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分娩

分娩第3期の看護と観察ポイント完全ガイド|胎盤娩出期の異常早期発見と安全管理

この記事は約8分で読めます。

分娩第3期は胎児娩出後から胎盤娩出までの時期であり、産科領域において最も異常が発生しやすい重要な段階です。

新生児のケアに注意が向きがちなこの時期ですが、産婦には弛緩出血や胎盤遺残などの重篤な合併症リスクが潜んでいます。

本記事では、分娩第3期における看護の要点と観察ポイントについて、生理学的変化から具体的なケア方法まで詳しく解説します。

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分娩第3期の定義と生理的変化

分娩第3期とは何か

胎児娩出後、子宮底が臍高位まで収縮し、5~10分経つと陣痛が再度現れ、胎盤は子宮壁から剥離し、娩出します。

この胎児娩出から胎盤娩出までの期間を分娩第3期または後産期と呼びます。

通常は10~15分程度で完了しますが、30分を超える場合は胎盤遺残や癒着胎盤などの異常を疑います。

第3期における出血の特徴

この時期に出血が100~400mlみられ第3出血といわれ、生理的な出血として許容されます。

胎盤剥離に伴う子宮内膜の血管断裂により出血が起こりますが、子宮収縮により止血されます。

出血量が500mlを超える場合は産後出血と診断され、迅速な対応が必要となります。

子宮の変化と収縮過程

子宮は著明に縮小し、子宮底は臍下2~3cmまで下降することが正常な経過です。

胎盤娩出後の子宮収縮は生きた結紮と呼ばれ、子宮筋の収縮により血管が圧迫されて止血されます。

子宮収縮が不良な場合は弛緩出血のリスクが高まるため、継続的な観察が不可欠です。

分娩第3期における看護の重要性

産婦への注意配分の重要性

児の観察にとらわれて産婦の方がおろそかになりがちであるが、異常が発生しやすい時期なので観察を十分に行うことが看護師の重要な責務です。

新生児の蘇生や初期ケアに複数のスタッフが関わる中、産婦の状態観察が手薄になるリスクがあります。

医療チーム内で役割分担を明確にし、必ず産婦を専任で観察する看護師を配置することが理想的です。

異常発生のリスク理解

分娩第3期は産後出血、胎盤遺残、子宮内反症など、母体の生命を脅かす合併症が起こりやすい時期です。

特に経産婦、多胎妊娠、巨大児分娩、子宮筋腫合併などのハイリスク因子がある場合は、より慎重な観察が求められます。

早期発見と迅速な対応が母体救命の鍵となるため、看護師の観察力と判断力が試される場面です。

胎盤剥離徴候の観察

胎盤剥離の生理的メカニズム

胎盤の剥離徴候の観察は、分娩第3期における最も基本的かつ重要な観察項目です。

胎盤剥離は子宮収縮により胎盤と子宮壁の間に血腫が形成され、胎盤が子宮壁から分離することで起こります。

剥離が完了すると胎盤は子宮腔内に滑り落ち、自然娩出または用手的に娩出されます。

主要な剥離徴候

子宮底の上昇と硬化は胎盤剥離の最も確実な徴候のひとつです。

剥離した胎盤が子宮腔内に滑り落ちることで子宮底が上昇し、臍上まで達することがあります。

臍帯の下降も重要な剥離徴候であり、外陰部から出ている臍帯が自然に伸びてきます。

少量の性器出血の増加、子宮が球形から扁平になる形状変化なども観察すべきポイントです。

剥離徴候出現時の対応

剥離徴候が確認されたら、臍帯を軽く牽引しながら恥骨上部を圧迫する臍帯牽引法を用います。

過度な牽引は子宮内反症を引き起こす危険があるため、必ず対抗圧迫を加えながら慎重に行います。

剥離徴候が明確でない状態での無理な牽引は避け、自然剥離を待つことも重要な判断です。

胎盤娩出時間の管理

時間管理の臨床的意義

胎盤娩出の時間の確認は、異常を早期に発見するための重要な指標となります。

胎児娩出時刻を正確に記録し、そこから胎盤娩出までの時間を計測します。

一般的に30分以内の娩出が正常とされ、30分を超える場合は用手剥離などの介入が検討されます。

遷延時のリスクと対応

胎盤娩出が遷延すると産後出血のリスクが高まり、感染の機会も増加します。

癒着胎盤や嵌頓胎盤などの病的状態の可能性もあるため、産科医との連携が必要です。

時間経過とともに出血量や全身状態を総合的に評価し、適切なタイミングで介入します。

子宮収縮状態の評価

子宮収縮の触診方法

子宮の収縮状態は外腹部から触診により評価し、硬さと位置を確認します。

正常な収縮状態では子宮は硬く触れ、グレープフルーツ大の硬さに例えられます。

子宮底の高さは臍下2~3cm程度で、正中線上に位置することを確認します。

子宮収縮不良の早期発見

子宮が軟らかく、容易に圧迫できる場合は子宮収縮不良を疑います。

子宮底の位置が上昇している場合は、子宮内に血液が貯留している可能性があります。

子宮が正中線から偏位している場合は、膀胱充満や血腫形成の可能性を考慮します。

子宮収縮促進の介入

子宮収縮不良を認めた場合は、まず用手的に子宮底をマッサージして収縮を促します。

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子宮底マッサージは強すぎると子宮内反のリスクがあるため、適切な強さで行います。

