急性リンパ性白血病は小児がんの中で最も頻度の高い疾患で、適切な看護ケアが治療成功の鍵となります。
今回は8歳2ヶ月男児の急性リンパ性白血病患者を事例に、ゴードン11項目を用いたアセスメント方法と小児特有の看護過程について詳しく解説していきます。
急性リンパ性白血病の基礎知識
急性リンパ性白血病は造血幹細胞の異常により、未熟なリンパ芽球が骨髄内で増殖する血液悪性腫瘍です。
小児白血病の約85%を占め、年間約1,200例の新規発症があります。
正常な造血が抑制されることで、貧血、血小板減少による出血傾向、易感染状態という骨髄抑制の三大症状が出現します。
白血病細胞はリンパ節、肝臓、脾臓に浸潤し、これらの臓器を腫大させることもあります。
小児の場合、治療反応性が良好で、適切な化学療法により80-90%の治癒率が期待できます。
事例紹介:Aくんの病歴と入院経過
今回検討する事例は、8歳2ヶ月の小学校2年生男児Aくんです。
主訴は倦怠感と発熱で、化学療法による治療目的で入院しました。
5人家族で両親は共働き、13歳の姉と祖父母のサポートを受けて生活していました。
入院前は活発な児童で、スイミングスクールに通い、アンパンマンごっこなどの遊びを楽しんでいました。
化学療法開始後は嘔気・嘔吐により食欲不振となり、栄養状態の低下が見られています。
学童期の発達特徴と白血病の影響
身体的発達への影響
8歳は学童期中期で、身体技能が著しく発達する時期です。
化学療法による骨髄抑制は、活発な身体活動を制限し、体力低下や筋力減少をもたらします。
また、ステロイド投与による体重増加や外見変化は、自己概念に大きな影響を与える可能性があります。
認知・社会的発達への配慮
学童期は論理的思考が発達し、因果関係の理解や規則への関心が高まる時期です。
病気や治療について年齢に応じた説明を行い、理解を促進することが重要です。
学校生活や友人関係の中断は、社会的発達に影響を与えるため、適切な支援が必要です。
ゴードン11項目による包括的アセスメント
健康知覚-健康管理パターン
急性リンパ性白血病の症状と治療に対する理解度を評価します。
Aくんは8歳という年齢から、病気の概念を理解し始める段階にあります。
倦怠感や発熱といった症状の訴えは可能ですが、複雑な病態の理解には限界があります。
家族の疾患理解と治療への協力体制が、患児の治療継続において重要な要素となります。
化学療法による副作用の出現は、患児の治療に対する恐怖や不安を増大させる可能性があります。
栄養-代謝パターン
化学療法による消化器症状と栄養状態の評価が重要です。
Aくんは化学療法開始後、嘔気・嘔吐により食欲不振となっています。
好物のオムライスも摂取困難となり、栄養状態の低下が進行しています。
血液検査でも低蛋白・低栄養状態が確認されており、積極的な栄養支援が必要です。
成長期の小児にとって適切な栄養摂取は治療効果と予後に直結するため、創意工夫した栄養介入が求められます。
水分・電解質バランスの管理も重要で、脱水や電解質異常の予防が必要です。
排泄パターン
化学療法と支持療法による排泄機能への影響を評価します。
入院前は規則的な排泄パターンを示していましたが、環境変化と治療により変化が生じる可能性があります。
制吐剤や抗生剤の使用により便秘や下痢が生じることがあります。
輸液療法により尿量が増加し、頻繁な排尿により睡眠が妨げられることもあります。
感染予防の観点から、排泄後の適切な清潔保持の指導も重要です。
活動-運動パターン
骨髄抑制による活動制限と体力維持のバランスが重要な課題です。
血小板減少により出血リスクが高く、激しい運動や外傷リスクのある活動は制限されます。
白血球減少により易感染状態となるため、人混みや感染源との接触を避ける必要があります。
可能な範囲での適度な運動は、筋力維持と精神的健康に重要です。
ベッドサイドでできる軽い運動やストレッチを取り入れ、廃用症候群を予防します。
睡眠-休息パターン
入院環境と治療による睡眠への影響を評価します。
入院前は規則正しい睡眠パターンを示していましたが、病院環境により変化が生じています。
化学療法による不快症状、点滴やモニタリングによる睡眠中断が問題となります。
質の良い睡眠は免疫機能と治癒促進に重要なため、睡眠環境の整備が必要です。
日中の適度な活動と夜間の安眠のバランスを保つよう調整します。
