2型糖尿病の診断を受けた時、多くの方が不安を感じるものです。
今回は50代女性の入院治療の実例をもとに、糖尿病治療の実際と日常生活での取り組みについて詳しく解説します。
糖尿病発見のきっかけと見逃されやすい初期症状
職場の健康診断で高血糖を指摘されても、自覚症状がないために治療を中断してしまうケースは少なくありません。
50代女性も数年前の検診で高血糖を指摘されましたが、多忙を理由に受診を中断していました。
再度の検診で空腹時血糖210mg/dl以上、HbA1c8.5%以上という数値が確認され、ようやく本格的な治療開始となりました。
糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な検診が極めて重要です。
気づかないうちに進行し、合併症が出現してから発見されることも珍しくありません。
入院時の検査データから見える糖尿病の実態
入院時データを見ると、随時血糖値が340mg/dl前後、HbA1cが8.0〜9.0%と血糖コントロールが不良な状態でした。
身長160cm前後、体重75〜80kgとBMIは30前後で肥満に分類されます。
血圧も150〜160/90〜100mmHgと高血圧を合併しており、中性脂肪250〜270mg/dlと脂質異常も認められました。
さらに眼科受診の結果、単純網膜症が既に発症しており、尿中アルブミンも200〜230mg/gと腎症の初期段階を示唆していました。
合併症の早期発見には定期的な精密検査が不可欠であることがわかります。
糖尿病は血糖値だけでなく、血圧や脂質のコントロールも同時に行う必要があります。
入院治療で実施される3つの柱
糖尿病治療の基本は食事療法、運動療法、薬物療法の3つです。
これらを組み合わせることで、効果的な血糖コントロールが可能になります。
食事療法での気づきと課題
1日1500〜1600kcal、塩分5〜6gの食事が処方されました。
本人は普段そんなに食べていないつもりでしたが、外食や惣菜の利用が多く、実際には過剰なカロリー摂取と塩分摂取になっていたのです。
病院食を5分足らずで完食する早食いの習慣も、血糖値の急上昇や肥満につながる要因でした。
食事は量だけでなく、質や食べ方も血糖コントロールに大きく影響します。
よく噛んでゆっくり食べることで、血糖値の急上昇を抑えることができます。
野菜から先に食べるベジファーストも、血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。
運動療法の継続可能性
運動が嫌いという方でも、毎食後30分の散歩を同室の患者と楽しみながら実施できた例があります。
無理のない運動から始めることで継続しやすくなるという好例です。
食後の軽い運動は、食後高血糖を抑える効果が期待できます。
エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩くなど、日常生活の中で運動量を増やす工夫も有効です。
薬物療法の重要性
高血圧の治療薬に加えて、血糖降下薬が処方されました。
経口血糖降下薬を、忘れることなく自己管理で服用できている点は治療継続の大きな強みです。
服薬を継続することで、血糖値を安定させ、合併症の進行を防ぐことができます。
薬を飲み忘れないための工夫として、お薬カレンダーの使用や携帯電話のアラーム設定が効果的です。
糖尿病教室で学ぶ合併症の怖さ
入院中の糖尿病教室に熱心に参加し、メモを取る姿勢は素晴らしいものでした。
合併症について学んだ後、まだピンとこないと話しながらも、食べられなくなったら困るからきちんと治したいという発言がありました。
糖尿病の3大合併症は網膜症、腎症、神経障害であり、いずれも生活の質を大きく低下させます。
網膜症が進行すると失明に至る可能性があります。
腎症が悪化すると透析治療が必要になることもあります。
神経障害により足の感覚が鈍くなり、傷に気づかず壊疽に至るケースもあります。
