うつ病患者の看護過程作成に悩んでいる看護学生の皆さん、こんにちは。
精神看護学におけるうつ病の看護過程は、自殺リスクの管理、抑うつ症状への対応、服薬管理、職場復帰支援、家族への支援など、多面的なアセスメントが求められるため、多くの学生が難しく感じるテーマです。
本記事では、うつ病で任意入院となった35歳男性患者の架空事例を用いて、ゴードンの機能的健康パターン別にアセスメントのポイントと看護問題の導き方を具体的に解説します。
この記事を読むことで、うつ病患者への看護の全体像が理解でき、実習記録作成の参考になるはずです。
事例紹介|うつ病で任意入院となった35歳男性
患者プロフィール
D氏、35歳男性、会社員(壮年期)
診断名:うつ病
既往歴:特記すべきことはなし(1ヶ月前よりうつ病にて服薬中)
性格:忍耐強くまじめで責任感が強い、ひとりで解決しようとする、人に気を使う
家族構成
妻(33歳)と子ども1人(3歳)の3人家族
生活:裕福とはいえないが多少の蓄えあり
職業・職歴
有名私立大学卒業後、大手電機メーカーに勤務
入社時から営業部に勤務
3ヶ月前:昇格とともに広報宣伝部に異動
発症の経緯
新しい部署の環境になじめず、昇格により時間に追われるようになった
集中力もなくなり仕事のミスが増えた
異動後から睡眠がとりにくくなり、疲れが蓄積
仕事のことを考えると不安になり、妻と心療内科クリニック受診
抗うつ薬と睡眠導入薬を処方される
1ヶ月前から休職
休職して1週間経過した朝、妻がD氏の多量服薬による自殺企図を発見
A病院の救急外来に搬送
医師から休息目的と内服薬調整のため、自殺企図をしないことを約束し、任意入院となる
入院時の状態
体温36.0℃、脈拍66回/分、血圧110/70mmHg、呼吸16回/分
心電図:異常なし
焦燥感が強く、ヒゲも伸び、髪の毛もボサボサ
身長175cm、体重58kg(入院前1ヶ月で5kg減少)
入院時体重60kg、BMI 19.59
現在の症状
抑うつ気分:絶望感が強い、消えてしまいたい気持ち
思考制止:集中力低下、新聞が読めない、会話についていけない
意欲低下:食欲不振、趣味の音楽鑑賞も楽しめない
罪業妄想:会社や家族に迷惑をかけている、役に立たない
貧困妄想:収入が途絶え家族が路頭に迷う、入院費が払えない
睡眠障害:3時前後の早朝覚醒、熟眠感なし、再入眠困難
清潔保持困難:1週間前から入浴していない、髭剃り・整容できていない
活動性低下:入院後自室ベッド上で過ごす、ほぼ動かず休んでいる
検査データ
TP 5.8g/dL、Alb 4.0g/dL(低栄養状態)
AST 20U/L、ALT 20U/L(正常範囲)
BUN 10mg/dL、Cr 0.8mg/dL(正常範囲)
治療内容
休息、薬物療法、認知行動療法
パロキセチン錠20mg 1錠 1回(夕食後)
ニトラゼパム錠10mg 1錠 1回(就寝前)
エチゾラム錠1mg 1錠 1回(就寝前)
頓用薬:不安時プロマゼパム錠5mg、便秘時プルセニド12mg、不眠時フルニトラゼパム錠2mg
ゴードンの機能的健康パターン別アセスメント
1. 健康知覚・健康管理パターン
主観的データ(S情報)
会社はよくなるまで病院で治療に専念するように言ってくれるが、自分が働かないと収入が途絶え、家族が路頭に迷ってしまう、入院費だって払えない、会社の人には迷惑をかけて申し訳ない、でも私は役に立たないから会社では用なしだ、戻れなくなるかもしれないし、どうしたらいいのか
うつ病という病名は聞いた事がありますが、精神的に弱い人がなるものだと思っていたので、こんな病気に自分がかかるとは思っていなかった
クリニックを受診してから薬を飲み続けていますがよくなった気がしないです
薬でよくなると先生から説明があったけど、本当によくなるのでしょうか、入院することも初めてで、お任せするしかないです、薬?管理はできていたつもりでした、薬は飲まないといけないんですよね
