膀胱内留置カテーテルを使用している患者の車椅子移乗・移送は、通常の移乗に加えて特別な配慮と技術が必要です。
この記事では、安全で効率的な移乗手順から注意事項まで、看護学生や看護師の皆さんに向けて詳しく解説します。
患者の安全と快適性を確保しながら、適切な移乗技術を習得しましょう。
膀胱留置カテーテル患者の移乗における基本的理解
膀胱留置カテーテルとは
目的と役割
- 尿路の外科的処置後の管理
- 急性期の正確な尿量測定
- 失禁による皮膚トラブルの予防
- 神経因性膀胱の管理
構成要素
- カテーテル本体(シリコン製またはラテックス製)
- バルーン(膀胱内で固定用)
- 接続チューブ
- 蓄尿バッグ
移乗時の特別な配慮が必要な理由
感染リスクの防止
- 閉鎖式システムの維持
- 細菌の逆行性感染予防
- 無菌操作の重要性
カテーテルトラブルの予防
- 屈曲・閉塞の防止
- 意図しない抜去の予防
- 膀胱・尿道損傷の回避
患者の快適性確保
- 疼痛・不快感の軽減
- プライバシーの保護
- 心理的負担の軽減
移乗前の注意事項と準備
患者状態の確認事項
バイタルサインの確認
- 収縮期血圧90mmHg以上を確認
- 起立性低血圧のリスク評価
- 降圧薬の影響確認
体温測定
- 37.5℃未満であることを確認
- 感染症状の有無
- 全身状態の評価
呼吸状態の確認
- 呼吸数16~22回/分の範囲内
- 呼吸様式の観察
- 酸素飽和度の確認
脈拍の確認
- 脈拍数90回/分未満
- 不整脈の有無
- 脈の強さと性質
全身状態の観察
- チアノーゼの有無
- 爪床色・口唇色の確認
- 意識レベルの評価
- 疼痛の程度
カテーテル関連の確認事項
カテーテルシステムの点検
カテーテルの状態
- 挿入部位の観察(発赤、腫脹、分泌物)
- カテーテルの固定状況
- 屈曲や圧迫の有無
- 長さの適切性
蓄尿バッグの確認
- バッグ内の尿量と性状
- 接続部の緩みやリークの有無
- バッグの位置(膀胱より低位置)
- 容量の残り具合
チューブの状態
- 全長にわたる屈曲の確認
- 圧迫されている箇所の有無
- 接続部の確実性
- 尿流の確認
起立性低血圧予防のための段階的準備
段階的な体位変換
第一段階(30分前)
- ベッドアップ30度に設定
- 患者の反応を観察
- バイタルサインの確認
- 不快症状の有無確認
第二段階(15分前)
- ベッドアップ45度に変更
- 下肢挙上の実施
- 継続的な状態観察
- 血圧・脈拍の再確認
最終確認
- 起立時の準備完了
- 患者の同意確認
- 必要物品の準備完了
- スタッフの役割分担確認
環境整備と物品準備
必要物品の準備
基本物品
- 車椅子(酸素使用時は酸素ボンベ対応型)
- クッションまたは枕
- バスタオル
- 滑り止めマット
カテーテル関連物品
- 蓄尿バッグホルダー
- カテーテル固定テープ(予備)
- ガーゼやタオル(保護用)
- 手袋
心電図モニター関連
- 心電図モニター本体
- 電極の予備
- 延長コード(必要時)
- モニター台またはホルダー
環境の確認
- 移動経路の安全確認
- 床面の清潔・乾燥状態
- 障害物の除去
- 適切な照明の確保
ベッドから車椅子への移乗手順
準備段階
患者への説明
手順の説明
- 移乗の目的と必要性
- 実施する手順の概要
- 患者の協力が必要な点
- 予想される時間
不安への対応
- 患者の疑問や不安の聴取
- 丁寧な説明と安心感の提供
- プライバシーへの配慮
- 痛みや不快感への配慮
車椅子の準備と配置
車椅子の点検
- ブレーキの動作確認
- フットレストの調整
- シートの清潔性確認
- 必要な付属品の装着
配置方法
- ベッドに対して平行に配置
- 移乗しやすい距離の調整
- ブレーキの確実な固定
- 周囲の安全スペース確保
ベッド環境の調整
- ベッドを平らな状態に調整
- 右下肢側のベッド柵を下げる
- 布団と膝下枕の除去
- 必要に応じてベッドの高さ調整
端座位への移行
スタッフの役割分担
第一介助者
- 患者の直接的な支援
- 上体と下肢の誘導
- 安全確保の責任
- 患者とのコミュニケーション
第二介助者