既に単純網膜症と腎症の初期段階が確認されている場合、今後の血糖コントロール次第で進行を防げるかどうかが決まります。
血糖自己測定の習慣化
入院中は毎日4回の血糖自己測定を実施し、手技も習得できました。
毎食前と就寝前に測定することで、食事や運動の影響を把握できます。
しかし退院後の継続を大変だろうと感じる方も多く、日常生活での継続には工夫が必要です。
測定結果を記録し、食事や運動との関連を理解することで、モチベーション維持につながるでしょう。
最近では測定結果をスマートフォンアプリで管理できるシステムもあり、便利になっています。
心理的側面への配慮の必要性
人前で落ち込む姿を見せたくないため、食べることでストレス発散してきたという言葉は重要です。
糖尿病治療では身体面だけでなく、心理的なサポートも欠かせません。
食事制限がストレスになり、かえって食べ過ぎてしまうこともあります。
趣味の食べ歩きを完全に諦めるのではなく、血糖コントロールを維持しながら楽しめる方法を見つけることが、長期的な治療継続の鍵となります。
月に1回のご褒美として外食を楽しむなど、メリハリをつけた食生活が大切です。
家族全体での取り組みの重要性
家族全員が肥満気味であることから、食生活の改善は本人だけでなく家族全体で取り組むべき課題です。
家族の協力があれば、健康的な食習慣の定着がより容易になります。
外食の頻度を減らし、薄味の家庭料理を増やすことで、家族全員の健康増進につながるでしょう。
一人だけ別メニューを作るのは大変ですが、家族全員が同じ健康的な食事をすることで、本人の負担が軽減されます。
子どもの頃からの食習慣が将来の健康を左右するため、家族全体での取り組みは次世代の健康にもつながります。
退院後の生活で気をつけるべきポイント
入院中は規則正しい生活リズムと管理された食事により、血糖コントロールが改善されます。
しかし退院後の日常生活で、いかにこの良好な状態を維持できるかが最大の課題です。
仕事の多忙さを理由に受診を中断しないよう、定期受診のスケジュールを優先事項として確保することが必要です。
外食時は単品料理より定食スタイルを選び、ご飯の量を調整するなどの工夫で、カロリーコントロールが可能になります。
丼ものや麺類の単品は炭水化物に偏りやすいため、おかずとのバランスが取れた定食がおすすめです。
惣菜利用時も栄養成分表示を確認し、揚げ物より煮物や焼き物を選ぶ習慣をつけましょう。
コンビニでも最近は低カロリー、低糖質の商品が増えているため、上手に活用できます。
仕事と治療の両立
多忙な仕事を理由に受診を中断してしまうことは、避けなければなりません。
定期受診は3か月に1回程度が一般的なので、仕事の予定を調整して必ず通院しましょう。
HbA1cの検査により、過去2〜3か月の血糖コントロール状態がわかります。
職場の健康診断だけでなく、糖尿病専門医による定期的なフォローアップが重要です。
低血糖への注意
薬物療法を行っている場合、低血糖に注意が必要です。
食事を抜いたり、激しい運動をすると低血糖を起こす可能性があります。
冷や汗、動悸、手の震え、強い空腹感などの症状が出たら、すぐにブドウ糖や砂糖を摂取しましょう。
外出時は必ずブドウ糖や飴を携帯する習慣をつけることが大切です。
まとめ:糖尿病との向き合い方
2型糖尿病は生活習慣病であり、日々の積み重ねが治療の成否を左右します。
この事例から学べることは、自覚症状がなくても定期検診を受け、早期発見・早期治療を開始することの重要性です。
また、完璧を目指すのではなく、できることから少しずつ始め、継続可能な方法を見つけることが大切です。
糖尿病は適切な治療により、合併症の進行を防ぎ、充実した生活を送ることが十分可能な疾患です。
医療者との信頼関係を築き、家族の協力を得ながら、前向きに治療に取り組むことで、より良い血糖コントロールが実現できるでしょう。
諦めずに続けることが、健康な生活への第一歩です。
定期的な検診と日々の自己管理により、糖尿病と上手に付き合いながら、質の高い生活を送ることができます。








