大腸がんは年々増加傾向にある悪性腫瘍で、適切な看護ケアが患者の治療成功と回復に大きく影響します。
今回は52歳男性の進行性大腸がん患者を事例に、ゴードン11項目を用いたアセスメント方法と包括的な看護過程について詳しく解説していきます。
大腸がんの基礎知識と看護の重要性
大腸がんは大腸粘膜から発生し、進行とともに腸管壁深部や他臓器への浸潤・転移を来す悪性腫瘍です。
わが国では食生活の欧米化に伴い罹患率が急激に増加し、現在では男女ともにがん死因の上位を占めています。
TNM分類により病期が決定され、治療方針と予後の指標となります。
早期発見・早期治療により治癒率は向上しますが、進行がんでは外科手術、化学療法、放射線療法の集学的治療が必要となります。
事例紹介:A氏の病歴と生活背景
今回検討する事例は、52歳男性のA氏です。
会社員として中間管理職を務め、責任感が強く自己決定的な性格です。
**ステージⅡ進行性直腸がん(T3,M0,N0)**で、過去3ヶ月で5kgの体重減少が見られています。
家族構成は妻と高校生の息子の3人家族で、家族関係は良好です。
食生活は朝食抜き、昼食はコンビニ弁当中心の不規則な食習慣で、これが発症要因の一つと考えられます。
中年期男性の特徴とがんの影響
身体的・心理的特徴
52歳は働き盛りの中年期で、家庭と職場での責任が最も重い時期です。
健康への関心が低く、仕事優先の生活により健康管理が疎かになりがちです。
がんの診断は自己の死生観と向き合う契機となり、大きな心理的衝撃をもたらします。
社会的役割への影響
家庭の経済的支柱かつ職場での責任者という複数の役割を担っています。
がんの治療による就労制限は、経済的不安と社会的役割の変化をもたらします。
息子の高校卒業・進学を控え、経済的責任への不安が治療への取り組みに影響する可能性があります。
ゴードン11項目による包括的アセスメント
健康知覚-健康管理パターン
がんに対する認識と健康管理行動の評価が重要です。
A氏は既往歴がなく、これまで健康問題を経験していないため健康への意識が低い状況です。
便潜血検査陽性にも関わらず自覚症状がないため、検査や治療の必要性への理解が不十分な可能性があります。
食生活の乱れががん発症の一因であることを理解し、生活習慣改善への動機づけが必要です。
責任感の強い性格を活かし、家族のためにも健康管理に取り組む重要性を説明します。
栄養-代謝パターン
がん患者特有の栄養問題への包括的アプローチが必要です。
3ヶ月で5kgの体重減少は、がんによる代謝亢進と食欲不振を示しています。
朝食欠食、コンビニ弁当中心の食生活は栄養バランスが悪く、術後の回復にも影響します。
高脂肪・高カロリー食品を好み、野菜・果物摂取が少ない食習慣の改善が急務です。
術前の栄養状態改善と術後の早期回復に向けた栄養介入を計画します。
排泄パターン
大腸がんと直腸切除術による排泄機能への影響を評価します。
直腸がんの場合、腫瘍による通過障害や出血などの症状が現れることがあります。
手術により人工肛門造設の可能性があり、排泄パターンの大幅な変化が予想されます。
術前の排便習慣の把握と術後の新しい排泄方法への適応支援が重要です。
人工肛門管理に関する段階的な教育と心理的支援を計画します。
活動-運動パターン
がんによる体力低下と術後の活動制限への対応が必要です。
特別な運動習慣がないA氏にとって、術後の早期離床と活動量確保は課題となります。
段階的な活動量増加により術後合併症を予防し、早期回復を促進します。
職場復帰に向けた体力回復プログラムの立案も重要な要素です。
睡眠-休息パターン
がん診断による心理的ストレスと入院環境による睡眠への影響を評価します。
診断時の衝撃と治療への不安により、睡眠パターンの乱れが生じやすくなります。
術後の疼痛や環境変化も睡眠の質に影響を与える要因です。
十分な休息は免疫機能と創傷治癒に重要なため、良質な睡眠環境の提供が必要です。
認知-知覚パターン
がんと治療に関する理解度と学習能力を評価します。
中間管理職という立場から、論理的思考力と情報処理能力は高いと考えられます。