これまで大きな病気や失敗もなく人生を過ごしてきたので、どうして自分がこうなってしまったのかわからない
客観的データ(O情報)
35歳、壮年期、うつ病
既往歴:特記すべきことはなし
性格:忍耐強くまじめで責任感が強い、ひとりで解決しようとする、人に気を使う
3ヶ月前に昇格とともに広報宣伝部に異動
新しい部署の環境になじめず、時間に追われ集中力もなくなり仕事のミスが増えた
心療内科クリニック受診、抗うつ薬と睡眠導入薬処方
休職して1週間経過した朝、多量服薬による自殺企図
妻:生活は裕福とはいえないが多少の蓄えがあります
医師:入院してゆっくり休みましょう、眠れるようにお薬の調整をします、自殺はしないと約束してください
治療方針:休息、薬物療法、認知行動療法
アセスメントの要点
【健康知覚は適切か】
D氏は過去に大きな病気や怪我を経験しておらず、身体的には健康でした。
しかし、今回の昇進による環境の大きな変化と、それに伴うストレスの増大がうつ病の発症に影響しています。
これまでの健康認識では、ストレスが健康に及ぼす影響を十分に理解していませんでした。
現在の健康に関する認識について、D氏はうつ病に関する病識が不足しており、自己の状態を正しく認識できていません。
うつ病や治療についての知識不足と思考力・判断力の低下は、適切な健康管理行動を取ることを困難にし、症状の悪化や再発を引き起こす可能性があります。
妻の発言から、経済的な問題はそれほど深刻ではないと考えられますが、D氏は収入が途絶えることや入院費を心配しています。
これはD氏の物事の認識のし方、捉え方に問題があったり、うつ病特有の罪業妄想や貧困妄想によるものと考えられます。
【健康管理は適切か】
これまでの健康管理状況は、ストレスが健康に及ぼす影響を十分に理解していなかったため、適切ではありませんでした。
D氏が自分が家族や会社の人々に迷惑をかけていると責任を感じ、ひとりで問題を抱え込んでいることが見て取れます。
本人の忍耐強くまじめで責任感が強く、ひとりで解決しようとする性格がストレスの蓄積を招いている可能性があります。
現在も薬物治療の効果やその必要性に対する理解が不足しており、知識不足が考えられます。
抗うつ剤は、飲み始めてすぐに効果が実感できることは少なく、一般的には効果が出てくるまでに1〜2週間ほどはかかるといわれています。
服薬に関する知識不足は服薬拒否や飲み忘れにつながる可能性があります。
D氏は主治医からの説明で、休息目的と内服薬の調整のため自殺企図をしないことを約束し、任意入院となっています。
しかし、D氏がその約束を守ることができるかは不明であり、病状の回復につれて自殺リスクが高まることもあるため、安全対策についても留意する必要があります。
看護問題
疾患や薬物療法の知識不足に関連した非効果的健康自主管理
2. 栄養・代謝パターン
主観的データ(S情報)
眠れないし食欲がない
客観的データ(O情報)
うつ病
3ヶ月前に昇格とともに広報宣伝部に異動
食事:食事は不規則になりがち、3か月前から食欲不振が続いている、食事の好き嫌い・アレルギーは無い
体格:身長175cm、体重58kg(入院前1か月で5kg減少)、入院時体重60kg
血液データ:TP 5.8g/dL、Alb 4.0g/dL、AST 20U/L、ALT 20U/L
食事:常食、食欲なく進んで食事をとろうとしない、声掛けで摂取はしようとする
入院前:朝食は食べずに出勤、昼食はサンドイッチやおにぎり1つを公園で軽く食べていた様子、夕食は2〜3割程度摂取
入院後:自室ベッド上で過ごしている、ほぼ動かず休んでいる
処方薬剤あり
アセスメントの要点
【栄養摂取は適切か】
D氏は食事の好き嫌いは特にありませんが、3カ月前の職場の環境変化に伴ううつ症状の出現が食欲不振を引き起こしました。
