研究で分かっている「詰まる理由」と対処法
看護過程のアセスメントが進まない。
電子カルテを見ても、情報が多すぎて何を書けばいいのか分からない。
教科書どおりにやっているはずなのに、なぜか評価が低い。
もし、こんな状態に心当たりがあるなら、まず伝えたいことがあります。
それは、あなただけではありません。
実は書けない理由は研究ではっきりしています
2023年に発表された看護教育に関する研究では、初めて患者を受け持つ看護学生が、看護過程のどこで・なぜ困っているのかが詳しく調べられました。
対象は、実習を経験した看護系大学3年生です。
その結果、ほぼ全員が同じところでつまずいていたことが明らかになっています。
これは順天堂大学医療看護学部の研究チームによる調査で、10名の看護学生に半構造化面接を実施し、質的に分析したものです。
看護学生がアセスメントで詰まる主な理由
研究で明らかになった内容を、できるだけ分かりやすく整理します。
情報が多すぎて、整理できない
電子カルテには大量のデータがあります。
検査値、経過、看護記録、医師の記載など膨大な情報が並んでいます。
学生はどれが大事で、どれを書かなくていいのか分からない状態に陥りやすいことが分かっています。
研究では、電子カルテの操作方法が分からず、どこに何が書いてあるかも分からず苦戦している様子が報告されています。
さらに、必要なデータを自分で取りに行くことの難しさも指摘されていました。
観察しているのに意味づけができない
バイタルを測る、表情を見る、動作を確認する。
しかし、それが何を示しているのか、どの看護問題につながるのか、ここが分からず、ただの事実の羅列になってしまいます。
研究では、観察したことが何を示すかわからないという声が多く聞かれました。
授業で扱った項目をとりあえず観察してみるという対処法を取る学生もいましたが、根本的な理解には至っていないケースが目立ちました。
教科書どおりに当てはめられない
教科書は典型例です。
実際の患者さんは、生活背景も性格も全く違います。
研究では、ヘンダーソンの看護理論を用いた看護過程では、教科書の書き方を患者さんにそのまま当てはめることの難しさに多くの学生が悩んでいることが示されています。
疾患を持つ患者の一般的なアセスメントを、受け持ち患者に適応させ、比較し、修正していく必要性があるのですが、この過程に苦戦していました。
本当の看護問題にたどり着けない
症状だけに注目してしまい、なぜその症状が出ているのか、その一段階前にある問題は何か、ここまで考えきれず、先生から指摘されて初めて気づくケースも多くありました。
研究では、患者の症状にとらわれて、本当の問題は何なのか苦戦するという声が報告されています。
書かれている症状や患者さんが言っている症状にとらわれてしまい、関連が出たときに教員から指摘されて気づくパターンが典型的でした。
とにかく時間が足りない
実習では、考える時間より動く時間が優先されがちです。
研究でも、圧倒的な時間不足が思考を浅くしていることがはっきり指摘されています。
電子カルテをチームのメンバーと交互に見なくてはならない焦り、患者のもとに行く時間がないという切実な声が聞かれました。
スケジュールと時間の優先順位を組み立てながら、電子カルテを見る時間を取って、観察項目を確認する、この複雑な作業が学生の頭の中で混乱を招いていました。
重要なポイント:学生はできていないのではない
ここが、この研究の一番大事なところです。
研究では、看護学生はすでに入院前と現在を比べる、今後起こりそうなリスクを考えるといった、臨床推論の一部は考えられていることも示されています。
ニューカッスル大学の臨床推論のサイクルと比較すると、看護学生は解釈する、照合する、予測するという3つのプロセスを思考できていたと判断されています。
つまり、能力がない、センスがないのではありません。
考え方の順番や整理の仕方を体系的に教わっていないだけなのです。
じゃあ、どうすればいいのか
研究の結論はシンプルです。
アセスメントは才能ではありません。
正しい思考の型を知れば、誰でも伸びます。
ただし、現実問題として、時間が足りない、一人で考えると迷走する、正解かどうか分からず不安になる、こうした状況にある学生が多いのも事実です。
研究では、時間をおいて気づきが得られることや、後から意識する経験の積み重ねの意味を実感することが報告されています。
つまり、すぐに完璧にできなくても、振り返りと修正を繰り返すことで力がついていくのです。
完成形を見ることは、逃げではありません
研究内容を踏まえると、最初から正しい形を知ることは、思考を学ぶ近道だといえます。
どんな情報を使っているのか、どう整理しているのか、どう看護問題につなげているのか、完成した看護過程を見ることで、頭の中の整理の仕方が分かるようになります。
研究でも、標準的なアセスメントを作って、その患者に合わせて随時修正するというアプローチの有効性が示唆されています。
困ったときは、一人で抱え込まなくていい
アセスメントでつまずくのは、あなたの努力不足ではありません。
研究でも、多くの看護学生が同じところで苦しんでいることははっきりしています。
10名の学生全員が、何らかの形でアセスメントに困難を感じていたという事実は重要です。
どうしても進まないときは、誰かに相談する、考え方を一緒に整理してもらう、形を整えるサポートを受ける、そういった選択肢があっても、何もおかしくありません。
看護過程の学び方は進化している
この研究では、臨床推論の視点を教育することで、看護学生の臨床推論力が育成される可能性があると示唆されています。
従来の看護過程の教育では十分に説明できていなかった、データを分析・解釈する視点を明確にすることで、より容易に患者を理解できるようになると考えられています。
実際、研究参加者の中には、病態理解から看護師としてできること、見るべきことは共通していると気づいた学生もいました。
まとめ
看護過程のアセスメントで詰まるのは普通のことです。
原因は能力ではなく思考の型不足にあります。
研究でも同じ悩みが確認されています。
正しい考え方を知れば、必ず前に進めます。
実習や課題で苦しくなったとき、自分だけじゃないと知ることが、最初の一歩になります。
そして、困ったときは適切なサポートを受けることも、看護師として成長するための大切なスキルの一つなのです。