がんの病態、治療選択肢、予後について正確な情報提供を行い、十分な理解を促進します。
術後の疼痛管理と合併症の早期発見のための症状観察方法を指導します。
自己知覚-自己概念パターン
がん診断による自己概念への影響を評価します。
これまで健康であった自分へのイメージと現在の状況とのギャップが、自己概念に混乱をもたらす可能性があります。
人工肛門造設による身体像の変化は、自尊心や自己効力感に大きな影響を与えます。
段階的な受容プロセスを支援し、新しい自己像の構築を助けます。
役割-関係パターン
家庭と職場での役割変化への適応を支援します。
経済的支柱としての責任と治療に専念する必要性との間でジレンマが生じます。
妻の勤務調整や息子の心理的影響への配慮も重要な要素です。
段階的な職場復帰と役割分担の調整により、家族システムの安定を図ります。
セクシュアリティ-生殖パターン
直腸がん手術による性機能への影響を考慮します。
直腸切除術では骨盤神経叢の損傷により、性機能障害が生じる可能性があります。
夫婦関係への影響と心理的ストレスに対する適切な情報提供と支援が必要です。
必要に応じて専門医への相談を促し、継続的なフォローアップを提供します。
コーピング-ストレス耐性パターン
がん診断と治療に対するストレス反応を評価します。
責任感の強い性格により、家族への心配をかけたくないという思いが強い可能性があります。
キャンプなどの家族との時間を重視する価値観を活かし、前向きな治療への取り組みを支援します。
適切なストレス対処方法の習得と社会的支援の活用を促進します。
価値-信念パターン
人生観と治療に対する価値観の理解が重要です。
家族との時間を大切にする価値観は、治療継続の強い動機となります。
自己決定的な性格を尊重し、治療選択における主体性を支援します。
将来への希望と現実的な目標設定のバランスを保った支援を提供します。
看護診断と看護計画
主要な看護診断
知識不足:がんの病態と治療に関連した疾患理解の不十分。
栄養摂取不足:がんによる代謝変化と食習慣に関連した体重減少。
ボディイメージ混乱リスク状態:人工肛門造設による身体像の変化。
役割遂行困難リスク状態:治療による活動制限に関連した社会的役割の変化。
看護目標と介入
短期目標として、疾患の理解促進、栄養状態の改善、術前準備の完了を設定します。
長期目標として、治療の完遂、社会復帰の支援、再発予防の徹底を目指します。
個別性を重視し、患者の価値観と生活スタイルに応じた実践可能な計画を立案します。
家族支援と継続看護
妻への支援
治療過程の理解と家族の役割について具体的に説明します。
勤務調整による経済的影響と将来計画について相談支援を提供します。
介護技術の習得と心理的サポートにより、家族の介護負担を軽減します。
息子への支援
高校生という発達段階を考慮した年齢に応じた説明を行います。
父親の病気による心理的影響と学業への影響を最小限に抑える支援を提供します。
職場との連携
段階的な職場復帰プログラムの策定と職場環境の調整を支援します。
産業保健師や人事部門との連携により、継続就労を支援します。
継続看護と長期フォローアップ
外来での継続支援
定期的な経過観察と再発の早期発見を目的とした継続的なフォローアップを実施します。
人工肛門管理の習熟度確認と問題解決支援を継続します。
生活習慣の改善
食生活の根本的な見直しと実践可能な改善策の継続的な指導を行います。
定期的な栄養相談と体重管理により、再発予防を徹底します。
まとめ
大腸がん患者の看護において、ゴードン11項目を基盤とした包括的アセスメントは極めて重要です。
がんという疾患の特殊性と直腸がん特有の治療による影響を理解し、患者の個別性と家族全体のニーズを考慮した全人的アプローチが求められます。
術前から術後、そして社会復帰まで一貫した支援により、患者と家族の最良のアウトカムを目指します。
身体的回復だけでなく心理社会的適応を含めた包括的な支援により、患者が自分らしい生活を取り戻せるよう継続的にサポートすることが看護師の重要な役割です。
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