脳梗塞患者の看護過程。
成人看護実習で最も多く受け持つ疾患の一つです。
しかし、脳梗塞は情報量が膨大で、どこから手をつければいいかわからなくなります。
運動麻痺、感覚障害、高次脳機能障害、ADLの低下、心理的問題。
これらすべてをアセスメントし、看護問題を導き出し、計画を立てる。
考えるだけで圧倒されてしまう看護学生は少なくありません。
この記事では、脳梗塞患者の看護過程を、ゴードンとヘンダーソンの2つの視点から具体的に解説します。
実習で使える型を理解し、他の疾患にも応用できる力を身につけましょう。
脳梗塞の病態と看護の視点
まず、脳梗塞の基本的な病態を整理します。
脳梗塞は、脳血管が詰まることで脳組織が壊死する疾患です。
壊死した部位によって、運動麻痺、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などが生じます。
看護の視点で重要なのは、これらの障害が患者の生活にどう影響するかです。
麻痺があれば移動が制限され、転倒リスクが高まります。
感覚障害があれば、熱さや痛みに気づかず、褥瘡や熱傷のリスクが高まります。
言語障害があれば、意思疎通が困難になり、不安やストレスが増大します。
高次脳機能障害があれば、判断力や記憶力が低下し、日常生活に支障が出ます。
看護過程では、これらの障害が患者の生活機能にどう影響しているかを評価します。
ゴードンの11項目で脳梗塞患者を評価する
ゴードンの11の機能的健康パターンで、脳梗塞患者をどう評価するか解説します。
健康知覚・健康管理パターン
脳梗塞患者は、自分の病気をどう認識しているかが重要です。
麻痺や障害を受け入れられず、現実を否認する患者もいます。
リハビリに対する意欲、服薬管理の能力、再発予防への関心などを評価します。
病識の有無は、今後の看護計画に大きく影響します。
栄養・代謝パターン
嚥下障害の有無が最も重要です。
脳梗塞により嚥下機能が低下すると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
食事摂取量、体重変化、水分摂取量、皮膚の状態なども評価します。
麻痺側の口角から食物がこぼれる、むせが見られる、などの観察が重要です。
排泄パターン
脳梗塞により、排泄のコントロールが困難になることがあります。
尿失禁、便失禁の有無、トイレまでの移動能力、トイレ動作の自立度を評価します。
排泄の問題は、患者の自尊心に大きく影響するため、配慮が必要です。
活動・運動パターン
脳梗塞患者の看護で最も重要な項目の一つです。
麻痺の部位と程度、ADLの自立度、移動能力、転倒リスクを詳しく評価します。
片麻痺がある場合、健側をどう活用するか、リハビリへの参加状況なども重要です。
睡眠・休息パターン
脳梗塞後は、睡眠障害を訴える患者が多くいます。
不安、疼痛、環境の変化などが原因で、入眠困難や中途覚醒が生じます。
睡眠時間、睡眠の質、日中の眠気などを評価します。
認知・知覚パターン
高次脳機能障害の評価が中心です。
理解力、記憶力、判断力、見当識、注意力などを評価します。
また、感覚障害の有無、疼痛の有無も重要です。
認知機能の低下は、安全管理や意思決定に直結します。
自己知覚・自己概念パターン
脳梗塞により、患者の身体像や自己概念は大きく変化します。
麻痺した身体を受け入れられない、以前のように動けないことへの喪失感。
これらの心理的問題を評価し、支援する必要があります。
役割・関係パターン
脳梗塞により、家庭や職場での役割が変化します。
仕事を辞めざるを得ない、家族の世話ができなくなる、など。
家族関係の変化、社会的役割の喪失、孤立感などを評価します。
性・生殖パターン
脳梗塞後の性生活への不安を抱える患者もいます。
ただし、実習の場では情報を得にくい項目です。
情報がなければ、特記事項なしとして問題ありません。
コーピング・ストレス耐性パターン
脳梗塞は、患者に大きなストレスを与えます。
どのようにストレスに対処しているか、サポート体制はあるか、を評価します。
不適応なコーピングが見られる場合は、介入が必要です。
価値・信念パターン
患者の価値観や信念が、治療やリハビリにどう影響するかを評価します。
宗教的信念がある場合は、それを尊重した看護が必要です。
ヘンダーソンの14項目で脳梗塞患者を評価する
次に、ヘンダーソンの14の基本的ニードで、脳梗塞患者の未充足ニードを特定します。
正常に呼吸する
脳梗塞により、呼吸機能が低下することがあります。
嚥下障害による誤嚥性肺炎のリスクも考慮します。
適切に飲食する
嚥下障害の有無、食事摂取量、栄養状態を評価します。
脳梗塞患者で最も頻繁に未充足になるニードの一つです。
排泄する
排尿・排便のコントロール、トイレ動作の自立度を評価します。
失禁がある場合は、皮膚トラブルのリスクも考慮します。
体位を変換し、良肢位を保持する
麻痺があるため、自力での体位変換が困難になります。
褥瘡予防のための体位変換、良肢位保持が重要です。
睡眠と休息をとる
睡眠障害の有無、睡眠の質を評価します。
不安やストレスが睡眠を妨げている場合は、介入が必要です。
適当な衣類を選択し、着脱する
麻痺により、衣類の着脱が困難になります。
更衣動作の自立度、介助の必要性を評価します。