朝食を省いたり、昼食を軽く済ませたりする生活が続いていました。
D氏の食事摂取量は、入院後も夕食が2〜3割程度と不足しています。
これは、うつ病の症状やそれに伴う活動性の低下に加え、薬物療法も影響していると考えられます。
処方されている向精神薬は副作用として悪心・嘔気、食欲不振などの消化器症状を引き起こす可能性があります。
また、肝機能障害が発生する可能性はありますが、D氏はAST 20U/L(正常値8〜33U/L)、ALT 20U/L(正常値4〜45U/L)と異常は見られていないため、問題ありません。
ただし、長期服用により肝機能が悪化すれば食欲低下につながるため注意が必要です。
水分摂取量に関する具体的な情報はありませんが、食事摂取量の減少に伴い水分摂取量も不足している可能性があります。
摂食・嚥下状態については、D氏は声掛けで食事摂取が可能であり、摂食・嚥下についての問題は特に見られません。
栄養状態については、体重は入院前の1か月で5kg減少しており BMI 18.94でしたが、普通体重です。
現在は体重60kgまで増えており、BMI 19.59と問題ありません。
一方、入院時の検査データではTP 5.8g/dL(正常値6.7〜8.3g/dL)、Alb 4.0g/dL(正常値3.8〜5.2g/dL)であることから、低栄養状態です。
このまま食欲不振が続けば低栄養が深刻化し、体力を消耗することでうつ病からの回復が遅れる可能性があります。
また、倦怠感や易感染のリスクが増大します。
看護問題
うつ症状、向精神薬の副作用、活動不足に関連した栄養バランス異常:必要量以下
3. 排泄パターン
主観的データ(S情報)
排便は以前より出にくくなっている気がする、お腹が気持ち悪い、張った感じはある
客観的データ(O情報)
3か月前から食欲不振が続いている
排尿は1日6〜7回
排便は2〜3日に1回あり、自分が気になる際は便秘時の頓用薬(プルゼニド1T)を服用し排便がある
食事:常食、食欲なく進んで食事をとろうとしない
入院前:朝食は食べずに出勤、昼食はサンドイッチやおにぎり1つ、夕食は2〜3割程度摂取
血液データ:BUN 10mg/dL、Cr 0.8mg/dL
プルセニド錠を自己管理で飲んでいたが、入院前の内服状況は不明
妻:飲んでいなかったかも
活動:入院後自室ベッド上で過ごしている、ほぼ動かず休んでいる
処方薬剤あり
アセスメントの要点
【便の排泄は適切か】
排便習慣については、D氏は元々便秘傾向であり、排便は2〜3日に1回の頻度でした。
便秘時には頓用薬(プルゼニド1T)を内服していましたが、入院前の内服状況は不明であり、妻も「飲んでいなかったかも」と発言していることから、下剤の内服ができていなかった可能性があります。
排便の状態については、現在は排便は以前より出にくくなっており、排便に違和感があると感じていることから便秘リスク状態にあることが考えられます。
便秘の原因の一つとして、薬剤の副作用によるものがあります。
処方されている薬剤は副交感神経の活動を抑制する抗コリン作用があるため、その影響によって腸管の蠕動運動が低下し、便がスムーズに輸送されずに便秘傾向となっている可能性があります。
また、抑うつ症状による活動量の減少も便秘の要因です。
このまま便秘が続けばイレウスに発展する恐れがあります。
【尿の排泄は適切か】
排尿習慣については、D氏の排尿回数は1日6〜7回であり、正常範囲内です。
また、検査データもBUN 10mg/dL(正常値8.0〜22.0mg/dL)、Cr 0.8mg/dL(正常値男0.6〜1.1mg/dL)と正常範囲内であることから腎機能には問題がないと考えられます。
しかし、D氏が服用している向精神病薬による抗コリン作用によって、排尿時の膀胱収縮作用が抑制されて排尿障害や尿閉になってしまうおそれがあります。
看護問題
食事摂取量の減少、薬剤の副作用、活動性低下および下剤の飲み忘れに関連した消化管運動機能障害リスク状態
