血液透析療法は、腎不全患者の生命を支える重要な治療法です。
看護師として透析患者のケアに携わる際、透析の基本原理から患者の心理的サポートまで、幅広い知識が求められます。
本記事では、血液透析の基本概念から実際の看護ケアまで、現場で役立つ情報を詳しく解説します。
透析療法の基本原理を理解する
透析とは何か
透析は、半透膜を介して溶質が移動する現象を利用した治療法です。
血液透析では合成膜を、腹膜透析では腹膜を半透膜として使用し、不全状態に陥った腎臓の機能を補います。
この原理により、老廃物や電解質、過剰な水分を体外に除去し、体液を浄化することができます。
透析療法の種類と特徴
透析療法には**血液透析(HD)と腹膜透析(PD)**の2つの主要な方法があります。
血液透析は体外で血液を浄化する方法で、週3回程度医療機関で行われるのが一般的です。
一方、腹膜透析は患者自身が自宅で行える治療法で、連続的な浄化が可能という特徴があります。
血液透析の適応と緊急性の判断
急性腎不全における緊急透析
打撲や交通事故などによる急性腎不全では、緊急透析が必要になることがあります。
特に血清カリウム値の急激な上昇は、致死的不整脈を引き起こすリスクが高く、迅速な対応が求められます。
また、尿素窒素の急激な上昇による尿毒症症状が顕著になった場合も、緊急透析の適応となります。
維持透析への移行時期
維持透析の導入時期は、臨床症状、血清クレアチニン濃度、日常生活障害度を総合的に判断して決定されます。
生命予後を考慮すると、ぎりぎりまで透析開始を遅らせるよりも、必要な場合は早期導入が推奨されています。
看護師は患者の症状変化を的確に観察し、医師と連携して適切なタイミングでの導入をサポートする役割があります。
透析療法の4つの重要な目的
生命の維持と急性症状の予防
透析療法の最も重要な目的は患者の生命維持です。
尿毒症による高カリウム血症、心不全、肺水腫などの急性症状による死亡を防ぐことが最優先となります。
看護師は患者のバイタルサインを注意深く観察し、異常の早期発見に努める必要があります。
合併症のコントロール
腎不全に伴う貧血、高血圧、皮膚掻痒感、便秘、骨合併症などの管理も透析療法の重要な目的です。
これらの症状をコントロールすることで、患者を健康な状態に近づけることができます。
看護師は各症状に応じた適切なケアプランを立案し、継続的な支援を行います。
日常生活機能の改善
透析により体調を改善し、食べられる・眠れる・歩ける状態を目指します。
これにより患者の家族復帰、社会復帰が可能になります。
看護師は患者の ADL(日常生活動作)の評価を行い、自立支援に向けたケアを提供します。
生活の質(QOL)向上
仕事、趣味、旅行、家族との交流など、生きる喜びや生甲斐を感じられるような支援も重要な目的です。
透析治療を受けながらも充実した生活を送れるよう、患者の価値観や希望を尊重したケアが求められます。
血液透析の仕組みと実際の治療過程
血液浄化のメカニズム
血液透析では、尿毒素に汚染された血液を体外に取り出し、ダイアライザー(人工腎臓)を通すことで浄化を行います。
この過程で老廃物の除去、余分な水分の除去、電解質濃度の調整、血液pHの改善が同時に行われます。
浄化された血液は再び体内に戻され、この循環を約4時間継続することで十分な浄化効果を得られます。
血液流量の確保
血液透析では、毎分150~250mlという比較的大量の血液を安全に透析回路に送る必要があります。
このためにブラッドアクセスと呼ばれる血液取り出し部位が作成されます。
看護師はアクセス部位の管理と保護に細心の注意を払い、感染予防や血栓形成予防に努めます。
ブラッドアクセスの種類と管理
永久的アクセス
内シャントは最も一般的な永久的アクセスで、動脈と静脈を直接吻合して作成されます。
動脈表在化は動脈を皮下に移動させる方法で、内シャント作成が困難な場合に選択されます。
人工血管は、自己血管が使用できない場合に合成血管を用いて作成されるアクセスです。
一時的アクセス
カテーテルは緊急透析や永久的アクセス作成までのつなぎとして使用されます。
感染リスクが高いため、厳重な管理が必要で、使用期間はできるだけ短くすることが重要です。
看護師はカテーテル挿入部の観察と適切なドレッシング交換を行い、感染予防に努めます。
透析患者への看護ケアのポイント
透析前の準備とアセスメント
透析前には患者の全身状態を詳細にアセスメントし、前回透析後からの体重増加や症状の変化を確認します。
バイタルサインの測定、浮腫の有無、呼吸状態の観察を行い、安全な透析実施のための情報収集を行います。
患者の不安や疑問に対しても丁寧に対応し、治療への協力を得られるよう支援します。
透析中の監視とケア
透析中は継続的なモニタリングが必要で、血圧、脈拍、除水量、血液流量などを定期的に確認します。
急激な血圧低下や不整脈、筋痙攣などの合併症の早期発見と適切な対応が求められます。
患者の快適性を保つため、体位変換や環境調整も重要な看護業務です。
透析後のケアと生活指導
透析後は起立性低血圧の予防のため、ゆっくりとした離床を支援します。
次回透析までの生活指導として、水分制限、食事療法、薬物療法の遵守について説明を行います。
セルフケア能力の向上を目指し、患者自身が病気と治療について理解を深められるよう教育的支援を行います。
透析療法の限界と課題
透析治療は腎機能を補完する優れた治療法ですが、完全に正常な腎機能を置き換えることはできません。
ホルモン産生や代謝調節など、腎臓の持つすべての機能を透析で代替することは困難です。
そのため、残存腎機能の保護や合併症の予防が継続的に重要となります。
まとめ
血液透析療法は腎不全患者の生命を支え、生活の質を向上させる重要な治療法です。
看護師は透析の基本原理を理解し、患者の安全と快適性を確保するための専門的なケアを提供する役割があります。
技術的な側面だけでなく、患者の心理的支援や生活指導も含めた包括的なケアを通じて、患者が透析治療を継続しながら充実した生活を送れるよう支援することが求められます。
透析医療の進歩とともに、看護師も常に最新の知識と技術を身につけ、質の高いケアを提供し続けることが重要です。








