孤独感を軽減する
看護評価のポイント
- 患者の言動や表情の変化
- 不安や焦りの訴えの頻度と内容
- 治療への参加度
- 将来に対する展望の変化
- 家族や周囲のサポート状況
まとめ
役割遂行の困難に直面している患者への看護は、身体的ケアと同様に重要です。患者の個別性を考慮し、心理的・社会的側面からの包括的なアプローチを行うことが求められます。看護師は、患者の気持ちに寄り添いながら、適切な情報提供と支援を行い、患者が新たな状況に適応し、前向きに治療に取り組めるよう援助することが重要です。
また、この問題は入院中だけでなく、退院後の生活にも大きく影響する可能性があるため、継続的な支援と評価が必要です。多職種チームとの連携を図りながら、患者の社会復帰を見据えた長期的な視点での看護計画立案と実践が求められます。