4. 活動・運動パターン
主観的データ(S情報)
なし
客観的データ(O情報)
35歳男性、壮年期、うつ病
既往歴:特記すべきことはなし
職業:会社員、大手電機メーカーに勤務(広報宣伝部)
新しい部署の環境になじめず、昇格により時間に追われるようになった
活動:特に習慣にしている運動はないが、学生時代の部活はバレー部、休みの日は子供と一緒に公園で遊んだりして過ごしていた
清潔:発症前は毎日入浴していた、入院前1週間は入浴していない、髭剃り・整容もできていない、洋服は妻の促しで着替える程度で、言われなければ着替えない
D氏は焦燥感が強くヒゲも伸び、髪の毛もボサボサで妻が寄り添って診察を行った
入院時:体温36.0℃、脈拍66回/分、血圧110/70mmHg、呼吸16回/分
心電図:異常なし
活動:入院後自室ベッド上で過ごしている、ほぼ動かず休んでいる
清潔:1か月前より疲労を訴え入浴しない日が増え、1週間前から入浴していない、髭剃り・整容もできていない
処方薬剤あり
アセスメントの要点
【身体活動は適切か】
現在D氏は自室ベッド上で過ごしており、活動性が低下しています。
活動量が低下することで、運動不足となったり、睡眠パターンが混乱しやすいことが考えられます。
活動耐性については、D氏は大手電機メーカーに勤務しており、既往歴がなく身体機能に障害はありません。
心肺機能も呼吸数16回/分(成人正常値16〜18回/分)、血圧110/70mmHg(成人正常値110〜130/60〜80mmHg)、脈拍66回/分(成人正常値60〜100回/分)と全て正常範囲内であることから、問題なく維持されていると考えられます。
処方されている精神薬の副作用として循環器障害のリスクも考えられますが、バイタルサインから今のところ問題は見られていません。
運動習慣については、D氏は特に習慣にしている運動はありません。
運動不足は精神の安定やストレス耐性などの効果がある神経伝達物質であるセロトニンの分泌低下につながるため、不足することでうつ病、睡眠障害、意欲低下、慢性疲労など様々な症状につながるリスクがあります。
【日常生活活動(ADL)は自立しているか】
D氏は新しい部署の環境になじめず、うつ病を発症したことにより、意欲低下が見られます。
それによって、入浴しない日が増え、洋服の着替えや髭剃り、整容もできていません。
うつ病による意欲低下によってセルフケアがおろそかになっており、日常生活活動は自立していないと言えます。
このままでは、身だしなみの不潔感や臭気から他者との交流に支障をきたし、社会復帰が困難になるリスクがあります。
【余暇活動は適切か】
D氏は休みの日は子供と一緒に公園で遊んだりして過ごしていました。
しかし、現在は入院しているため、このような余暇活動は行うことができません。
気分転換の不足はストレスの蓄積や社会的孤立化につながる可能性があります。
看護問題
抑うつ症状による意欲低下に関連した(入浴・更衣)セルフケア不足
5. 睡眠・休息パターン
主観的データ(S情報)
この先のことを考えると不安でどうしたらよいかわからない
眠れないし食欲がない
これまでにミスしたことが頭に浮かんで眠れない、3時頃に目が覚めてしまう時もあって、もう一度寝ようと思ってもいろいろ考えてしまって、そのまま眠れない
以前は6時間程度睡眠をとるようにしていました、今は眠れない
会社はよくなるまで病院で治療に専念するように言ってくれるが、自分が働かないと収入が途絶え、家族が路頭に迷ってしまう、入院費だって払えない、会社の人には迷惑をかけて申し訳ない、でも私は役に立たないから会社では用なしだ、戻れなくなるかもしれないし、どうしたらいいのか
客観的データ(O情報)
うつ病
性格:忍耐強くまじめで責任感が強い、ひとりで解決しようとする、人に気を使う
