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看護計画

急性混乱リスク状態の看護計画|せん妄予防から具体策まで看護師がわかりやすく解説

この記事は約8分で読めます。

入院中の患者さんが突然「ここはどこだ」と叫んだり、点滴を自分で抜こうとしたり、夜中に起き上がってうろうろしたりする。

そういった場面に出会ったことがある看護師さんは多いのではないでしょうか。

これは急性混乱、いわゆる「せん妄」と呼ばれる状態です。 せん妄は入院患者さんに広く見られる状態であり、特に高齢者や術後・集中治療室での患者さんに起きやすいとされています。

この記事では、急性混乱リスク状態について、原因・観察のポイント・看護計画の立て方まで丁寧に解説していきます。 看護学生の方にも、臨床で悩んでいる看護師の方にも、役立てていただけると嬉しいです。


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急性混乱リスク状態とはどういう状態か

急性混乱とは、短い時間のうちに意識・認知・注意・行動などに乱れが生じる状態のことです。 医学的には「せん妄(Delirium)」と呼ばれており、脳の機能が一時的に乱れることで起きます。

せん妄には大きく分けて三つの種類があります。

過活動型せん妄は、興奮・大声・点滴抜去・ベッドから降りようとするなど、活動が高まる状態です。 目に見えやすいため発見されやすいですが、転倒・転落や自己抜去などの事故につながりやすいです。

低活動型せん妄は、ぼんやりしている・反応が鈍い・ほとんど動かないという状態です。 一見すると「おとなしくしている」ように見えるため見落とされやすく、実は最も頻度が高いとされています。

混合型せん妄は、過活動と低活動が交互に現れる状態です。

「急性混乱リスク状態」とは、まだせん妄は起きていないものの、発症する可能性が高いと考えられる状態を指します。 リスクを早期に察知し、予防的に関わることが看護師の大切な役割です。


急性混乱が起きやすい原因

せん妄が起きる背景には、大きく分けて三つの要因があります。

素因(もともと持っている要因)として、高齢・認知症・脳血管疾患・アルコール多飲歴・感覚障害(視力低下・難聴)などが挙げられます。 こうした背景がある患者さんは、脳の余力が少ないため、わずかな刺激でも混乱が起きやすい状態にあります。

誘発因(急性混乱を引き起こす直接的な要因)として、手術・麻酔・痛み・感染症・脱水・電解質異常・低酸素状態・薬剤(抗コリン薬・睡眠薬・オピオイドなど)・尿閉・便秘などが代表的です。 身体の中で何らかの問題が起きているサインとして、せん妄が現れることがあります。

促進因(せん妄を起きやすくする環境的な要因)として、不動(長期臥床)・睡眠不足・感覚遮断(部屋が暗い・静かすぎる)・拘束・見慣れない環境・昼夜逆転などがあります。 集中治療室(ICU)や術後病棟は、これらの促進因が重なりやすい環境でもあります。

これらの要因が複数重なるほど、急性混乱が起きるリスクは高くなります。


急性混乱が引き起こすリスク

せん妄が起きると、患者さんにとってさまざまな問題が生じます。

転倒・転落のリスクが大きくなります。 夜中にベッドから降りようとする・点滴スタンドを引っ張って歩こうとするといった行動が起き、骨折や頭部外傷につながることがあります。

自己抜去のリスクが高くなります。 点滴・ドレーン・尿道カテーテル・気管チューブなどを自分で抜いてしまい、治療の継続が困難になることがあります。

入院期間が長くなります。 せん妄が起きると、治療の遅延・合併症の発生・身体機能の低下につながり、退院が遅くなることが多いです。

認知機能への長期的な影響が出ることがあります。 せん妄のエピソードが繰り返されると、回復後も認知機能の低下が残ることがあるとされています。

患者さんとご家族の苦痛にもつながります。 「あの時の自分がこわかった」「家族の顔がわからなくなった」という体験は、患者さんやご家族に大きな精神的な負担をかけます。


看護師として何を見ればよいか

急性混乱リスク状態にある患者さんの観察では、変化をいち早く察知できるよう、日常的な関わりの中で丁寧に確認することが大切です。

意識・認知の変化を確認します。 普段と比べて会話がかみ合わない・返答が遅い・目がうつろ・表情が乏しいといった変化は、混乱の早期サインのことがあります。 「今日は何日ですか」「ここはどこですか」といった見当識の確認も有効です。

注意力の変化を観察します。 話しかけても反応しない・途中で話がそれる・ぼんやりしているといった変化を確認します。

症状の変動性(波)を観察します。 せん妄は一日の中で症状が変動しやすく、特に夕方から夜にかけて悪化しやすい特徴があります。 日中は問題なく見えても、夜間に急変することがあります。

睡眠の状態を把握します。 昼夜逆転・夜間の不眠・昼間の過眠が続いていないかを確認します。

身体的な問題を把握します。 発熱・脱水・低酸素・電解質異常・疼痛・尿閉・便秘の有無を確認します。 これらは急性混乱の直接的な原因になることがあります。

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薬剤の確認を行います。 せん妄を起こしやすい薬剤(睡眠薬・抗コリン薬・オピオイド系鎮痛薬など)が使われていないかを確認します。

点滴・ドレーン類の状態を確認します。 引っ張られた跡・固定のゆるみ・自己抜去の痕跡がないかを確認します。


看護目標

長期目標

患者さんが入院中にせん妄を発症することなく、安全な環境の中で治療を続けることができる。

短期目標

せん妄の発症リスクとなる身体的な問題(脱水・疼痛・尿閉・便秘・低酸素など)が早期に発見され、対処されるようになる。

昼夜のリズムが整い、夜間にまとまった睡眠がとれるようになる。

患者さんが入院環境に慣れ、見当識が保たれた状態でスタッフや家族と会話できるようになる。


看護計画の具体策

観察計画(観察項目)