- 心電図モニターの管理
- カテーテルシステムの保護
- ベッド操作
- 環境の安全確保
端座位への手順
患者の体位調整
- 両膝を軽く曲げる
- 右肩甲骨後方から左上肢を支持
- 両膝下に右上肢を挿入
- 上体を起こしながら下肢を誘導
安全な回転動作
- ゆっくりと90度回転
- 患者の呼吸状態を確認
- カテーテルの動きを最小限に
- 端座位での安定性確保
ベッド高の調整
- 患者の両足が床に確実に接地
- 第一介助者が患者を支持
- 第二介助者がベッド操作
- 適切な高さでの固定
立位への移行と車椅子着座
立位前の最終確認
靴の装着確認
- 適切なサイズの靴
- 滑り止めの確認
- 紐やベルトの固定
- 足の位置の調整
介助者の準備
- 第一介助者の足位置(患者の両膝間に左足)
- 患者の腰部への腕回し
- 脇の締め具合の確認
- 患者の協力姿勢確認
心電図・カテーテルの管理
- 第二介助者がモニター保持
- カテーテルの自由な動きを確保
- 蓄尿バッグの適切な位置
- 引っ張り防止の配慮
立位動作の実施
掛け声のタイミング
- 明確な合図の提示
- 患者との同期確認
- ゆっくりとした動作
- 無理のない速度
立位での安定確保
- 患者の状態確認
- めまいや血圧低下の有無
- しっかりとした支持の維持
- 短時間での動作完了
車椅子への着座
回転動作
- 立位での安定確認後
- ゆっくりとした回転
- 第二介助者による車椅子誘導
- 患者の膝後方への車椅子移動
着座の安全確保
- 深い着座の誘導
- 第二介助者による後方支援
- 背もたれへの確実な接触
- 両足のフットレスト配置
車椅子での安定確保
蓄尿バッグの固定
適切な位置への設置
- 車椅子右側への固定
- 膀胱より低い位置の維持
- 引っ張りやねじれの防止
- 歩行時の邪魔にならない位置
固定方法
- 専用ホルダーの使用
- フックやクリップでの固定
- チューブの適切な長さ確保
- 容易に取り外し可能な方法
心電図モニターの配置
- 患者の膝上への安定配置
- 電極の引っ張り防止
- 表示画面の見やすい角度
- 落下防止の配慮
快適性の確保
体位保持の工夫
- 膝下枕による背もたれ調整
- 接触面積の拡大
- 左大腿部横へのバスタオル挿入
- 体の傾きや滑りの防止
保温と尊厳の保持
- 必要に応じた膝掛けの使用
- プライバシーの保護
- 適切な衣服の調整
- 患者の希望への配慮
車椅子での移送技術
移送前の安全確認
車椅子の最終点検
フットレストの確認
- 両足の確実な配置
- 適切な高さ調整
- 足の滑り落ち防止
- 快適性の確認
ブレーキの操作
- 確実な解除
- 動作の滑らかさ確認
- 緊急時のブレーキ使用準備
- 操作方法の再確認
患者状態の最終確認
- 全身状態の安定性
- 疼痛や不快感の有無
- カテーテルシステムの問題なし
- 移送への同意確認
安全な移送技術
基本的な移送姿勢
押し手の位置
- 車椅子ハンドルの確実な握り
- 両手での均等な力配分
- 適切な高さでの操作
- 疲労しにくい姿勢
歩行速度と方向
- ゆっくりとした一定速度
- 急な方向転換の回避
- 段差や障害物の慎重な通過
- 患者の状態に応じた速度調整
継続的な観察
患者状態の監視
- 顔色や表情の変化
- 呼吸状態の確認
- 疲労や不快感の徴候
- バイタルサインの変化
周囲環境への注意
- 前後左右の安全確認
- 他の患者や職員への配慮
- 医療機器との接触回避
- 通路の状況把握
カテーテルシステムの管理
- チューブの引っ張りや圧迫防止
- 蓄尿バッグの位置確認
- 尿流の継続確認
- 異常な動きや音の察知
移送中のトラブル対応
患者の体調変化時
即座の対応
- 安全な場所での停止
- 患者の状態詳細確認
- 必要に応じた医療者への連絡
- 適切な応急処置の実施
カテーテルトラブル時
- 尿流停止の確認
- チューブの屈曲や圧迫チェック
- 蓄尿バッグの状態確認
- 必要に応じた看護師への報告
車椅子からベッドへの移乗
移乗前の準備
車椅子の固定
ブレーキの確実な固定
- 両輪のブレーキ確認
- 固定の確実性確認
- 動かないことの確認
