はじめに
血圧測定は看護師にとって最も基本的で重要な技術の一つです。
この記事では、看護学生や新人看護師の方に向けて、血圧測定の目的から具体的な手技、注意点まで詳しく解説します。
実習や国家試験対策にも役立つ内容となっています。
血圧測定は単なる数値を測るだけでなく、患者の循環動態を把握し、疾患の早期発見や治療効果の判定に不可欠な技術です。
正確な測定技術を身につけることで、より質の高い看護ケアを提供できるようになります。
🎯 血圧測定の目的
血圧測定は単なるルーチンワークではありません。
以下の重要な目的があります:
診断・評価のための測定
高血圧症や低血圧症の診断において、血圧値は最も重要な指標となります。
特に高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状が少ないため定期的な測定が必要です。
循環器疾患の経過観察では、心不全や心筋梗塞などの病状変化をモニタリングする重要な指標として活用されます。
血圧変動要因の分析により、運動、食事、ストレス、薬物などの生理的因子が血圧に与える影響を評価できます。
治療効果の判定
降圧薬や昇圧薬の効果判定では、薬物投与前後の血圧変化を比較することで治療効果を客観的に評価します。
血圧の左右差や上下肢差から、弁疾患、動脈瘤、大動脈縮窄症などの血管系疾患の診断手がかりを得ることができます。
正常では左右差は10mmHg以内、上下肢差は20mmHg以内とされています。
📍 触診法の目的と重要性
多くの学生が疑問に思う「なぜ触診法が必要なのか?」について詳しく説明します。
触診法は聴診法の前段階として実施される重要な手技です。
触診法の主な目的:
最高血圧(収縮期血圧)のみを測定し、次回の聴診法での適切な加圧値の目安を設定します。
触診法で得られた値に20mmHgを加えた値まで加圧することで、正確な聴診法測定が可能になります。
これにより、患者への負担を最小限に抑えながら正確な測定ができます。
過度な加圧は患者に苦痛を与え、不十分な加圧は正確な測定を困難にするため、触診法による事前確認は必須です。
また、触診法は聴診が困難な環境や、聴診器が使用できない状況での代替手段としても活用されます。
🔧 血圧測定の手順・手技
事前準備・点検
血圧計の点検は測定精度を保つために欠かせません。
水銀血圧計を水平に置き、水銀コックを開いて圧力を加えない状態で水銀の上面が0点にあることを確認します。
200mmHg程度まで送気し、弁を閉じた状態で2mmHg以上の降下がないかチェックし、気密性を確認します。
排気弁を開けて水銀が速やかに0点に戻ることを確認し、排気機能の正常性を確認します。
患者への説明では、測定の目的と方法を分かりやすく伝え、不安を軽減します。
患者を仰臥位にし、測定側上肢を心臓の高さに調整することで、重力の影響を排除します。
袖を肩まで上げ、手掌を上向きにして測定部位を露出します。
マンシェット装着のポイント
マンシェットの適切な装着は正確な測定の基礎となります。
ゴム嚢の中央が上腕動脈の真上にくるよう配置し、血流を効果的に圧迫できるようにします。
マンシェットの下縁が肘窩の2〜3cm上になるよう調整し、関節部での測定誤差を防ぎます。
片手でゴム嚢を固定し、もう片方の手で適度な強さで巻き付けます。
きつすぎると静脈還流が阻害され、ゆるすぎると正確な圧迫ができません。
理想的な締め付け具合は、マンシェットと皮膚の間に指1〜2本分の余裕がある程度です。
触診法の実施
左手で橈骨動脈を触知し、脈拍の性状を確認します。
右手で送気球を操作し、脈が消失するまで段階的に加圧していきます。
脈拍消失後、さらに20mmHg程度加圧して確実に血流を遮断します。
その後、2mmHgずつゆっくりと減圧し、脈拍が再び触知できた時点の値を収縮期血圧として記録します。
減圧速度が速すぎると正確な測定点を見逃す可能性があるため、慎重に行います。
測定後は排気弁を全開にして迅速に減圧し、患者の苦痛を最小限にします。
聴診法の実施
肘窩部で上腕動脈の拍動を確認し、聴診器の膜型を適切な位置に当てます。
聴診器は皮膚に軽く密着させ、過度な圧迫は避けます。
触診法の値+20mmHgまで加圧し、コロトコフ音の聴取に備えます。
脈拍ごとに2mmHgの速度で減圧し、血管音の変化を注意深く聴取します。
コロトコフ音の開始点(第1音)を収縮期血圧として記録します。
コロトコフ音の消失点(第5音)を拡張期血圧として記録します。
音の判定が困難な場合は、再測定を行い正確性を確保します。
⚠️ 重要な注意点・留意点
測定環境の配慮
血圧は様々な要因により変動するため、測定環境への配慮が重要です。
興奮や不安などの精神状態は血圧を上昇させるため、患者をリラックスさせることが必要です。
寒冷環境は血管収縮により血圧上昇を招くため、適温での測定を心がけます。
初診時は緊張により通常より高値を示すことがあるため、複数回測定して判断します。
