脳梗塞患者のアセスメント作成に悩んでいる看護学生の皆さん、こんにちは。
看護実習における脳梗塞患者のアセスメントは、急性期の再発リスク管理、後遺症による日常生活への影響、退院後の生活調整、家族の介護負担など、多面的な視点が求められるため、多くの学生が難しく感じています。
本記事では、左片麻痺と構音障害を呈する76歳男性患者の架空事例を用いて、ゴードンの機能的健康パターン別にアセスメントのポイントと看護問題の導き方を具体的に解説します。
この記事を読むことで、脳梗塞患者の全体像を捉えたアセスメントが作成でき、実習記録や関連図作成の参考になるはずです。
事例紹介|左片麻痺を呈する76歳男性の脳梗塞患者
患者プロフィール
F氏、76歳男性、元会社員
診断名:脳梗塞
既往歴:高血圧症、脂質異常症
家族構成:75歳の妻と二人暮らし
身体データ
身長170cm、体重78kg、BMI 26.99(軽度肥満)
バイタルサイン:体温36.7℃、脈拍90回/分、呼吸18回/分、血圧140/86mmHg
神経学的所見
左半身の麻痺(MMT:左上肢2/5、左下肢3/5)
構音障害あり
検査データ(6月25日)
総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.2g/dL(低栄養)
AST 50IU/L、ALT 82IU/L、GTP 100IU/L、ALP 301IU/L(肝機能異常)
LDL-C 149mg/dL、総コレステロール270mg/dL、中性脂肪250mg/dL(脂質異常)
空腹時血糖125mg/dL、HbA1c 7.0%(糖尿病予備軍)
BUN 19mg/dL、Cr 1.1mg/dL(正常範囲)
赤血球数432×10⁴/μL、Hb 13.2g/dL(正常範囲)
入院までの経過
高血圧症でノルバスク5mg、脂質異常症でリポバス5mgを内服していたが、時々内服を忘れることがあった
飲酒:毎日500mL缶ビール1缶を夕食時に飲むことが楽しみ
つまみは塩辛いものを好んでいた
度々食事指導をされていたが、塩分摂取にはあまり注意していなかった
現在の状況(入院5日目、6月27日)
6月24日から処方:ノルバスク5mg、バイアスピリン100mg、リポバス5mg、レンドルミン(就寝前)
6月25日からベッドサイドでのリハビリテーション開始
食事:全粥・きざみ(とろみつき)1600kcal、塩分6g/日
食事中に一度むせたことがあり、時間をかけて全量摂取
水分:毎食時に病院のお茶200mL、促さないと飲まない
車いす乗車し、セッティングすれば何とか食べられる
立位時にふらつきがみられ、車いす乗車時は介助が必要
排泄:尿意はあるが、トイレまで間に合わず失禁、日中はリハビリパンツと尿パッド、夜間はおむつ
ズボンの上げ下ろしは全介助、トイレ時の後始末は全介助
排尿1日6回、夜間1回
便秘傾向(3日間排便なし、プルゼニド2錠内服で排便あり)
清潔:右手で前側の上半身と大腿部を拭き、トイレの時に看護師が陰部洗浄
口腔内の清潔:朝と夕方は看護師が口腔ケア、昼は自力で実施
聴力:年齢相応の難聴あり、聞き返すことがある、補聴器使用
発語が不明瞭な時があるが、ゆっくり話してもらうと聞き取れる
就寝前に睡眠導入剤を内服、夜間尿意で目が覚めることもある
7:00起床、21:00就寝
社会的背景
60歳で定年後は、釣りや囲碁をして過ごす
人付き合いは良く、近所の人から慕われ、町内会の副会長を務めている
後期高齢者医療保険(介護申請はしていない)
家族の状況
妻75歳、高血圧症と喘息の持病あり
自宅での介護について「本人は自宅で過ごしたいようなんですけど、私も年なので面倒を見られるかどうか…」
子供は二人おり、長男は東北に単身赴任中(家族は県内に住んでいるがあまり交流なし)、次男は近畿地方に家族と住んでいる
患者の発言
ずっと薬を飲んでいるから大丈夫なんですよ
なんでこんなになっちゃったんだろう、リハビリをやって早く動けるようになりたい、でも退院してもビールはやめられないかもしれないなあ
ビール飲まないと眠れない