- 患者への説明
環境整備
- 掛け物の除去と整理
- 移乗に邪魔な物品の移動
- 適切な照明の確保
- 床面の安全確認
蓄尿バッグの移動
ベッド柵への固定
- 車椅子からの慎重な取り外し
- ベッド柵への確実な固定
- 適切な高さの維持
- チューブの余裕確保
心電図モニターの管理
- 落下防止の注意
- 患者膝上での安定配置
- 電極の引っ張り防止
- 移乗後の配置準備
立位への移行
患者の準備確認
靴の装着確認
- 脱げていないことの確認
- 滑り止めの効果確認
- 適切な履き具合
- 安全性の最終確認
衣服の調整
- ズボン裾の適切な位置
- 車椅子への引っかかり防止
- 動きやすい状態への調整
- 尊厳への配慮
車椅子の安全対策
- 金属部分のタオル保護
- フットレストの下降
- 患者の足の安全確保
- 接触による外傷防止
介助者の準備
- 第一介助者の適切な足位置
- 患者両膝間への右足挿入
- 両腋窩からの腕挿入
- 腰部への確実な支持
ベッドへの移乗実施
立位動作
同期した動作
- 明確な掛け声による合図
- 患者との同時立ち上がり
- 無理のない速度での実施
- 安全性の最優先
回転とベッドへの着座
- 90度の回転動作
- ベッドエッジへの確実な着座
- 安定性の確認
- 患者の快適性確保
仰臥位への移行
体位変換の技術
- 上体の支持
- 下肢の適切な誘導
- 頭部の安全な支持
- スムーズな体位変換
体位調整
- 体の中心軸の確認
- 適切なボディアライメント
- 圧迫部位の確認
- 快適性の確保
上方移動の技術
二人介助での上方移動
役割分担
- 第一介助者:肩関節と腰部支持
- 第二介助者:腰部(背部)と両膝支持
- 息を合わせた同期動作
- 患者への説明と協力要請
安全な移動技術
- 摩擦軽減のための工夫
- 適切な力の配分
- 脊椎の保護
- カテーテルシステムの保護
移乗後の環境整備
ベッド環境の調整
ベッドアップ
- 患者の希望する角度
- 呼吸の楽な体位
- カテーテルの自然な位置
- 心電図モニターの見やすい配置
寝具の整備
- 布団の適切な掛け方
- 保温と快適性の確保
- しわや異物の除去
- 清潔性の維持
カテーテルシステムの最終確認
- 挿入部の状態確認
- チューブの屈曲や圧迫の有無
- 蓄尿バッグの適切な位置
- 尿流の正常性確認
移乗中止基準と判断
バイタルサインによる中止基準
血圧異常
収縮期血圧90mmHg以下
- 循環状態の不安定
- 起立性低血圧のリスク
- ショック状態の可能性
- 医師への報告必要
対応方法
- 移乗の即座中止
- 患者の安全確保
- バイタルサイン再測定
- 医療者への報告
体温異常
37.5℃以上の発熱
- 感染症の可能性
- 全身状態の不安定
- 体力消耗のリスク
- 合併症のリスク増大
対応方法
- 移乗の延期検討
- 発熱の原因検索
- 感染予防策の徹底
- 医師の判断を仰ぐ
呼吸・循環器系の異常
呼吸数異常
16~22回/分範囲外
- 呼吸困難の徴候
- 酸素化不良の可能性
- 心肺機能の不安定
- 運動耐性の低下
脈拍異常
90回/分以上の頻脈
- 心負荷の増大
- 循環動態の不安定
- 不整脈の可能性
- 運動制限の必要性
外観上の異常徴候
チアノーゼの出現
中心性チアノーゼ
- 口唇、舌の青紫色変化
- 重篤な酸素化障害
- 緊急対応の必要性
- 酸素療法の検討
末梢性チアノーゼ
- 爪床、手指の変色
- 循環不全の徴候
- 体温低下の可能性
- 保温対策の必要性
爪床色・口唇色の異常
- 貧血や循環障害の徴候
- 全身状態の悪化
- 輸血の必要性検討
- 継続的な観察の重要性
緊急時の対応プロトコル
即座の対応
患者の安全確保
- 安定した体位の確保
- 気道確保の実施
- バイタルサインの確認
- 意識レベルの評価
医療チームへの連絡
- 看護師への即座報告
- 医師への連絡
- 必要に応じた救急対応
- 記録の詳細作成
継続的な観察
- 5分間隔でのバイタル測定
- 症状の変化記録
- 家族への状況説明
- 治療方針の確認
安全管理と感染予防
カテーテル関連感染予防
閉鎖式システムの維持
接続部の管理