患者さんの状態を早期に察知するための観察内容です。

意識レベル・見当識(時間・場所・人物)の確認を定期的に行います。 会話の内容・返答の速さ・目の焦点・表情の変化を観察します。 夜間の睡眠状況(入眠の状態・夜間覚醒・昼夜逆転の有無)を確認します。 バイタルサイン(体温・血圧・脈拍・呼吸数・酸素飽和度)を確認します。 水分摂取量・尿量・排便の状況を把握します。 疼痛の有無と程度を確認します。 点滴・ドレーン・カテーテル類の固定状況と自己抜去の痕跡を確認します。 せん妄評価ツール(混乱評価法など)を活用して定期的に評価します。 内服薬・注射薬の種類と変更をチェックします。 転倒リスクの評価を定期的に行います。

ケア計画(直接的なケアの内容)

せん妄を起こしやすい身体的な問題に対処します。 脱水の予防として、経口での水分摂取を促します。 疼痛がある場合は適切な鎮痛を医師に相談します。 尿閉・便秘が続いている場合は早期に対応します。 低酸素状態がある場合は酸素投与を検討するよう医師に報告します。

睡眠・覚醒リズムを整えます。 日中は明るい環境にして活動量を増やし、夜間は照明を落として静かな環境をつくります。 日中の離床・座位・軽い活動(ベッドサイドでの体操など)を取り入れます。 夜間の不必要な処置や採血はできるだけ日中にまとめます。 睡眠薬に頼りすぎず、入眠を促す環境調整(足浴・温かい飲み物など)を先に試みます。

見当識を保てる環境をつくります。 部屋に時計・カレンダーを置き、患者さんが日付や時間を確認できるようにします。 日中の声掛けの中で「今日は○月○日ですよ」「ここは○○病院の病棟ですよ」と自然に伝えます。 ご家族の写真や慣れ親しんだ小物を置くことで、安心感を高めます。

安心できる関係と環境をつくります。 ケアの前には必ず声をかけ、何をするかを伝えてから触れます。 同じスタッフが関わることで、顔なじみの関係をつくります。 不安や混乱が強いときは、穏やかな声で「ここは安全ですよ」「私たちがそばにいます」と伝えます。

身体的な抑制(拘束)は最後の手段とします。 抑制は患者さんの興奮や混乱をかえって強めることがあります。 抑制が必要な場合は、必ず医師の指示のもとで行い、最小限の時間にとどめます。 抑制中は皮膚損傷・循環障害・心理的苦痛の有無を定期的に確認します。

感覚機能を補います。 眼鏡・補聴器を使っている患者さんは、必ず使用できる状態にします。 これらが使えない状態では、周囲の状況が正確に把握できず、混乱につながりやすいです。

教育計画(患者さん・ご家族への説明)

患者さん本人への説明を行います。 入院直後から「ここは○○病院です」「今は治療中です」という現状をわかりやすく伝え、不安を和らげます。 「夜に気分が変になることがあるかもしれないけれど、スタッフがそばにいます」と事前に伝えることで、混乱が起きたときの恐怖を少し和らげることができます。

ご家族への説明を行います。 せん妄とはどういう状態か、なぜ起きるのか、一時的なものであることが多いことを丁寧に説明します。 「ぼけてしまったわけではない」「治療が進めば落ち着くことが多い」という見通しをお伝えします。 面会時の関わり方として、穏やかに話しかける・患者さんの話を否定しないで聞く・混乱していても「変な人」扱いしないといったポイントをお伝えします。 夜間の付き添いが可能な場合は、顔なじみの家族がそばにいることがせん妄の予防や改善に役立つことをお伝えします。


夜勤帯に気をつけたいこと

せん妄は特に夕方から夜間にかけて悪化しやすい特徴があります。 これは「サンダウン症候群」とも呼ばれており、光の刺激が減り、睡眠と覚醒のリズムが乱れることで起きやすいと考えられています。

夜勤帯では以下のような点を意識して関わります。

消灯後も病室に少し光が入るよう足元灯をつけておくことで、完全な暗闇を避けます。 ナースコールを患者さんの手の届く場所に必ず置きます。 夜間の巡回では声をかけて覚醒状態を確認し、必要なら会話で見当識を確認します。 不穏状態が強まってきたら、早めに医師に報告し対応を相談します。


せん妄が起きてしまったときの関わり方

予防に努めても、せん妄が発症してしまうことはあります。 そのときの関わり方も大切です。

否定や叱責はしません。 「違います」「落ち着いてください」という言葉は、かえって興奮を強めることがあります。

安全の確保を最優先にします。 転倒・自己抜去のリスクが高い状態では、まず安全な環境をつくることを優先します。

穏やかな声と態度で関わります。 大きな声・素早い動作・複数人での囲みは混乱を強めます。 落ち着いたトーンで、一つひとつ丁寧に伝えます。

チームで情報を共有します。 せん妄の様子・時間帯・引き金になった出来事を申し送りで丁寧に伝え、チーム全員で状態を把握します。


まとめ:急性混乱は予防できるケアがある

急性混乱リスク状態への看護は、せん妄が起きてから対処するのではなく、起きないよう予防的に関わることが何より大切です。

看護師が毎日の観察の中でわずかな変化を見逃さず、睡眠・環境・身体的な問題に早めに手を打つことが、患者さんの安全と回復を守ることにつながります。

せん妄は決して「仕方ない」ものではありません。 予防できる部分は予防し、起きてしまったときも適切に関わることで、患者さんとご家族の苦痛を少しでも減らすことができます。

この記事が、急性混乱に関わる看護師さんや看護学生さんの参考になれば嬉しいです。

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