病棟実習で「感染リスク状態」という看護診断が出たとき、何をアセスメントすればいいか、どんな看護計画を立てればいいかで悩む学生さんはとても多いです。
感染リスク状態は、NANDA-Iの看護診断の中でも使用頻度が高く、術後患者・免疫低下患者・カテーテル挿入中の患者など、さまざまな場面で登場します。 この記事では、感染リスク状態の要因から患者目標、観察計画・ケア計画・教育計画まで、実習で使える形で解説します。
感染リスク状態とは
感染リスク状態とは、病原微生物に感染しやすい状態にあることを意味します。
健康な人であれば、免疫機能が外部からの細菌やウイルスの侵入を防いでくれます。 しかし、手術・疾患・医療処置・薬剤などの影響によって、その防御機能が低下している状態が「感染リスク状態」です。
看護師は感染が実際に起きてから動くのではなく、リスクを事前に把握して予防的に動くことが大切です。 そのためにも、要因をしっかりと理解しておく必要があります。
感染リスク状態の要因
感染リスク状態が生じる背景には、さまざまな要因があります。
栄養不良や白血球の減少による免疫力の低下は、感染リスクを高める代表的な要因のひとつです。 白血球数の低下、特に好中球数が低下している状態(好中球減少症)では、細菌感染に対する抵抗力がほとんどなくなります。
気管切開・尿道カテーテル・末梢静脈ライン・中心静脈ラインなどの侵襲的な医療器具の使用も大きな要因です。 これらは体の外界との境界を破るため、細菌が体内に侵入しやすくなります。
手術部位・胃瘻造設部位・骨牽引ピン挿入部位なども同様で、皮膚や粘膜のバリア機能が失われた状態では感染リスクが高まります。
また、便や尿による創部の汚染、高血糖による免疫機能の低下も無視できません。 糖尿病患者では、血糖コントロールが不良なほど感染に対する抵抗力が低下することが知られています。
分娩中の外傷や会陰側切開なども、産褥期の感染リスク要因として挙げられます。
副腎皮質ステロイド・抗がん剤・免疫抑制剤などの薬剤使用も、感染リスクを高める要因です。 これらの薬剤は治療上必要なものですが、免疫機能を低下させる副作用があるため、投与中の患者には特に注意が必要です。
患者目標
感染リスク状態に対する患者目標は、以下の通りです。
長期目標
感染を発症することなく、安全に治療・療養を継続できる。
短期目標
感染予防に関する知識を得て、自分の状態を理解できる。
手洗い・うがい・マスク着用などの感染予防行動を日常的に実践できる。
感染のサインを理解し、異変を感じたときに医療者に伝えることができる。
観察計画(OP)
感染リスク状態にある患者を観察する際に、押さえておきたい項目は以下の通りです。
体温・脈拍・呼吸数・血圧のバイタルサインの変化を確認します。 発熱は感染の最も代表的なサインのひとつです。 37.5℃以上の発熱が続いている場合は、感染の可能性を念頭に置いてアセスメントします。
SpO₂の変化も確認します。 肺炎などの呼吸器感染が生じた場合、酸素飽和度の低下が見られることがあります。
皮膚・粘膜の状態を全身にわたって確認します。 口腔内・陰部・肛門周囲なども含め、発赤・腫脹・熱感・疼痛・びらんの有無を確認します。
血液検査データの確認は感染リスクのアセスメントで欠かせません。 白血球数(WBC)・好中球数・CRP・赤沈などの値を確認し、感染や炎症の状態を把握します。
微生物検査・細菌培養検査のデータも収集します。 感染が疑われる場合や発熱時に採取された検体の結果を確認することで、起炎菌の特定や抗菌薬の選択に役立てます。
喀痰の量・性状・色を記録します。 膿性痰や血性痰が見られる場合は、気道感染の可能性があります。
ガーゼ汚染の有無と性状を確認します。 膿性または悪臭のある滲出液が見られる場合は、創部感染が考えられます。
傷口の発赤・腫脹・熱感・疼痛(炎症の4徴候)を評価します。 これらは局所感染の典型的なサインです。
チューブ・カテーテルの挿入部位の状態と、排液の量・性状を確認します。 尿の混濁や膿性排液は感染を示唆するサインです。