- 不必要な開放の回避
- 接続部の清潔保持
- 確実な接続の確認
- 定期的な点検実施
無菌操作の徹底
- 手指衛生の徹底
- 必要時の手袋着用
- 清潔野の確保
- 汚染予防の配慮
カテーテル挿入部のケア
日常的な観察
- 発赤、腫脹の有無
- 分泌物の性状確認
- 疼痛の程度評価
- 固定状態の確認
清潔ケア
- 適切な清拭方法
- 消毒薬の適正使用
- 固定テープの交換
- 皮膚トラブルの予防
移乗時の外傷予防
転倒・転落防止
環境安全の確保
- 床面の乾燥状態維持
- 障害物の除去
- 適切な照明確保
- 滑り止めマットの使用
介助技術の向上
- 正しい体の使い方
- 患者の能力活用
- 無理のない動作
- チームワークの重視
カテーテル損傷防止
引っ張り防止
- 十分な長さの確保
- 動きの予測と対応
- 固定位置の工夫
- チューブの保護
圧迫・屈曲防止
- 体位による圧迫回避
- 車椅子部品との接触防止
- 適切なルート確保
- 定期的な位置確認
患者・家族への説明と教育
事前説明の重要性
手順の詳細説明
移乗の目的
- リハビリテーションの意義
- 合併症予防の効果
- QOL向上への寄与
- 回復促進の効果
実施手順の概要
- 段階的な説明
- 患者の役割説明
- 所要時間の目安
- 協力ポイントの明示
安全対策の説明
- 実施される安全確認
- 中止基準の説明
- 緊急時の対応
- 患者の不安軽減
患者の心理的支援
不安への対応
恐怖心の軽減
- 十分な説明による理解促進
- 過去の成功体験の活用
- 段階的な慣れの促進
- 信頼関係の構築
自尊心の保護
- 能力の認識と活用
- 自立性の尊重
- プライバシーの配慮
- 尊厳のある関わり
コミュニケーション技術
- 分かりやすい言葉使い
- 傾聴姿勢の維持
- 非言語的コミュニケーション
- 共感的な態度
家族への指導
移乗技術の指導
基本技術の習得
- 安全な支持方法
- 患者との連携
- 危険予知能力
- 緊急時対応
注意点の理解
- カテーテル管理
- 感染予防策
- 中止基準の認識
- 医療者への連絡方法
継続的な支援
- 在宅での実践指導
- 定期的な技術確認
- 相談体制の確立
- 情報提供の継続
記録と評価
移乗記録のポイント
実施記録
基本情報
- 実施日時
- 参加スタッフ
- 患者の状態
- 使用した機器・物品
実施内容
- 実施した手順
- 患者の反応
- 発生した問題
- 対応した内容
評価記録
目標達成度
- 計画通りの実施可能性
- 患者の協力度
- 安全性の確保
- 快適性の確保
課題と改善点
- 技術的な課題
- システム上の問題
- 環境の改善点
- 教育の必要性
継続的な質改善
技術向上のための取り組み
定期的な研修
- 移乗技術の再確認
- 新しい技術の習得
- 事故事例の検討
- チームワーク向上
設備・環境の改善
- 車椅子の機能向上
- 移乗用具の充実
- 環境整備の推進
- 安全性の向上
患者満足度の向上
- 患者からのフィードバック
- 家族の意見聴取
- サービス改善への反映
- 継続的な質向上
まとめ:安全で効果的な移乗技術の実践
膀胱留置カテーテルを使用している患者の車椅子移乗・移送は、通常以上の注意と技術が求められる看護技術です。患者の安全と快適性を最優先に、チーム一丸となって取り組むことが重要です。
重要なポイントの再確認
安全性の確保
- 十分な事前準備と確認
- 適切な中止基準の遵守
- チームワークによる連携
- 継続的な状態観察
感染予防の徹底
- 閉鎖式システムの維持
- 無菌操作の実践
- 適切なケアの実施
- 早期異常発見
患者中心のケア
- 個別性の尊重
- 十分な説明と同意
- 心理的支援
- 尊厳の保持
技術の向上
- 継続的な学習
- 実践での経験蓄積
- チーム内での情報共有
- 質改善への取り組み
看護学生や看護師の皆さんは、この移乗技術を通じて、患者の安全と快適性を確保しながら、ADLの維持・向上に貢献できる専門職として成長していきましょう。
一つひとつの手順を丁寧に実践し、患者にとって最良の結果を得られるよう、継続的な技術向上に努めてください。








