肺炎患者の看護過程作成に悩んでいる看護学生の皆さん、こんにちは。
ゴードンの11の機能的健康パターンを使った肺炎の看護過程は、呼吸状態の評価や感染徴候の観察、栄養状態の管理など、多面的なアセスメントが求められるため、多くの学生が難しく感じるテーマです。
本記事では、誤嚥性肺炎で入院した70代男性の架空事例を用いて、ゴードンの各パターン別にアセスメントのポイントと看護問題の導き方を具体的に解説します。
この記事を読むことで、肺炎患者の全体像把握から看護計画立案までの流れが理解でき、実習記録作成の参考になるはずです。
事例紹介|誤嚥性肺炎で入院した70代男性
患者プロフィール
E氏、76歳男性、元印刷工場勤務(退職済み)
診断名:誤嚥性肺炎、脳梗塞後遺症(左片麻痺)、高血圧症
既往歴:5年前に脳梗塞発症、左片麻痺と嚥下障害あり
家族構成:妻(73歳)と二人暮らし、長女は隣県在住
入院の経緯
2日前から38度台の発熱があり、咳と黄色い痰が出始めました。
前日の夜から呼吸が苦しくなり、食事中にむせることが増えたため、妻が翌朝かかりつけ医を受診しました。
胸部レントゲンで右下肺野に浸潤影を認め、誤嚥性肺炎と診断され、総合病院へ紹介入院となりました。
入院時データ(入院当日)
身長165cm、体重52kg(普段より2kg減少)、BMI 19.1
意識レベル:清明だが反応やや遅い
体温38.5℃、脈拍92回/分、血圧142/85mmHg、呼吸数26回/分
SpO2 90%(室内気)→95%(酸素3L/分)
湿性咳嗽あり、黄色粘稠痰を喀出
右下肺野に副雑音聴取
検査データ
WBC 12,500/μL、CRP 8.5mg/dL
TP 5.8g/dL、Alb 2.8g/dL
BUN 25mg/dL、Cre 0.9mg/dL
Na 136mEq/L、K 4.0mEq/L
生活習慣(入院前)
喫煙:40年前に禁煙
飲酒:なし
食事:妻が調理、嚥下しやすい刻み食
要介護2、訪問看護週1回、デイサービス週2回利用
ゴードン11パターン別アセスメントのポイント
健康知覚-健康管理パターン
主観的データ(S情報)
2日前から熱が出て、咳も出るようになりました
食事の時にむせやすくて困ります
前にも肺炎で入院したことがあります
薬は妻が管理してくれています
客観的データ(O情報)
5年前に脳梗塞発症、左片麻痺と嚥下障害あり
脳梗塞後、過去2回誤嚥性肺炎で入院歴あり
現在要介護2、訪問看護とデイサービス利用中
服薬管理は妻が実施
今回、発熱と呼吸困難で受診し入院
WBC 12,500/μL、CRP 8.5mg/dLと炎症反応高値
アセスメントの要点
E氏は脳梗塞後遺症により嚥下障害があり、これが誤嚥性肺炎を繰り返す主な原因です。
過去2回の入院歴があることから、嚥下機能の低下が持続的な問題となっています。
服薬管理は妻が行っており、E氏自身の健康管理能力は限定的です。
炎症反応が高値であり、細菌感染による肺炎の状態が示されています。
今回も食事中のむせが増加してから肺炎を発症しており、嚥下機能の評価と誤嚥予防が重要です。
退院後も再発リスクが高いため、妻を含めた継続的な誤嚥予防の指導が必要です。
栄養-代謝パターン
主観的データ(S情報)
食欲があまりありません
飲み込みにくくて、食事に時間がかかります
水分を飲むとむせやすいです
最近体重が減ってきました
客観的データ(O情報)
身長165cm、体重52kg(普段54kg)、2kg減少
BMI 19.1とやせ傾向
TP 5.8g/dL、Alb 2.8g/dLと低栄養状態
入院前:刻み食、水分にとろみ付け、摂取量7〜8割
入院後:絶食、点滴管理(1日1500mL)
体温38.5℃、発熱による代謝亢進あり
口腔内乾燥あり
嚥下障害により食事摂取に時間を要する
アセスメントの要点
総蛋白とアルブミンが低値であり、明らかな低栄養状態です。
低栄養は免疫力を低下させ、感染からの回復を遅らせる要因となります。
体重減少も見られており、慢性的な栄養摂取不足が推測されます。
嚥下障害により食事摂取に時間がかかり、十分な栄養が摂取できていない可能性があります。
発熱により代謝が亢進し、エネルギー消費が増加しています。
現在は絶食で点滴管理中ですが、早期に経口摂取を再開し、栄養状態を改善する必要があります。
口腔内の乾燥は唾液分泌の減少を示し、口腔内の自浄作用が低下しています。
排泄パターン
主観的データ(S情報)