トイレくらいは人の世話になりたくない
入院前は毎日入浴し身だしなみには気を付けていた
医師からの説明
水分も大事なので、500mLのペットボトルなら、1日に3本飲むようにしましょう
ゴードンの機能的健康パターン別アセスメント
1. 健康知覚・健康管理パターン
主観的データ(S情報)
ずっと薬を飲んでいるから大丈夫なんですよ
なんでこんなになっちゃったんだろう、リハビリをやって早く動けるようになりたい、でも退院してもビールはやめられないかもしれないなあ
ビール飲まないと眠れない
トイレくらいは人の世話になりたくない
客観的データ(O情報)
76歳男性、身長170cm、体重78kg、BMI 26.99
脳梗塞、左半身の麻痺
高血圧症でノルバスク5mg、脂質異常症でリポバス5mgを内服していたが、時々内服を忘れることがあった
飲酒:毎日500mL缶ビール1缶を夕食時、つまみは塩辛いものを好む
度々食事指導をされていたが、塩分摂取にはあまり注意していなかった
水分は毎食時に病院のお茶200mL飲んでいるが促さないと飲まない
妻75歳と二人暮らし
妻は高血圧症と喘息の持病あり、自宅での介護について不安を表明
長男は東北に単身赴任中、次男は近畿地方に家族と住んでいる
医師:水分も大事なので、500mLのペットボトルなら1日に3本飲むようにしましょう
排泄:ズボンの上げ下ろしは全介助
トイレ時の後始末:全介助
アセスメントの要点
【脳梗塞の発症要因】
脳梗塞とは、脳の一部に血液供給が一時的にあるいは永久的に減少あるいは消失することにより、神経細胞の不可逆的変化をきたした状態です。
原因は年齢・性別や高血圧、肥満、飲酒喫煙など様々です。
症状としては片麻痺、感覚障害、構音障害、失語など、梗塞部位に依存した症状が出現します。
F氏は既往に高血圧・脂質異常症があり、軽度の肥満であること、男性であることなどから、脳梗塞を発症しやすい素因があったと考えられます。
【健康管理の不適切さ】
もともと高血圧や脂質異常症があり、度々食事指導をされていたが、塩分摂取にはあまり注意していませんでした。
毎日飲酒もしていたことから、治療の必要性を理解できていなかったことが伺えます。
「ずっと薬を飲んでいるから大丈夫なんですよ」という発言より、薬を飲めば食事制限をしなくてもいいという考えがあり、食生活の乱れを引き起こしていた原因となっています。
「退院してもビールはやめられないかもしれないなあ」「ビール飲まないと眠れない」という発言から、退院後も禁酒できない可能性は高い状況です。
退院後もこのような状況が続けば再発するリスクがあります。
現時点でどこまで回復するか予測できませんが、麻痺や構音障害などの後遺症によりF氏自身の健康管理能力では治療の継続と生活習慣の改善を期待できない可能性があります。
そのため、F氏だけでなく家族を含めた再発予防の指導が必要であると考えられます。
【家族のサポート体制】
同居の妻は高齢で持病があり、発言からも退院後にF氏の健康管理があまり期待できません。
遠方に住んでいる息子とも調整を図り、F氏の退院後の生活支援の充実を図る必要があります。
【服薬アドヒアランス】
服薬を忘れることがあり、服薬アドヒアランス不良があり、高血圧や脂質異常症の増悪因子となっていた可能性があります。
【水分摂取不足】
F氏は76歳と高齢です。
加齢とともに喉の渇きを感じる口渇中枢が減退します。
そのため、実際には水分が必要な状態であっても喉の渇きが感じにくくなります。
F氏は入院後、医師からの説明があったにもかかわらず、水分摂取に積極的ではない様子があります。
体液量が減少することで、血栓ができやすくなり、再梗塞のリスクがあります。
【転倒転落リスク】
F氏は片麻痺となっており、日常生活に介助が必要な状況です。
しかし、初めての脳梗塞であり、まだ自己の身体管理に慣れていないと考えられます。
その上で、「トイレくらいは人の世話になりたくない」という発言から、単独行動を行う危険性があります。
また、夜間にトイレ覚醒もあり、不注意による転倒転落のリスクは高いといえます。