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抗がん剤・免疫抑制剤・副腎皮質ステロイドなどの易感染性薬剤の投与状況を記録します。
人工呼吸器・吸引カテーテル・ネブライザー・気管切開カニューレ・観血的モニタリング機器などの易感染性器具の使用状況を確認します。
胸部X線などの画像所見も収集します。 肺炎の発症や悪化の早期把握に役立ちます。
喫煙習慣の有無も記録します。 喫煙は気道の防御機能を低下させ、呼吸器感染のリスクを高めます。
ケア計画(TP)
感染リスク状態に対するケアの内容は以下の通りです。
バイタルサインを定期的に測定し、変化を早期に把握します。
手術・泌尿生殖系の処置・麻酔・人工呼吸器の使用・吸引カテーテル・ネブライザー・気管切開カニューレ・観血的モニタリングなど、感染リスクの予測因子をアセスメントします。
基礎疾患の状態を評価し、免疫機能に影響を与えうる要因を把握します。
創部・カテーテル・チューブ類の挿入部位の清潔保持は、感染予防ケアの中心となる介入のひとつです。 処置はできる限り無菌的操作で行います。
清拭・洗髪・手浴・足浴・陰部洗浄・消毒など、必要な清潔ケアを介助します。 患者の状態に応じて、介護浴槽を使った入浴介助やシャワー浴の介助も行います。
必要に応じてアイソレーション(隔離)を実施し、面会者を制限します。 易感染状態にある患者への接触を最小限にするとともに、外来感染源からの保護を図ります。
環境整備を行い、適切な換気・加湿を調整します。 感染予防の観点からも、室内環境を清潔に保つことが大切です。
栄養・水分の補給を行います。 高カロリー・高タンパクの食事摂取を促し、必要に応じて無菌食を提供します。 栄養状態の改善は、免疫機能の維持・回復につながります。
体位変換・マッサージ・咳嗽促進・深呼吸の促進を行います。 長時間の同一体位は肺炎や褥瘡感染のリスクを高めます。
内服薬の管理を行い、指示通りに投与されているかを確認します。
教育計画(EP)
感染リスク状態にある患者・家族への指導内容は以下の通りです。
うがいや手洗いの正しい方法について指導します。 手洗いは石けんを使って30秒以上、指の間・爪の先・手首まで丁寧に洗うよう伝えます。
清潔保持の重要性・面会制限の理由・マスクの正しい着用方法について説明し、理解を促します。 患者自身が感染予防行動を取れるよう、わかりやすく伝えることが大切です。
カテーテル・チューブ類・創部の清潔な保持方法について指導します。 自己管理できる患者には、自分でケアを行う方法も説明します。
指示された薬を決められた時間に正しく内服するよう指導します。 抗菌薬の場合は、自己判断での中断が耐性菌の発生につながることも伝えます。
感染のサイン(発熱・悪寒・創部の発赤・疼痛・排液の変化など)を患者・家族に説明し、異変があればすぐに医療者に伝えるよう促します。
感染リスク状態の看護計画を立てるときのポイント
感染リスク状態の看護計画を立てるうえで、意識してほしいことがあります。
「感染リスク状態」はあくまで問題が起きていない状態、つまりまだ感染は生じていないことを前提とした看護診断です。 すでに感染が起きている場合は、「感染」や「高体温」など別の看護診断を検討する必要があります。
また、患者ごとにリスク要因は異なります。 術後患者・化学療法中の患者・糖尿病患者・高齢者では、リスクの背景が違います。 患者の状態に合わせてアセスメントし、優先度の高いリスク要因から介入していくことが大切です。
看護計画は立てるだけでなく、実施しながら評価・修正を繰り返すことが臨床では重要です。 感染徴候が新たに見られた場合は、すみやかに指導者や担当看護師に報告してください。
まとめ
感染リスク状態の看護計画は、免疫機能・侵襲的処置・基礎疾患・薬剤使用など、複数のリスク要因を総合的に把握したうえで立案することが大切です。
観察・ケア・教育の3つの柱を意識しながら、患者個別の状況に合わせた計画を作ることが、実習での評価にもつながります。
この記事が、感染リスク状態の看護計画作成で悩んでいる看護学生の参考になれば幸いです。