睡眠:以前は6時起床であったが、現在は3時前後と早朝覚醒あり、熟眠感なくそのあと再入眠できる日とできない日がある
異動後から睡眠がとりにくくなり、疲れが蓄積していった
心療内科クリニック受診し、抗うつ薬と睡眠導入薬を処方
活動:入院後自室ベッド上で過ごしている、ほぼ動かず休んでいる
以前は6時起床であったが、現在は3時に早朝覚醒があり、熟眠感なし、きついと話す
処方薬剤あり
アセスメントの要点
【睡眠・休息・リラクゼーションは適切か】
D氏は以前は6時起床でしたが、うつ病の症状が出現して以来、3時前後の起床となり、早朝覚醒が見られるようになりました。
熟眠感の欠如と再入眠の困難さもあり、これらの症状から精神科クリニックを受診し、抗うつ薬と睡眠導入薬が処方されています。
睡眠障害の原因としては、D氏の忍耐強くまじめな性格、強い責任感、他人に気を使う傾向、問題を一人で解決しようとする傾向が影響していると考えます。
また、将来の不安や入院生活による現状の悲観的な捉え方が自己を責める思考を引き起こし、脳が休息を取ることができない状態になっています。
睡眠不足はうつ症状を悪化させ、回復の遅れにつながるリスクがあります。
休息・リラクゼーションについては、現在のD氏は発言から、職場復帰への不安や収入が途絶えることへの不安を感じており、十分にリラックスできる状態ではありません。
ただし、うつ病の症状である意欲低下によって、入院後は自室ベッド上で過ごし、ほぼ動かずに休んでいる状況です。
これは身体的には休んでいるが心理的には休めていおらず、さらに活動性の低下によって夜も身体的には疲れていない状態となるため、睡眠パターンが混乱しやすい状況であると考えられます。
看護問題
仕事上のストレス、将来への不安、悲観的な思考、それに伴う抑うつ状態に関連した不眠
6〜11. その他のパターン
6. 認知・知覚パターン
感覚機能には問題なし
うつ症状により判断力や学習能力が一時的に低下しているが、もともとの認知機能には問題なく、回復に合わせて改善されると考えられる
**看護問題:**機能的パターン
7. 自己知覚・自己概念パターン
昇格による新しい部署配属で、アイデンティティに影響
精神病は弱い人がなるものと思っていたため、自尊感情の著しい低下
将来への不安を強く感じ、現状に対して絶望感を抱いている
自殺企図の既往があり、現在も自殺リスクが続いている
**看護問題:**新たな職場環境への適応困難と自己評価の低下に関連した絶望感
8. 役割・関係パターン
昇格に伴う新しい職場環境への適応が困難、他者との関係構築が難しい
家庭の経済を支えることや子育てに参加することが困難、家庭内での役割達成に対するプレッシャーや罪悪感
昇格により職場での責任が増大しているが、その責任を果たせていない
仕事のミスの増加は職場での役割遂行能力に影響、自信の喪失につながっている
**看護問題:**抑うつ状態、自信喪失に関連した非効果的役割遂行
9. セクシュアリティ・生殖パターン
生殖機能に問題なし
抗うつ薬の使用による性機能障害のリスクは存在するが、現時点では問題なし
**看護問題:**機能的パターン
10. コーピング・ストレス耐性パターン
メランコリー親和型の性格でストレス耐性が低い
以前は音楽鑑賞が気分転換になっていたが、現在は楽しめない
誰にも相談せず一人で問題を抱え込む傾向があり、自殺という対処法を選択するおそれ
妻が毎日面会に来ており、家族からの支援は期待できる
**看護問題:**絶望感、悲嘆に関連した自殺行動リスク状態
11. 価値・信念パターン
学業や職場での成績、他者からの評価に価値を見出してきた
うつ病に罹患したことで、これまでの生き方に対して疑問を抱き始めている
今のところ仕事優先の考えを変えておらず、価値観・信念の揺らぎは生じていない
**看護問題:**機能的パターン
看護問題の優先順位と看護計画
看護診断