トイレには何とか行けます
おしっこの回数は普通だと思います
便は2日に1回くらいです
客観的データ(O情報)
排尿回数:5〜6回/日
尿量:入院前不明、現在約1200mL/日(点滴含む)
排便:1回/2日、普通便
BUN 25mg/dL、Cre 0.9mg/dL(腎機能ほぼ正常)
トイレ歩行は見守り必要
尿失禁なし
アセスメントの要点
腎機能はほぼ正常範囲内であり、大きな問題はありません。
BUNがやや高値ですが、これは発熱と食事摂取量減少による脱水傾向を反映している可能性があります。
排尿回数・量ともに正常範囲であり、尿路系の問題は見られていません。
排便は2日に1回と頻度はやや少ないですが、普通便であり便秘とは言えません。
ただし、入院後の活動量低下により便秘になるリスクがあります。
トイレ歩行には見守りが必要であり、転倒リスクに注意が必要です。
活動-運動パターン
主観的データ(S情報)
息が苦しくて動けません
少し動くと咳が出ます
いつもは杖で歩いているのですが
左手が思うように動きません
客観的データ(O情報)
入院前:杖歩行可能、ADL一部介助
脳梗塞後遺症:左上下肢不全麻痺あり
現在:安静度ベッド上安静
呼吸数26回/分、労作時に増加
SpO2:安静時95%(酸素3L/分)→体動時90%に低下
体温38.5℃、発熱による倦怠感あり
湿性咳嗽、黄色粘稠痰を喀出
食事・清潔・排泄:全介助〜一部介助
アセスメントの要点
肺炎による呼吸機能障害のため、活動耐性が著しく低下しています。
わずかな体動でも呼吸困難感が増強し、SpO2が低下することから、酸素化が不十分です。
発熱と炎症により全身の代謝が亢進し、酸素需要が増加しています。
左片麻痺により元々ADLに制限がありましたが、肺炎により更に低下しています。
現在はベッド上安静が必要ですが、長期化すると廃用症候群のリスクが高まります。
咳嗽により喀痰を喀出していますが、これも体力を消耗させる要因です。
症状改善後は、早期に離床とリハビリテーションを開始する必要があります。
睡眠-休息パターン
主観的データ(S情報)
夜は咳が出て眠れません
息が苦しくて目が覚めます
昼間もウトウトしています
客観的データ(O情報)
入院前:22時就寝、6時起床の生活
夜間:咳嗽により頻回に覚醒
呼吸困難感により熟睡できず
日中の傾眠あり
睡眠薬使用なし
アセスメントの要点
咳嗽と呼吸困難感により夜間の睡眠が妨げられています。
睡眠が断続的になることで、十分な休息が得られていません。
睡眠不足は免疫力を低下させ、回復を遅らせる要因となります。
日中の傾眠は夜間の睡眠不足を示唆しています。
肺炎の症状改善に伴い、咳嗽と呼吸困難感が軽減すれば、睡眠の質も向上すると期待されます。
認知-知覚パターン
主観的データ(S情報)
頭ははっきりしています
胸が苦しいのがつらいです
咳が止まらなくて疲れます
特に痛みはありません
客観的データ(O情報)
意識レベル:清明だが反応やや遅い
見当識良好
理解力・判断力保たれている
脳梗塞後遺症により軽度の構音障害あり
視力・聴力に大きな問題なし
呼吸困難感あり、湿性咳嗽持続
疼痛なし
アセスメントの要点
意識レベルは清明ですが、発熱と呼吸困難により反応がやや遅くなっています。
認知機能は保たれており、自分の状況を理解できています。
構音障害がありますが、コミュニケーションは可能です。
呼吸困難感と咳嗽が最も苦痛な症状であり、これが軽減されることがQOL向上につながります。
疼痛はなく、不快症状は主に呼吸器症状です。
自己知覚-自己概念パターン
主観的データ(S情報)
また肺炎になってしまいました
妻に迷惑をかけて申し訳ないです
早く良くなりたいです
自分でできることは自分でやりたいです
客観的データ(O情報)
誤嚥性肺炎の再発に対する落胆あり
家族への負担を気にする発言あり
回復への意欲表出
現在ADLのほとんどに介助が必要
表情はやや暗い
アセスメントの要点
E氏は誤嚥性肺炎の再発に落胆を感じています。
妻への負担を気にする発言から、他者への配慮と自立への思いが伺えます。
早く回復したいという意欲はありますが、繰り返す入院により自己効力感が低下している可能性があります。
自分でできることは自分でやりたいという思いと、現在の介助が必要な状況との間にギャップがあります。
症状の改善とともに、段階的なADL拡大により成功体験を積むことが重要です。
