病態
大腿骨は下肢にあり骨盤を支える骨として、歩行、運動、立位の姿勢保持、起立などさまざまな行動で重要な役割を果たします。 大腿骨近位部骨折の中に、大腿骨頭骨折、大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折の4つが含まれますが、この近位部骨折という専門用語は一般の方にはなじみがないので、ここではまとめて大腿骨頚部骨折と呼びます。
若年者では、転落、交通事故、スポーツなどで高エネルギー損傷に伴い大腿骨頚部骨折が発生しますが、骨粗鬆症のある高齢者では尻餅、転倒、脚立からの転落など比較的軽微な力で簡単に発生します。
症状
1)股関節部・臀部の痛み
骨折により、骨周辺組織への刺激と血腫形成により痛みが生じる。 外側骨折の場合、受傷直後より大転子部の著明な圧痛を認める。 嵌入骨折の場合は、股関節部の軽度の痛みのみの事がある。
2)歩行不能
支持性が失われ、痛みのため歩行不能となる。 嵌入骨折の場合は、受傷直後は歩行可能で、1~2日後に歩行不能となることがある。
3)骨折片の転位(骨折端の移動)により、外旋位となる。また、周辺の筋萎縮により下肢の短縮がみられる。
4)内側骨折の場合は、仰臥位、膝関節伸展位で下肢挙上することが不可能となる。外側骨折の場合は、自動運動は不可能となる。
検査・診断
- 単純X線写真:両股関節の正面像と患側股関節の側面像の2方向から撮影する。
- MRI、CT、骨シンチグラム:骨折が明らかでない場合に行う。
- 血液検査:出血所見の有無。赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、CK、AST、LDHなど
- 骨密度検査:骨粗鬆症の有無と程度を調べる。DXA法、QCT法、QUS法がある。
治療
大腿骨頚部骨折の治療法
大腿骨頚部骨折の治療としてはほとんどが手術療法の対象となります。
人工関節置換術
大腿骨頭は骨膜からの血行がないため、治癒力が弱いです。転移の大きい骨折、高齢者などではプレート、ピンなどでの治癒が期待できないため、股関節全体を人工関節に置換します。
ピン
転移の少ない骨折では金属製のピンによる固定が行われます。
プレート固定(金属製の板による固定)
骨折の部位によってはプレートを使用します。
ガンマ形髄内釘
骨折の部位により髄内釘を使用します。