認知-知覚パターン
学童期の認知発達と治療による影響を評価します。
8歳児は具体的操作期にあり、目に見える事象の理解は可能ですが、抽象的概念の理解には限界があります。
病気や治療について年齢に適した説明を行い、理解を促進します。
化学療法による認知機能への影響や学習能力の変化にも注意が必要です。
疼痛や不快症状の評価には、小児用疼痛スケールを活用します。
自己知覚-自己概念パターン
疾患と治療による自己概念への影響を評価します。
学童期は自己効力感や有能感の発達時期で、病気により活動が制限されることは自信の喪失につながる可能性があります。
外見の変化や入院による環境変化は、自己概念に大きな影響を与えます。
できることに焦点を当て、達成感を味わえる活動を提供することが重要です。
病気についての理解を深め、治療に参加している実感を持てるよう支援します。
役割-関係パターン
家族関係と学校生活の中断による影響を評価します。
Aくんは5人家族の一員として、また小学校2年生としての役割を持っていました。
入院により家族との分離や学校生活の中断が生じ、役割の変化に適応する必要があります。
姉のBちゃんへの配慮も重要で、両親の注意がAくんに集中することによる心理的影響を考慮します。
友人関係の維持と学校復帰に向けた準備も重要な要素です。
セクシュアリティ-生殖パターン
8歳男児の性的発達段階を考慮します。
この年齢では性的関心は低いですが、身体の変化や治療による影響について適切な説明が必要です。
将来の生殖機能への影響についても、年齢に応じて段階的に説明する準備が必要です。
コーピング-ストレス耐性パターン
入院と治療に対するストレス反応を評価します。
8歳児のストレス対処能力は限定的で、成人の支援が不可欠です。
遊びや創作活動はストレス軽減の重要な手段となります。
アンパンマンごっこなど、馴染みのある遊びを治療環境に取り入れることが効果的です。
家族や医療スタッフとの信頼関係の構築により、安心感を提供します。
価値-信念パターン
家族の価値観と治療方針の調和を評価します。
8歳児では独自の価値観の形成は限定的で、家族の価値観が大きく影響します。
治療に対する家族の理解と協力が、患児の治療継続に重要です。
希望と現実のバランスを保ちながら、前向きな治療への取り組みを支援します。
看護診断と看護計画
主要な看護診断
感染リスク状態:化学療法による白血球減少に関連した易感染状態。
出血リスク状態:血小板減少に関連した出血傾向。
栄養摂取不足:化学療法による嘔気・嘔吐に関連した食欲不振。
成長発達遅延リスク状態:入院と治療制限による正常な発達過程への影響。
看護目標と介入
短期目標として、感染・出血の予防、栄養状態の改善、苦痛症状の軽減を設定します。
長期目標として、治療の完遂、正常な成長発達の促進、学校復帰の支援を目指します。
個別性を重視し、患児の年齢と発達段階に応じた介入を計画します。
家族支援と多職種連携
両親への支援
疾患と治療に関する正しい知識の提供と心理的支援が重要です。
長期にわたる治療過程での家族の結束と支援体制の維持を図ります。
経済的負担や就労継続についての相談支援も必要です。
きょうだい支援
13歳の姉Bちゃんへの配慮も重要な看護の要素です。
思春期初期のBちゃんが体験する心理的負担を理解し、適切な支援を提供します。
家族全体のバランスを保ちながら、それぞれのニーズに応じた支援を行います。
学校との連携
復学に向けた準備と継続的な学習支援を計画します。
病状と治療の制約を考慮した教育環境の調整を学校と協議します。
感染予防対策と活動制限について、学校関係者との情報共有を行います。
まとめ
急性リンパ性白血病の小児看護では、ゴードン11項目を基盤とした包括的アセスメントが極めて重要です。
学童期の発達特徴を理解し、疾患と治療が成長発達に与える影響を最小限に抑える看護介入が求められます。
患児の個別性と家族全体のニーズを考慮した全人的アプローチにより、治療の成功と健やかな成長発達を支援します。
長期にわたる治療過程において、希望を失わず前向きに取り組めるよう、継続的で一貫した支援を提供することが看護師の重要な役割です。
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