低出生体重児の看護は、従来の疾患中心のアプローチから、児の持つ力と可能性に焦点を当てたウェルネス志向のケアへと変化しています。
今回は37週3日で出生した低出生体重児を事例に、ウェルネス看護過程を用いたアセスメント方法と家族全体を支える看護について詳しく解説していきます。
低出生体重児とウェルネス看護の意義
低出生体重児とは出生時体重が2500g未満の新生児を指し、従来は未熟児と呼ばれていました。
現在では単に体重の軽さだけでなく、児の成熟度や発達能力を総合的に評価する視点が重要視されています。
ウェルネス看護過程は疾患や問題に焦点を当てるのではなく、患者の強みや資源、健康への可能性に注目するアプローチです。
低出生体重児において、この視点は児の持つ成長・発達の可能性を最大限に引き出し、家族の育児能力を向上させる重要な意味を持ちます。
事例紹介:Bちゃんの出生経過と現状
今回検討する事例は、在胎37週3日で帝王切開により出生した男児Bちゃんです。
出生時体重2481g、身長49cm、頭囲34cm、胸囲33.5cmで、低出生体重児に分類されます。
アプガースコアは1分後9点、5分後11点と良好で、生命兆候も安定しています。
臍帯巻絡があったものの、分娩時の状態は概ね良好で、特別な蘇生処置は必要ありませんでした。
早期母子接触を45分間実施しましたが、乳頭吸啜は見られない状況です。
低出生体重児の分類と特徴
体重による分類
低出生体重児は体重により細分化されます。
1500g以上2500g未満を低出生体重児、1000g以上1500g未満を極低出生体重児、1000g未満を超極低出生体重児と分類します。
Bちゃんは2481gで低出生体重児に該当し、比較的軽症のカテゴリーです。
在胎週数による評価
37週3日での出生は早期正期産に分類されます。
37週以降は正期産とされますが、37-38週での出生は39週以降と比較して合併症リスクがやや高いことが知られています。
Bちゃんの場合、週数相応の発育を示しており、子宮内発育遅延は認められません。
ウェルネス看護過程による包括的アセスメント
生理的機能の強みと課題
呼吸機能のアセスメントでは、呼吸数65回/分とやや頻呼吸を認めます。
胸壁と腹壁の動きが非同調で、肋間陥没と剣状突起下陥没が見られますが、これは低出生体重児に一般的な所見です。
呻吟が聞かれることは呼吸努力の表れですが、チアノーゼがないことは酸素化が保たれていることを示します。
強みとして、自発呼吸が維持されており、酸素投与により呼吸状態が安定していることが挙げられます。
循環機能の評価
心拍数149回/分は正常範囲内で、心雑音も聴取されません。
四肢末梢のチアノーゼがないことは、循環動態が安定していることを示しています。
血圧や毛細血管再充満時間など、さらなる循環指標の評価により、より詳細な状態把握が可能です。
体温調節機能
直腸温37.2℃は正常範囲で、体温調節機能が働いていることを示しています。
低出生体重児は体表面積が大きく熱産生能力が低いため、体温維持には十分な配慮が必要です。
保温器や適切な環境温度管理により、エネルギー消費を最小限に抑制します。
栄養・代謝機能
早期母子接触時に乳頭吸啜が見られなかったことは、吸啜反射の未熟性を示唆します。
しかし、これは在胎37週という週数を考慮すれば理解できる所見です。
段階的な哺乳訓練により、吸啜能力の向上が期待できます。
体重変化は出生後わずかな減少に留まっており、水分バランスは良好です。
神経機能の発達
アプガースコアの高値は神経機能の良好さを示しています。
啼泣は弱いものの存在し、四肢の動きも普通であることから、基本的な神経機能は保たれています。
原始反射の確認や筋緊張の評価により、神経発達の詳細な評価が必要です。
免疫機能と感染予防
低出生体重児は感染症に対する抵抗力が低いため、感染予防対策が重要です。
抗生剤点眼が未実施との記録がありますが、眼感染症予防のため早期実施が推奨されます。