役割-関係パターン
主観的データ(S情報)
妻にはいつも世話になっています
長女も心配してくれています
早く家に帰りたいです
妻の負担を減らしたいです
客観的データ(O情報)
妻(73歳)と二人暮らし
長女は隣県在住、時々訪問
妻が主な介護者(食事、服薬管理など)
訪問看護週1回、デイサービス週2回利用
妻は毎日面会に来ている
経済的には年金で生活、大きな問題なし
アセスメントの要点
E氏は妻との良好な関係を築いており、妻が主な介護者です。
妻も73歳と高齢であり、介護負担が大きくなっています。
長女は遠方に住んでおり、日常的なサポートは困難です。
訪問看護とデイサービスを利用していますが、今後更なる支援が必要になる可能性があります。
妻の介護負担を軽減するため、社会資源の活用を検討する必要があります。
セクシュアリティ-生殖パターン
主観的データ(S情報)
特記すべき訴えなし
客観的データ(O情報)
76歳男性
特記すべき問題なし
アセスメントの要点
セクシュアリティに関する特別な問題は見られていません。
現時点で看護問題はありません。
コーピング-ストレス耐性パターン
主観的データ(S情報)
息が苦しいのがつらいです
また入院になって情けないです
でも、良くなるために頑張ります
妻が支えてくれるから大丈夫です
客観的データ(O情報)
呼吸困難感に対する苦痛表出
再発に対する自責的な発言あり
前向きな発言もあり
妻への信頼を表現
入院前の楽しみ:デイサービスでの交流、テレビ鑑賞
アセスメントの要点
E氏は呼吸困難感と咳嗽により強いストレスを感じています。
誤嚥性肺炎の再発に対して自責的な思いを抱いています。
妻への信頼を示しており、これは心理的な支えとなっています。
前向きな発言もあり、ストレスに対する適応力はある程度保たれています。
症状の改善に伴い、ストレスも軽減すると期待されます。
価値-信念パターン
主観的データ(S情報)
妻と一緒に暮らせることが一番です
自分のことは自分でできるようになりたいです
妻に迷惑をかけたくないです
デイサービスに行くのが楽しみです
客観的データ(O情報)
妻との生活を重視
自立を大切にする価値観
他者への配慮を示す
社会的交流を大切にしている
回復への意欲あり
アセスメントの要点
E氏は妻との生活を最も大切にしており、これが回復への動機づけとなっています。
自立を重視する価値観があり、できるだけ自分のことは自分でやりたいという思いが強いです。
デイサービスでの社会的交流も大切にしており、これも生活の質を支える要素です。
これらの価値観を尊重しながら、現実的な目標設定と支援が重要です。
看護問題の優先順位と看護計画の立案
ゴードンの11パターンでアセスメントを行った結果、以下の看護問題が抽出されます。
優先度の高い看護問題
肺炎に関連したガス交換障害
嚥下障害に関連した誤嚥リスク状態
低栄養状態に関連した感染リスク状態
看護目標の例
入院1週間以内に、安静時の呼吸困難感が軽減し、SpO2が96%以上を維持できる
退院時までに、誤嚥を予防する食事方法を理解し実践できる
入院2週間以内に、栄養状態が改善し、体重が普段の体重に近づく
看護計画(OP・TP・EP)の例
OP:呼吸状態、SpO2、呼吸数、体温、咳嗽の有無、喀痰の性状と量、呼吸音、血圧、脈拍、炎症反応、栄養状態、食事摂取量、嚥下状態の観察
TP:酸素療法の実施、安楽な体位の工夫、喀痰喀出の援助、口腔ケアの実施、嚥下機能に応じた食事形態の調整、栄養補給の支援
EP:誤嚥予防の食事方法について説明、咳嗽時の対処方法の説明、口腔ケアの重要性の説明、症状悪化時の早期受診の必要性の説明、妻を含めた退院指導の実施
まとめ|肺炎看護過程のポイント
肺炎患者の看護過程をゴードンで展開する際は、呼吸状態と感染徴候を中心に、栄養状態、嚥下機能、活動耐性を総合的にアセスメントすることが重要です。
本事例のE氏のように、嚥下障害による誤嚥性肺炎を繰り返す患者では、急性期の治療だけでなく、退院後の再発予防に向けた指導と家族支援が不可欠です。
看護学生の皆さんは、このような架空事例を参考にしながら、実際の患者さんの個別性を大切にした看護過程を展開してください。
肺炎看護は急性期の症状管理から慢性期の再発予防まで継続的な視点が必要であり、患者さんと家族が安心して生活できる支援体制の構築が成功の鍵となります。








