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看護計画

自殺性自傷行動リスク状態の看護計画|死にたい気持ちを抱える患者さんへの支援と関わり方

この記事は約11分で読めます。

「消えてしまいたい」「もう生きていたくない」「死んだほうが周りの人が楽になる」——こうした言葉を患者さんから聞いたとき、看護師はどう向き合えばいいのでしょうか。

自殺念慮や自傷行為は、医療の現場で決して珍しくない問題です。

精神科病棟だけでなく、一般病棟、救急外来、外来診療、在宅看護の場においても、死にたい気持ちを抱えた患者さんと関わる機会は多くあります。

「死にたい」という言葉の背景には、死を望んでいるというよりも、今の苦しさから逃れたい、誰かに気づいてほしい、助けてほしいという深い叫びが隠れていることがほとんどです。

看護師がその叫びを受け止め、適切に対応することが、患者さんの命を守る最初の一歩になります。

この状態は看護診断において自殺性自傷行動リスク状態と呼ばれ、自殺念慮、自傷行為、自殺企図のリスクがある患者さんに広く適用される診断です。

今回は、この看護診断の概要から看護計画の立案まで、臨床で活用できる内容を詳しくまとめました。


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自殺性自傷行動リスク状態とはどういう状態か

自殺性自傷行動リスク状態とは、自分自身を傷つけたり、命を絶とうとするリスクが高まっている状態のことです。

NANDA-Iでは、自殺性自傷行動リスク状態を「意図的に自己に傷害を与えたり、死に至る行動をとるリスクのある状態」として定義しています。

この診断には、自殺念慮(死にたいという気持ちや考え)、自傷行為(自分の身体を傷つける行為)、自殺企図(実際に自殺を試みること)のすべてが含まれます。

重要なのは、自傷行為が必ずしも死を目的としているわけではないという点です。

リストカットや過量服薬などの自傷行為は、強い感情的苦痛に対処するための手段として行われることが多く、死を望む気持ちとは区別して理解することが大切です。

ただし、自傷行為を繰り返す患者さんでは、自殺のリスクも高くなることがあるため、注意が必要です。

たとえば、次のような状態がこの診断に当てはまります。

「死にたい」「消えてしまいたい」という言葉を繰り返している患者さん。

リストカットや過量服薬などの自傷行為を行っている、または過去に行ったことがある患者さん。

自殺の方法を具体的に考えている、準備を始めているという状況にある患者さん。

大切な人との死別や重大な喪失体験の直後にある患者さん。

うつ病や統合失調症などの精神疾患を抱え、症状が悪化している患者さん。

慢性的な疼痛や難治性疾患を抱え、「もう限界」と感じている患者さん。


なぜこの看護診断が重要なのか

自殺は防ぐことができる死です。

適切な支援と関わりがあれば、多くの自殺を防ぐことができるという事実は、看護師がこの問題に積極的に向き合う根拠になります。

「死にたい」という気持ちを持つ患者さんに看護師がどう関わるかは、その後の患者さんの安全に直接影響します。

「そんなことを言ってはいけない」と話題を避ける、感情的に反応する、すぐに精神科に引き渡そうとするといった対応は、患者さんをさらに孤立させる可能性があります。

一方で、落ち着いて話を聴き、「それほど辛い状況にいるんですね」と受け止め、安全を確保するための行動をとることで、患者さんが「誰かに分かってもらえた」という感覚を持てるようになります。

また、看護師は患者さんと最も長い時間を共にする職種として、自殺リスクの変化に最初に気づくことができる立場にあります。

日常の関わりの中でのさりげない観察と早期介入が、患者さんの命を守る力になります。


関連因子とリスク因子を整理する

自殺性自傷行動リスク状態に関わる因子は多岐にわたります。

精神疾患に関わる因子として、うつ病(特に重症うつ病)、双極性障害(躁状態が収まった後の抑うつ期)、統合失調症、パーソナリティ障害(特に境界性パーソナリティ障害)、アルコール・薬物依存、不安障害が挙げられます。

精神疾患を持つ患者さんでは、自殺リスクが一般より高くなることが分かっています。

心理・感情的な因子として、強い絶望感(「どうせ何をしても変わらない」という感覚)、強烈な罪悪感・自己否定感、強い怒りや衝動性、感情調整の難しさ、過去の自傷・自殺企図の経験(過去に試みたことがある場合はリスクが高くなる)が挙げられます。

生活上の出来事に関わる因子として、大切な人との死別、離婚・別居、職を失うこと、経済的困窮、重大な失敗や挫折体験、慢性的な苦痛・難治性疾患の診断、いじめや虐待の経験が関わります。