衣類の調節と環境の調整により、体温を正常範囲に維持する
感覚障害により、温度感覚が鈍くなることがあります。
適切な室温管理、衣類調整の能力を評価します。
身体を清潔に保ち、皮膚を保護する
麻痺により、清潔動作が困難になります。
入浴、洗面、整容の自立度を評価します。
環境の危険因子を避け、他者を傷害しない
脳梗塞患者で最も重要なニードの一つです。
転倒リスク、誤嚥リスク、褥瘡リスクなど、多くの危険因子があります。
麻痺による転倒リスクは特に高く、環境調整と見守りが必要です。
他者とのコミュニケーションをもち、情緒を表出する
言語障害がある場合、コミュニケーションが困難になります。
意思疎通の方法、感情表出の手段を評価します。
自分の信仰に従って礼拝する
患者の信仰や価値観を尊重した看護を提供します。
達成感をもたらすような仕事をする
脳梗塞により、仕事を継続できなくなることがあります。
役割の喪失感、新たな役割の模索を支援します。
遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する
リハビリへの参加、趣味活動の継続などを評価します。
生活の質を維持するために重要なニードです。
正常な発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる
リハビリへの意欲、新しい生活様式への適応を評価します。
脳梗塞患者の主な看護問題
ゴードンとヘンダーソンの評価から、脳梗塞患者に頻出する看護問題を整理します。
転倒リスク状態
麻痺による移動能力の低下、バランス障害により、転倒リスクが非常に高くなります。
脳梗塞患者で最も優先度の高い看護問題の一つです。
誤嚥リスク状態
嚥下障害により、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
食事中の観察、嚥下訓練、食事形態の調整が必要です。
セルフケア不足
ADLの低下により、食事、排泄、清潔、更衣などのセルフケアが困難になります。
適切な介助と、自立に向けた支援が必要です。
不安
突然の発症、身体機能の低下、将来への不安など、患者は多くの不安を抱えます。
傾聴、情報提供、精神的支援が重要です。
脳梗塞患者の看護計画の立て方
看護問題が明確になったら、具体的な看護計画を立てます。
転倒リスク状態への計画
観察項目として、歩行状態、バランス能力、めまいの有無、環境の安全性を挙げます。
援助項目として、ベッド柵の設置、ナースコールの配置、移動時の見守り、環境整備を挙げます。
教育項目として、転倒リスクの説明、ナースコールの使用方法の指導を挙げます。
誤嚥リスク状態への計画
観察項目として、嚥下状態、むせの有無、食事摂取状況、呼吸状態を挙げます。
援助項目として、食事形態の調整、嚥下訓練、食事中の見守り、口腔ケアを挙げます。
教育項目として、誤嚥予防の方法、食事姿勢の指導を挙げます。
セルフケア不足への計画
観察項目として、ADLの自立度、意欲、リハビリへの参加状況を挙げます。
援助項目として、必要な部分の介助、自助具の活用、リハビリスタッフとの連携を挙げます。
教育項目として、ADL向上のための方法、自助具の使い方を挙げます。
関連図の書き方
脳梗塞の関連図は、原因から結果への流れを明確にすることが重要です。
基本的な流れは次のようになります。
脳血管の閉塞により脳組織が壊死します。
脳組織の壊死により運動麻痺が生じます。
運動麻痺によりADLが低下します。
ADLの低下により転倒リスクが高まります。
この一本の流れを軸にして、関連図を作成します。
そこに、感覚障害、言語障害、高次脳機能障害などを追加していきます。
複雑にしすぎず、主要な問題に焦点を絞ることが重要です。
他の疾患への応用
脳梗塞の看護過程の型を理解すれば、他の疾患にも応用できます。
心不全なら、心機能低下による活動制限、呼吸困難、浮腫などが中心になります。
胃がんなら、栄養障害、疼痛、心理的問題などが中心になります。
糖尿病なら、血糖コントロール、合併症予防、生活習慣の改善などが中心になります。
疾患ごとに主要な問題は異なりますが、評価の枠組みは同じです。
ゴードンで生活全体を評価し、ヘンダーソンで未充足ニードを特定する。
この流れを身につければ、どの疾患でも対応できます。
よくある質問
全項目を書く必要がありますか
情報がない項目は、特記事項なしで問題ありません。
主要な問題に集中して、詳しく書くことが重要です。
他の疾患にも応用できますか
基本的な構造は同じです。
疾患ごとに主要な問題が変わるだけで、評価の枠組みは共通しています。
関連図はどれくらい複雑にすればいいですか
複雑にしすぎる必要はありません。
主要な問題の因果関係が明確であれば、シンプルな関連図で十分です。
まとめ
脳梗塞患者の看護過程は、ゴードンで生活全体を評価し、ヘンダーソンで未充足ニードを特定する。
この2つの視点を組み合わせることで、包括的なアセスメントができます。
疾患別看護過程は、型を持つことで一気に楽になります。
脳梗塞の型を理解すれば、心不全、胃がん、糖尿病など、他の疾患にも応用できます。
実習では、完璧を目指すより、基本的な流れを押さえることが重要です。
困ったときは、いつでもLINEでご相談ください。
あなたの学びをサポートします。








