はじめに
看護計画って難しそうに感じますよね。でも、コツさえつかめば誰でも立てられるようになります。この記事では、看護計画を立てる時のポイントやテクニックについて、できるだけ分かりやすく説明していきます。
なぜ看護計画が大切なの?
看護計画は、患者さん一人一人に合わせて作る大切な指針です。病棟で働く看護師全員が同じように患者さんをケアできるようにするための、とても重要な道具なんです。
例えば、「患者さんの状態が良くなった」という表現は、人によって受け取り方が違います。ある人は「熱が下がった」と考え、別の人は「食欲が出てきた」と考えるかもしれません。そのため、看護計画では「体温が37度以下になる」「食事を半分以上摂取できる」といった、誰が見ても同じように理解できる表現を使うことが大切です。
目標の立て方を覚えよう
看護計画で目標を立てる時は、「RUMBA(ルンバ)」という便利な法則があります。これは以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。
まず「R」は「Real(現実的)」という意味です。例えば、手術後すぐの患者さんに「今日から1時間歩く」という目標を立てるのは現実的ではありません。「ベッドで足首を動かす運動を5回する」といった、その時の状態に合わせた目標を立てましょう。
「U」は「Understandable(理解できる)」です。患者さんやご家族が「なるほど、そうか」と分かる目標を立てることが大切です。
具体的な目標の書き方
目標を書く時は、その目標が「認知領域」「情意領域」「精神運動領域」のどれに当てはまるのかを考えることが大切です。これらの領域によって、使う動詞が変わってきます。
「認知領域」は、患者さんの知識や理解に関する目標です。例えば、「糖尿病の食事療法について3つ以上説明できる」「服薬する薬の名前と効果を述べることができる」といった目標を立てます。この領域では、「説明する」「述べる」「列挙する」といった動詞を使います。
「情意領域」は、患者さんの気持ちや態度に関する目標です。「不安な気持ちを看護師に話すことができる」「リハビリに前向きに取り組むことができる」といった目標を立てます。この領域では、「表現する」「参加する」「取り組む」といった動詞を使います。
「精神運動領域」は、実際の行動や動作に関する目標です。「トイレまでの歩行が自力でできる」「点滴を自己管理できる」といった目標を立てます。この領域では、「実施する」「行う」「管理する」といった動詞を使います。
看護介入の書き方のコツ
看護介入(実際に行う看護ケア)を書く時は、「OP(観察計画)」「TP(処置計画)」「EP(教育計画)」の3つに分けて考えると分かりやすいです。
例えば、手術後の患者さんの場合:
- OP:「体温、脈拍、血圧を4時間ごとに測定する」「創部の発赤、腫脹の有無を確認する」
- TP:「創部の消毒を1日2回実施する」「ドレーンの排液量を確認し記録する」
- EP:「深呼吸の方法を説明し、2時間ごとに実施を促す」「早期離床の重要性について説明する」
5W1Hを使って具体的に書こう
看護介入を書くときは、「5W1H」を意識すると、誰が見ても分かりやすい計画になります。
例えば「歩行訓練を行う」という漠然とした表現ではなく:
- Who(誰が):看護師2名が付き添い
- What(何を):病棟内の歩行訓練
- When(いつ):朝食後30分後に
- Where(どこで):病棟廊下を
- Why(なぜ):下肢筋力の維持・向上のため
- How(どのように):手すりを使用しながら、10メートルずつ休憩を入れて
このように具体的に書くことで、どの看護師が見ても同じようなケアができるようになります。
優先順位の決め方
看護問題には優先順位をつける必要があります。その時に役立つのが、マズローのニードの階層です。基本的には、以下の順番で優先度が高くなります:
- 生理的ニード(呼吸、循環、排泄など、生きていくために必要な基本的なこと)
- 安全のニード(危険から身を守る、安全な環境で過ごすこと)
- 承認と帰属のニード(家族や周囲の人との関係、所属意識)
- 自尊支配のニード(自分を認め、尊重されること)
- 自己実現のニード(自分の可能性を追求すること)
ただし、これはあくまでも基本的な考え方です。例えば、がん患者さんの場合、痛みのコントロール(生理的ニード)と同時に、家族との時間を大切にしたい(承認と帰属のニード)という思いも強いかもしれません。患者さん一人一人の価値観や希望に合わせて、柔軟に優先順位を考えることが大切です。
看護計画を立てる具体的な手順
それでは、実際の看護計画の立て方を順番に見ていきましょう。基本的には、「アセスメント→問題の明確化→計画立案→実施→評価」という流れで進めます。
まず、集めた情報をもとにアセスメントを行い、患者さんの問題点を見つけます。例えば、「糖尿病の知識が不足している」「手術後の痛みがある」「転倒のリスクがある」といった問題点を挙げていきます。
次に、それぞれの問題に対して長期目標と短期目標を設定します。長期目標は退院までに達成したい目標で、短期目標は数日以内に達成したい目標です。例えば:
長期目標:「退院後も適切な食事管理ができる」
短期目標:「今週中に糖尿病食品交換表が理解できる」
よくある間違いと注意点
看護計画を立てる時に、よく見られる間違いがいくつかあります。
まず、あいまいな表現を使ってしまうことです。「だいたい」「程度」「様子」といった言葉は、人によって解釈が違ってきます。代わりに、具体的な数値や状態を書くようにしましょう。
次に、実現不可能な目標を立ててしまうことです。患者さんの状態や回復段階を考えずに、理想的すぎる目標を立ててしまうことがあります。これでは患者さんも看護師も疲れてしまいます。
最後に、評価がしづらい目標を立ててしまうことです。「よく眠れる」という目標では、何をもって「よく眠れた」と判断するのか分かりません。「夜間6時間以上の連続した睡眠がとれる」というように、具体的な評価基準を含めた目標にしましょう。
まとめ~より良い看護計画を目指して~
看護計画は、患者さんにより良いケアを提供するための大切な道具です。最初は難しく感じるかもしれませんが、この記事で紹介したポイントを意識しながら練習することで、必ず上手に立てられるようになります。
特に大切なのは、患者さん一人一人の状況や希望に合わせた、実現可能な計画を立てることです。そして、定期的に評価と見直しを行い、必要に応じて修正していくことも忘れないでください。
看護計画を立てるスキルは、経験を重ねることで確実に向上していきます。困ったときは先輩看護師に相談したり、他のスタッフと意見交換したりしながら、よりよい看護計画が立てられるよう努力していきましょう。