手指衛生、清潔なケア環境の維持、不要な侵襲的処置の回避が感染予防の基本です。
家族中心のウェルネスアプローチ
母親の強みと資源
45分間の早期母子接触を実施できたことは、母子愛着形成にとって重要な意味を持ちます。
帝王切開という分娩方法にも関わらず、早期接触が可能であったことは母親の回復が良好であることを示します。
母親の育児意欲と学習能力を活かし、段階的な育児参加を促進します。
父親・家族の参加
家族全体の参加により、包括的な支援体制を構築します。
父親の育児参加は母親の心理的支援と育児負担軽減に重要な役割を果たします。
きょうだいがいる場合は、年齢に応じた説明と心理的配慮が必要です。
社会的資源の活用
地域の保健師、助産師、小児科医との連携により継続的な支援を提供します。
育児支援サービスや経済的支援制度の情報提供も重要な要素です。
ウェルネス看護診断と目標設定
主要なウェルネス看護診断
母子愛着促進の準備状態:早期母子接触の実施により強化された母子の絆。
母乳栄養確立の可能性:母親の意欲と段階的支援による成功への準備性。
家族機能強化の機会:新しい家族成員の加入による家族結束の向上可能性。
成長発達促進の準備状態:基本的生命機能の安定による発達の可能性。
短期・長期目標
短期目標として、安全な呼吸の維持、体温調節の安定、段階的な栄養摂取の確立を設定します。
長期目標として、正常な成長発達の達成、効果的な親役割の獲得、家族機能の強化を目指します。
目標設定では数値的指標だけでなく、質的な改善も重視します。
具体的な看護介入
発達支援ケア
個別化された発達支援プログラムにより、児の神経発達を促進します。
適切な体位保持、環境調整、感覚刺激の提供により、最適な発達環境を整備します。
カンガルーケアの段階的導入により、母子相互作用を促進します。
栄養支援
段階的な哺乳訓練プログラムにより、経口摂取能力の向上を図ります。
母乳育児支援では、母親の搾乳指導と母乳の適切な管理方法を指導します。
栄養評価は体重変化だけでなく、哺乳量、尿量、活動性なども含めて総合的に判断します。
家族支援
両親への育児指導は段階的かつ個別的に実施します。
児の状態説明では、問題点だけでなく良好な面も強調し、希望を持てるよう配慮します。
育児技術の習得では、両親の学習ペースを尊重し、自信を持てるよう支援します。
継続看護と地域連携
退院準備
退院前評価では児の成長発達と家族の準備状況を総合的に判断します。
体重増加、哺乳確立、体温調節、感染兆候なしなどの身体的条件を確認します。
両親の育児技術習得と緊急時対応能力も重要な評価項目です。
地域での継続支援
訪問看護や乳児健診により継続的なフォローアップを提供します。
成長発達の評価、予防接種スケジュールの調整、育児相談対応が主要な支援内容です。
必要に応じて専門機関への紹介や早期療育支援の調整も行います。
予防的視点での健康増進
感染予防対策
家庭での感染予防教育により、健康維持を支援します。
手指衛生、環境清潔、来客制限などの具体的な方法を指導します。
予防接種の重要性と適切なタイミングについても説明します。
発達促進活動
日常生活の中でできる発達促進活動を具体的に指導します。
適切な刺激提供、親子の相互作用促進、安全な環境作りが主要な内容です。
まとめ
低出生体重児の看護において、ウェルネス看護過程は児と家族の持つ強みと可能性を最大限に活用する有効なアプローチです。
疾患や問題に焦点を当てる従来の方法から、健康への可能性と資源に注目することで、より前向きで建設的な支援が可能となります。
家族中心のケアと多職種連携により、児の最適な成長発達と家族機能の向上を実現できます。
継続的な支援体制の構築により、低出生体重児とその家族が健やかな未来を築けるよう、専門的で温かみのある看護の提供が重要です。
カンサポでは、低出生体重児の複雑な病態と看護過程について専門的な学習支援を提供しています。
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