優先順位第1位:絶望感、悲嘆に関連した自殺行動リスク状態
入院前の多量服薬による自殺企図
現在も「このまま生きていていいのか、消えてしまいたい気持ちがあります」という発言
生命に関わる危険性が最も高い
優先順位第2位:仕事上のストレス、将来への不安、悲観的な思考、それに伴う抑うつ状態に関連した不眠
3時前後の起床、早朝覚醒
熟眠感なし、再入眠困難
優先順位第3位:うつ症状、向精神薬の副作用、活動不足に関連した栄養バランス異常:必要量以下
夕食が2〜3割程度の摂取
低栄養状態(TP 5.8g/dL)
その他の看護問題
食事摂取量の減少、薬剤の副作用、活動性低下および下剤の飲み忘れに関連した消化管運動機能障害リスク状態
抑うつ症状による意欲低下に関連した(入浴・更衣)セルフケア不足
新たな職場環境への適応困難と自己評価の低下に関連した絶望感
疾患や薬物療法の知識不足に関連した非効果的健康自主管理
抑うつ状態、自信喪失に関連した非効果的役割遂行
優先順位第1位の理由
D氏は昇進に伴う部署異動という環境変化が大きなストレスとなり、うつ病を発症しています。
うつ病の症状である集中力の低下は仕事上のミスを増加させ、これが自尊感情の低下を招いています。
現在入院中であり、職場や家庭での役割を果たせなくなったことも、D氏の罪悪感や自責の念を増大させています。
D氏の忍耐強く、まじめで責任感が強い性格は、うつ病になりやすいとされる「メランコリー親和型」の性格であり、うつ病を悪化させやすい傾向があります。
この性格傾向が入院前の自殺企図につながっていると考えられ、現在も発言からは自殺の意思が続いている様子があります。
このため、D氏の自殺リスクは依然として高く、生命に関わる危険性があると判断されるため、自殺行動リスク状態を優先順位1位としました。
看護計画(優先順位第1位)
看護問題:絶望感、悲嘆に関連した自殺行動リスク状態
長期目標
自傷行動をすることがなく入院生活を送ることができる
短期目標
違和感や不安を言葉に出す
自殺を思わせる言動がなくなる
OP(観察計画)
表情や言動
希死念慮の有無
現在のストレスの状態
精神状態
睡眠状態
周囲の危険物の有無
TP(ケア計画)
自殺しないことをD氏と約束してもらう
1日数回、D氏の様子を観察するため訪室し、D氏に声をかけて気分がよければ短時間会話をすることで、信頼関係の構築に努める
現在D氏の日常生活の中で、できている部分や長所を評価し、自尊感情を高めるような声かけを行う
D氏の疲労度に配慮しつつ、室外へ出てみることを誘い気分転換を促す
危険物を身のまわりに置かないよう環境を整備する
EP(教育計画)
心配事があったら何でも相談していいことを伝える
内服の効果や副作用、重要性について説明する
死にたい気持ち(希死念慮)は、うつの症状であり、回復とともに軽快するという事を伝える
必要に応じて、主治医との面談ができることを伝える
日常生活のリズムを整えるよう指導する
まとめ|うつ病看護のポイント
うつ病患者の看護では、自殺リスクの管理、抑うつ症状への対応、服薬管理、セルフケアの支援、職場復帰に向けた支援が重要な柱となります。
本事例のD氏のように、メランコリー親和型の性格でストレス耐性が低く、自殺企図の既往がある患者には、自殺リスクの継続的な評価と安全管理が最優先の看護目標となります。
また、罪業妄想や貧困妄想により自責の念が強い場合は、患者の訴えに共感的に耳を傾けながら、できている部分や長所を評価し、自尊感情を高める関わりが重要です。
看護学生の皆さんは、このような架空事例を参考にしながら、実際の患者さんの個別性を大切にした看護過程を展開してください。
うつ病看護は、急性期の自殺リスク管理から回復期の社会復帰支援まで長期的な視点が必要であり、患者が希望を持って回復に向かえるよう支援することが看護の重要な役割となります。