社会・環境的な因子として、社会的孤立、頼れる人の少なさ、致死的な手段(薬物、刃物など)への容易なアクセス、自殺を肯定するような情報への接触が挙げられます。

身体的な因子として、慢性疼痛、末期疾患、身体機能の著しい低下が自殺リスクを高めることがあります。


看護目標を設定する

長期目標

患者さんが死にたいという気持ちの背景にある苦しさを言葉にして表現できるようになり、安全を保ちながら専門的な支援を受けて生きていくための力を取り戻すことができる。

短期目標

今感じている苦しさや死にたいという気持ちについて、看護師に言葉で話すことができる。

自分の安全を脅かす行動をとりそうになったとき、看護師や支援者に助けを求めることができる。

今後の治療や支援の計画について、医療チームと一緒に話し合いに参加することができる。


観察計画(オーピー)

自殺性自傷行動リスク状態を把握するためには、言動の変化、感情状態、自殺のリスク因子を継続的・多角的に観察することが必要です。

自殺念慮・自傷行為の観察として、「死にたい」「消えたい」「いなくなればよかった」という発言がないかを確認します。

このような言葉が出た場合には、「死にたいという気持ちがあるのですか」と直接確認します。

「死にたい」という言葉を直接確認することは、患者さんに自殺念慮を植え付けるものではなく、むしろ「話してもいい」という許可を与えることになります。

自殺の方法を具体的に考えているか(方法の具体性)、実行する時期を決めているか(計画性)、致死的な手段にアクセスできる状況にあるか(手段へのアクセス)を確認することで、リスクの切迫度を評価します。

身体に新たな傷(リストカットの痕、打撲など)がないかを、入浴介助や処置の際に確認します。

感情・精神状態の観察として、強い絶望感、深刻な抑うつ状態、感情の急激な変化、衝動性の高まり、不眠の悪化、食欲の極端な低下を把握します。

「もう誰にも会いたくない」「全部終わりにしたい」という発言は、緊急度が高いサインです。

行動の変化の観察として、急に落ち着いて見える(自殺を決意した後に見られることがある「嵐の前の静けさ」)、大切な持ち物を人に渡す、身の回りを整理し始めるといった行動の変化に注目します。

これらは自殺の決意を示している可能性があるため、緊急の対応が必要です。

保護因子の確認として、患者さんが生きていたい理由(家族への愛情、将来の目標、信仰など)、頼れる人の有無、過去に苦難を乗り越えた経験なども把握します。

保護因子を理解することは、ケアの方向性を考える上で大切な情報になります。

環境の安全の確認として、病室内や手の届く範囲に危険な物品(刃物、薬剤、紐になるものなど)がないかを確認します。


ケア計画(ティーピー)

ケア計画では、患者さんの安全を確保することを最優先にしながら、信頼関係の構築と専門的な支援への橋渡しを行います。

患者さんが「死にたい」と話したとき、まずその言葉をそのまま受け止めます。

「そんなことを言ってはいけない」「生きていれば良いことがある」という言葉は、患者さんの苦しさを否定することになります。

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「それほど辛い状況にいるんですね」「話してくれてありがとうございます」という言葉で、患者さんの気持ちをそのまま受け取ります。

感情的に動揺せず、落ち着いた態度で関わることが大切です。

看護師が動揺したり、慌てたりすることは、患者さんに「やっぱり話さなければよかった」と感じさせることがあります。

自殺リスクの緊急度に応じた安全確保の行動をとります。

自殺念慮が確認された場合は、速やかに精神科医または担当医に報告し、緊急の評価を依頼します。

致死的な手段へのアクセスがある場合には、その手段を取り除く(薬剤の管理、危険物の除去)ことを優先します。

入院中の患者さんでは、安全確認の頻度を高め、一人にしない時間帯を設けます。

患者さんとの信頼関係を大切にしながら、「一緒に考えましょう」という姿勢で関わります。

「今夜だけ、明日の朝まで安全でいることを約束できますか」というような、短期的な安全の約束(セーフティコントラクト)を確認することも有効です。

ただし、これはあくまで一つの手段であり、約束だけで安全が確保されるわけではないため、環境的な安全確保と並行して行います。

精神科医・臨床心理士との連携を速やかに行います。

自殺リスクが高い場合には、精神科への緊急コンサルテーションを依頼します。

精神科への移送が必要な場合には、患者さんへの説明と同意を丁寧に行い、「あなたのことが心配だから、専門家に一緒に診てもらいましょう」という姿勢で伝えます。

家族や信頼できる支援者への連絡を、患者さんの同意を得た上で行います。

患者さんが孤立しないよう、信頼できる人との連絡が維持されるよう支援します。

退院後の安全計画を患者さんと一緒に立てます。

危機的な状況になったときに誰に連絡するか、どこに相談するか、危険な手段へのアクセスをどう制限するかを具体的に計画します。


教育計画(イーピー)