測定前の運動、喫煙、カフェイン摂取は血圧に影響するため、これらの有無を確認します。
技術的なポイント
適切なマンシェット幅を年齢・体格に応じて選択することが重要です。
成人では幅12〜14cm、小児では幅6〜9cmが一般的です。
測定部位は必ず心臓と同じ高さに保持し、重力による影響を排除します。
上腕が心臓より高い位置にあると低値を、低い位置にあると高値を示します。
長時間の圧迫は患者の苦痛を増し、測定値の信頼性も低下させるため迅速な操作を心がけます。
測定の信頼性向上
2回以上の測定を行い、その平均値を採用することで測定精度を向上させます。
測定間隔は1〜2分空け、血流の回復を待ってから次の測定を行います。
他のバイタルサインとの関連性を評価し、総合的な循環動態の把握に努めます。
測定条件(体位、時刻、薬物投与の有無など)を記録に明記し、経時的な比較を可能にします。
👀 観察項目とアセスメント
主観的症状の確認
血圧異常に伴う症状の有無を確認することが重要です。
めまいや頭痛は高血圧・低血圧両方で見られる症状ですが、その性質や程度により鑑別が可能です。
測定前の活動状況を聴取し、運動や体位変換の影響を評価します。
患者の訴えや不快感を注意深く聞き取り、血圧値との関連性を検討します。
客観的データの比較
前回値との比較により、血圧の変動パターンや治療効果を評価します。
急激な変化は病状の悪化や薬物の副作用を示唆する可能性があります。
左右差の確認により、血管系疾患の存在を疑うことができます。
他のバイタルサインとの関連性を分析し、循環動態の全体像を把握します。
脈拍数、呼吸数、体温との組み合わせにより、より詳細なアセスメントが可能になります。
特別な状況での考慮点
術後患者では疼痛により血圧が上昇することがあるため、疼痛の程度と血圧値の関連を評価します。
薬物投与後は効果判定のため経時的な変化を観察し、適切な投与量の調整に活用します。
体位変換後の血圧測定では、起立性低血圧の評価を行い、転倒リスクの判定に役立てます。
高齢者では血管の硬化により仮性高血圧を示すことがあるため、触診所見との照合が重要です。
📊 正常値と異常値の判断
血圧分類表
| 分類 | 収縮期血圧(mmHg) | 拡張期血圧(mmHg) |
|---|---|---|
| 至適血圧 | 119以下 | 79以下 |
| 正常値 | 120〜129 | 80〜84 |
| 正常高値 | 130〜139 | 85〜89 |
| Ⅰ度高血圧 | 140〜159 | 90〜99 |
| Ⅱ度高血圧 | 160〜179 | 100〜109 |
| Ⅲ度高血圧 | 180以上 | 110以上 |
判断のポイント
単回測定での診断は避け、複数回の測定結果で総合的に評価することが重要です。
年齢、性別、基礎疾患を考慮した個別的な判断が必要で、高齢者では若干高めでも正常範囲とすることがあります。
薬物療法中の場合は治療目標値との比較を行い、薬物調整の必要性を判断します。
糖尿病や慢性腎疾患の患者では、より厳格な血圧管理が求められます。
🔍 随伴症状の把握
高血圧の随伴症状
神経系症状
頭痛は後頭部や項部に多く、朝方に強いことが特徴です。
眩暈、耳鳴り、頭重感は脳血流の変化により生じます。
不眠は交感神経の亢進状態が関与しています。
循環器系症状
心悸亢進は心拍出量の増加や心筋の肥大により生じます。
顔面紅潮は血管拡張による症状です。
その他の症状
肩凝り、手足のしびれは血行不良により引き起こされます。
悪心・嘔吐、食欲不振は重篤な高血圧で見られることがあります。
倦怠感は慢性的な高血圧状態による全身への影響を示します。
低血圧の随伴症状
神経系症状
頭重感、頭痛は脳血流の低下により生じます。
眩暈は起立時や体位変換時に特に顕著になります。
不眠、起床困難は自律神経の調節異常が関与しています。
循環器系症状
動悸は代償機序として心拍数が増加するために生じます。
手足の冷えは末梢循環の低下を示します。
消化器系症状
食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐は消化管への血流低下により生じます。
全身症状
易疲労性、倦怠感は組織への酸素供給不足を反映しています。
精神力や活力の減退、心気的傾向は慢性的な低血圧状態による影響です。
あくびは脳血流の低下に対する代償反応の一つです。
まとめ
血圧測定は看護の基本技術ですが、正確な測定には豊富な知識と熟練した技術が必要です。
この記事で紹介したポイントを押さえて、患者さんの安全と快適性を確保しながら、正確な測定を心がけましょう。
実習や臨床現場では、理論だけでなく実践を通じて技術を磨くことが大切です。
疑問や不安がある場合は、指導者や先輩看護師に積極的に相談し、確実な技術習得を目指してください。
正確な血圧測定技術は、患者の生命を守る重要なスキルであることを常に意識し、責任を持って取り組みましょう。