行動するときはナースコールでスタッフを呼ぶよう指導したり、適宜観察が必要な状況です。
看護問題
疾患の知識不足に関連した非効果的健康管理
安静度の拡大に伴う脳梗塞再発のリスク
2. 栄養・代謝パターン
主観的データ(S情報)
なんでこんなになっちゃったんだろう、リハビリをやって早く動けるようになりたい、でも退院してもビールはやめられないかもしれないなあ
ビール飲まないと眠れない
客観的データ(O情報)
76歳男性、脳梗塞、左半身の麻痺と構音障害あり
既往歴:高血圧、脂質異常症
飲酒:毎日500mL缶ビール1缶を夕食時、つまみは塩辛いものを好む
度々食事指導をされていたが、塩分摂取にはあまり注意していなかった
食事が開始され、車いす乗車しセッティングすれば何とか食べられる
利き手は右手
一度食事中にむせたことがあったため、全粥・きざみ(とろみつき)1600kcal、塩分6g/日の食事を時間をかけて全量食べている
水分は毎食時に病院のお茶200mL飲んでいるが促さないと飲まない
バイタルサイン:体温36.7℃、脈拍90回/分、呼吸18回/分、血圧140/86mmHg
身長170cm、体重78kg、BMI 26.99
血液データ:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.2g/dL、AST 50IU/L、ALT 82IU/L、GTP 100IU/L、ALP 301IU/L、LDL-C 149mg/dL、総コレステロール270mg/dL、中性脂肪250mg/dL、空腹時血糖125mg/dL、HbA1c 7.0%
医師:水分も大事なので、500mLのペットボトルなら1日に3本飲むようにしましょう
食欲:あり
アセスメントの要点
【嚥下機能の低下】
脳梗塞後、片麻痺の影響で食事中にムセがあり、嚥下機能が低下しています。
また、加齢による咀嚼筋の低下や認知機能の低下によっても嚥下機能は障害されていると考えられます。
その結果としてF氏はトロミ使用となっています。
嚥下機能低下による誤嚥を予防するためにも、少量ずつ嚥下させるようにし、口腔内に食物が残っていないことを確認してから次の一口にすすんでもらう必要があります。
【残存機能の活用】
麻痺は左側であり利き手である右手は使用できます。
セッティングすれば食事摂取できることから、残存機能を活かすためにも自分でできることはしてもらう必要があります。
【肥満と生活習慣病】
BMI 26.99で軽度の肥満です。
既往歴に高血圧、脂質異常症があり、空腹時血糖125mg/dL、HbA1c 7.0%であることから、糖尿病予備軍であり、過剰なエネルギー摂取や塩分過多など食生活の乱れによるものであると考えられます。
【低栄養と肝機能異常】
総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.2g/dLであり、低栄養に傾いています。
これは入院前の食生活で、ビールや塩辛いものによって空腹感が満たされ、必要な栄養摂取ができていなかったためであると考えられます。
肝機能を示すデータが異常値を示しており、アルコールの過剰摂取によるものと考えられます。
慢性化することで肝硬変などを発症するおそれがあります。
食欲はあるため、今後病院食の摂取によって栄養は改善されると予測されます。
ただし、発言より、自分の置かれている状況に危機感が不足していることから、禁酒の必要性を理解できていないため、退院後を見据えた食生活の指導は家族も交えて行う必要があります。
【水分摂取不足】
医師に水分を摂取するよう説明を受けているが、守れていません。
しかし、現在も血圧140/86mmHgと高値のため、再梗塞のリスクは高い状況です。
よって、脳梗塞再発の防止のために水分摂取が必要であることの意識の有無を確認するとともに、現在の飲水量を維持することを伝え、水分摂取を勧める必要性があります。
看護問題
脳梗塞後遺症と加齢による嚥下機能の低下に関連した誤嚥リスク
3〜11. その他のパターン(要点のみ)