教育計画では、患者さんが自分の状態を理解し、危機的な状況でも助けを求めることができるよう支援します。

患者さんに対して、「死にたい」という気持ちは、苦しさが限界を超えたときに誰にでも生じうる反応であることを伝えます。

「あなたがおかしいのではありません。それほど苦しい状況にいるということです」というメッセージが、患者さんの自己否定感を和らげます。

「死にたい」という気持ちが出てきたときの対処方法を一緒に考えます。

信頼できる人に電話する、病院の救急外来に来る、危機介入の電話相談窓口に電話するなど、具体的な行動を事前に決めておくことが大切です。

「その気持ちが出てきたとき、一人でいないでください。誰かに連絡してください」というメッセージを繰り返し伝えます。

利用できる相談窓口について情報を提供します。

いのちの電話(0120-783-556)、よりそいホットライン(0120-279-338)、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)など、24時間対応の危機介入ホットラインの連絡先を具体的に伝えます。

「辛くなったらいつでも使えます。番号を手帳やスマートフォンに入れておいてください」という伝え方が、いざというときの行動につながります。

自傷行為について、その行動の背景にある気持ちを理解しながら、代替的な対処方法についての情報を提供します。

「自傷行為は一時的に苦しさを和らげることがありますが、傷や感染のリスクがあります。同じような効果が得られる別の方法を一緒に考えましょう」という姿勢で関わります。

氷を握る、強い匂いを嗅ぐ、激しく運動するなど、感覚に働きかける代替的な方法を提案することがありますが、患者さんの状態に合わせて専門職と連携しながら検討します。

家族や支援者に対して、患者さんのそばにいることの大切さと、危機的なサインへの気づき方を伝えます。

「急に落ち着いて見える、大切なものを人に渡し始める、お別れのような言葉を言う——こうしたサインが見られたときはすぐに医療機関に連絡してください」という具体的な情報が、家族の早期対応につながります。

また、「死にたいと言っているときは、話を聞いて、一人にしないでください。死にたいという気持ちを話させることは、自殺を助長しません」という説明が、家族の不必要な恐怖を和らげます。


臨床でよく見られる場面と対応のポイント

うつ病の患者さんでは、抑うつが深まった時期だけでなく、治療開始直後の活動性が少し回復した時期(抑うつが深い時期は行動する力もないが、少し回復すると行動できるようになる)に自殺リスクが高くなることがあります。

この時期の観察を特に丁寧に行います。

精神科病棟の患者さんでは、退院前後の時期は環境の変化によりリスクが高くなることがあります。

退院前から地域の支援体制を整え、退院直後の外来フォローアップを必ず組み込みます。

一般病棟の患者さんでは、がんの告知直後、重篤な疾患の診断後、手術による身体的変化の受容が難しい時期などにリスクが高くなります。

「辛いと感じていることはありますか」「消えてしまいたいという気持ちはありますか」と率直に確認する姿勢を持ちます。

救急外来で過量服薬などで来院した患者さんでは、身体的な処置と並行して、心理的なアセスメントと精神科へのつなぎを速やかに行います。

「なぜそんなことをしたのか」という責めるような言葉は絶対に使いません。

「今どんな気持ちですか」「これほど辛い状況にいたんですね」という言葉から関わります。

在宅や外来の患者さんでは、受診の機会を活かして定期的に気持ちの状態を確認します。

「最近、死にたいという気持ちが出てくることはありますか」と定期的に聞くことで、患者さんが「この人には話してもいい」と感じるようになります。


看護師自身のケアについて

自殺念慮や自傷行為のある患者さんと向き合うことは、看護師自身にとっても大きな心理的負担をもたらします。

担当した患者さんが自殺を図った場合、看護師は強い自責感や無力感を感じることがあります。

こうした感情は、患者さんの苦しさに真剣に向き合っていた証であり、否定すべきものではありません。

チームでの情報共有と振り返り、スーパービジョン、同僚との話し合いの機会を大切にし、看護師自身の心の健康も守ることが、継続的な質の高いケアにつながります。


まとめ

自殺性自傷行動リスク状態は、患者さんの命に直接関わる、看護において最も慎重かつ丁寧な対応が求められる診断のひとつです。

「死にたい」という言葉の背景にある苦しさを受け止め、批判せず、安全を確保しながら専門的な支援につなぐことが、看護師としての最大の役割です。

一人の患者さんの「話してくれてよかった」という体験が、その人の命を守る最初の一歩になります。

観察、ケア、教育の三つの柱をバランスよく組み合わせながら、患者さんが「生きていていい」という感覚を少しずつ取り戻せるよう、チームで継続的に関わり続けることが大切です。

看護計画は患者さんの状態の変化に合わせて柔軟に見直しながら、その人の命と尊厳を守る支援を続けていきましょう。


もし今、あなた自身が辛い気持ちを抱えているならば、一人で抱え込まずに相談してください。

よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応)

いのちの電話:0120-783-556

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