必要に応じて子宮収縮剤の投与を医師に報告し、指示を仰ぎます。

出血量と性状の観察

出血量の正確な測定

出血量と性状の観察は、産後出血の早期発見に直結する最重要項目です。

目視による推定では過小評価しがちなため、重量法やショックインデックスなど客観的指標を活用します。

産褥パッドや防水シーツに付着した血液を定期的に計測し、累積出血量を把握します。

出血性状の評価ポイント

出血の色調、粘稠度、凝血塊の有無を観察し、異常出血の鑑別を行います。

鮮紅色で凝固しない出血が持続する場合は、子宮収縮不良や頸管裂傷を疑います。

暗赤色の凝血塊を多く含む場合は、胎盤遺残や子宮内血腫の可能性があります。

産後出血への迅速対応

出血量が500mlを超える、または持続的な多量出血がある場合は直ちに医師に報告します。

バイタルサインの変動、皮膚の冷感、冷汗などのショック徴候にも注意を払います。

輸液ルートの確保、酸素投与の準備など、緊急時対応の準備を整えます。

胎盤の検査と測定

胎盤の肉眼的観察

胎盤の検査と測定は、胎盤遺残を防ぐための必須項目です。

娩出された胎盤は速やかに平らな台上に展開し、母体面と胎児面を詳細に観察します。

母体面は暗赤色で、葉状の区画が完全に揃っているかを確認します。

胎盤完全性の評価

胎盤辺縁の連続性を確認し、欠損部分がないかを慎重に調べます。

血管の走行が胎盤辺縁で途切れている場合は、副葉胎盤の遺残を疑います。

胎盤の重量は通常400~600g程度で、著しく軽い場合は一部遺残の可能性があります。

卵膜と臍帯の観察

卵膜が完全に揃っているか、破損や遺残がないかを確認します。

卵膜に血管が走行している場合は、血管前置や迷入血管の存在を考慮します。

臍帯の長さは通常50~60cm、臍帯付着部位、臍帯血管の数も観察します。

異常所見発見時の対応

胎盤や卵膜に欠損が疑われる場合は、直ちに医師に報告し、子宮内容除去術などの処置が必要となります。

遺残組織は産後出血や産褥感染の原因となるため、確実な除去が重要です。

血圧測定と全身状態の評価

バイタルサイン測定の重要性

血圧の測定は産後出血や羊水塞栓症などの重篤な合併症の早期発見に役立ちます。

分娩第3期は少なくとも15分ごとに血圧、脈拍、呼吸数を測定します。

血圧低下や頻脈は出血性ショックの初期徴候である可能性があります。

全身状態の包括的観察

顔色、表情、意識レベル、皮膚の温度と湿潤度なども重要な観察項目です。

産婦の訴えに耳を傾け、下腹部痛、めまい、動悸などの症状を見逃しません。

産婦との会話を通じて精神状態や疲労度も把握し、必要な支援を提供します。

異常の早期発見と報告

血圧が収縮期で20mmHg以上低下、または脈拍が100回/分以上になった場合は要注意です。

意識レベルの低下、冷汗、皮膚蒼白などのショック徴候が見られたら直ちに医師に報告します。

早期発見と迅速な対応が母体救命率を大きく左右します。

分娩第3期の看護記録

正確な記録の重要性

分娩第3期の経過を時系列で正確に記録することは、法的にも臨床的にも重要です。

胎児娩出時刻、胎盤娩出時刻、出血量、子宮収縮状態、血圧などを漏れなく記載します。

実施したケアや介入、産婦の反応なども具体的に記録します。

異常時の詳細記録

異常が発生した場合は、発見時刻、状況、実施した処置、医師への報告内容などを詳細に記録します。

客観的データと観察所見を区別して記載し、看護判断の根拠を明確にします。

まとめ

分娩第3期は短時間でありながら、母体の生命を脅かす重篤な合併症が発生しやすい重要な時期です。

胎盤剥離徴候、娩出時間、子宮収縮状態、出血量と性状、胎盤の完全性、血圧測定という6つの観察ポイントを確実に実施することが、異常の早期発見につながります。

新生児ケアに注意が向きがちな状況においても、産婦への観察を怠らない姿勢が看護師には求められます。

科学的根拠に基づいた観察と迅速な判断により、安全で安心な分娩第3期のケアを提供することができます。

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