3. 排泄パターン
機能性尿失禁(尿意はあるがトイレまで間に合わず)
便秘傾向(活動量低下、水分摂取不足)
努責による血圧上昇リスク
**看護問題:**排泄に関する個別的支援が必要
4. 活動・運動パターン
左片麻痺(MMT:左上肢2/5、左下肢3/5)
ADL全般に介助が必要
リハビリに対して前向き
廃用症候群のリスク
構音障害によるコミュニケーション能力の低下
**看護問題:**片麻痺、摂食・嚥下障害に伴うセルフケア不足、左片麻痺と危険に対する判断力の低下に関連した転倒転落リスク状態
5. 睡眠休息パターン
睡眠導入剤内服、7:00起床、21:00就寝
夜間尿意で目が覚めることもある
熟睡度の確認が必要
**看護問題:**なし(経過観察)
6. 認知・知覚パターン
服薬忘れあり(加齢による認知機能低下の可能性)
疾患への知識不足
身体バランスの保持が難しい(患側身体失認、患側空間失認の可能性)
構音障害によるコミュニケーション困難
**看護問題:**疾患の知識不足に関連した非効果的健康管理、転倒転落リスク
7. 自己知覚・自己概念パターン
病気になった自分を受け入れられていない可能性
町内会の副会長という役割を失う可能性
自尊感情の低下につながる可能性
**看護問題:**ボディイメージの混乱、自尊感情低下のリスク
8. 役割・関係パターン
町内会の副会長を務めていたが継続困難の可能性
妻は高齢で持病があり、自宅介護に不安
息子2人は遠方に在住
介護保険未申請
**看護問題:**妻が高齢であり、高血圧、喘息の持病があることに関連した介護者役割関係緊張リスク状態
9. 性・生殖パターン
息子2人あり、生殖能力に問題なし
**看護問題:**なし
10. コーピング・ストレス耐性パターン
入院前は飲酒、釣り、囲碁でストレス発散
入院によりそれができずストレスとなっている可能性
身体機能回復への不安
**看護問題:**非効果的コーピング
11. 価値・信念パターン
情報なし
今後のコミュニケーションを通して把握する必要がある
**看護問題:**なし
看護の焦点と優先順位
看護問題の優先順位
優先順位第1位:安静度の拡大に伴う脳梗塞再発のリスク
優先順位第2位:脳梗塞後遺症と加齢による嚥下機能の低下に関連した誤嚥リスク
優先順位第3位:左片麻痺と危険に対する判断力の低下に関連した転倒転落リスク状態
優先順位第4位:片麻痺、摂食・嚥下障害に伴うセルフケア不足
優先順位第5位:疾患の知識不足に関連した非効果的健康管理
優先順位第6位:妻が高齢であり、高血圧、喘息の持病があることに関連した介護者役割関係緊張リスク状態
優先順位決定の根拠
F氏は現在発症5日目であり、血圧自動調節能が十分に機能していないことが考えられます。
このため、安静度の拡大による血圧変動で脳虚血を生じ、脳梗塞の進行や再発を引き起こす危険性があります。
また、F氏の既往歴は高血圧や脂質異常症であり、入院前は毎日飲酒をしており、塩分摂取にはあまり注意していませんでした。
加えて入院後も医師の指示通りに水分摂取ができていません。
そのため、血管の狭窄・閉塞を再度起こすリスクは高い状況です。
今後、安静度の拡大に伴う循環状態の変化は、再梗塞や脳出血のリスクにもつながり、生命の危険に関わるため、優先順位1位としました。
まとめ|脳梗塞患者アセスメントのポイント
脳梗塞患者のアセスメントでは、急性期の再発リスク管理、後遺症による日常生活への影響、退院後の生活調整、家族の介護負担を多面的に評価することが重要です。
本事例のF氏のように、生活習慣の改善が不十分で再発リスクが高い患者には、疾患理解の促進、家族を含めた生活指導、社会資源の活用が不可欠です。
看護学生の皆さんは、このような架空事例を参考にしながら、実際の患者さんの個別性を大切にしたアセスメントを展開してください。
脳梗塞看護は、急性期の生命維持から回復期のリハビリテーション、退院後の再発予防まで継続的な視点が必要であり、患者とその家族が安心して生活できるよう支援することが看護の重要な役割となります。








