糖尿病患者の看護過程作成に悩んでいる看護学生の皆さん、こんにちは。
ゴードンの11の機能的健康パターンを使った糖尿病の看護過程は、情報量が多く優先順位の判断が難しいため、多くの学生が苦戦するテーマです。
本記事では、2型糖尿病で入院した60代女性の架空事例を用いて、ゴードンの各パターン別にアセスメントのポイントと看護問題の導き方を具体的に解説します。
この記事を読むことで、糖尿病患者の全体像把握から看護計画立案までの流れが理解でき、実習記録作成の参考になるはずです。
事例紹介|2型糖尿病で血糖コントロール不良となった60代女性
患者プロフィール
B氏、65歳女性、元パート勤務(現在は退職)
診断名:2型糖尿病、糖尿病性神経障害、脂質異常症
既往歴:なし
家族構成:夫(68歳)との2人暮らし、長女は結婚し県外在住
入院の経緯
3年前の健康診断で血糖値の異常を指摘され、2型糖尿病と診断されました。
当初は内服治療と食事療法で経過観察していましたが、自己判断で薬を飲んだり飲まなかったりすることが多く、血糖コントロールが不良でした。
最近、両足のしびれと冷感が出現し、転倒しそうになることが増えたため、精査加療目的で入院となりました。
入院時データ
身長152cm、体重68kg(BMI 29.4)
空腹時血糖198mg/dL、HbA1c 9.2%
血圧142/88mmHg、総コレステロール245mg/dL
BUN 18mg/dL、Cre 0.9mg/dL
尿糖(3+)、尿蛋白(−)
生活習慣
喫煙:なし
飲酒:なし
食事:1日3食だが間食が多い、特に和菓子を好む
運動:ほとんどなし、買い物時に少し歩く程度
ゴードン11パターン別アセスメントのポイント
健康知覚-健康管理パターン
主観的データ(S情報)
薬は飲んだり飲まなかったりです、調子が良ければ飲まなくても大丈夫かなと思って
足がしびれて怖いです、階段で転びそうになりました
甘いものが好きで、つい食べてしまいます
娘が遠くにいるので、夫と2人で何とかしないといけないんですけど
客観的データ(O情報)
3年前に糖尿病と診断されるも服薬アドヒアランス不良
HbA1c 9.2%と血糖コントロール不良
両足のしびれと冷感あり、糖尿病性神経障害を発症
間食習慣があり、特に和菓子を好む
アセスメントの要点
B氏は糖尿病と診断されてから3年が経過していますが、服薬アドヒアランスが不良で血糖コントロールができていません。
自己判断で内服を中断する行動から、糖尿病という疾患や治療の必要性に対する理解が不足していると考えられます。
すでに糖尿病性神経障害を発症しており、両足のしびれや転倒リスクが生じている状況です。
間食習慣、特に糖質の多い和菓子を好むことが血糖コントロール不良の一因となっています。
夫との2人暮らしで娘は県外在住のため、退院後の生活管理には夫の協力が不可欠であり、夫婦で疾患理解を深める必要があります。
栄養-代謝パターン
主観的データ(S情報)
食事は普通に3食食べています
和菓子が好きで、お茶の時間に必ず食べます
夫が甘いものを買ってきてくれるので、断れなくて
入院してから食事の量が少なくて物足りないです
客観的データ(O情報)
BMI 29.4と肥満
空腹時血糖198mg/dL、HbA1c 9.2%
総コレステロール245mg/dL
1日3食摂取、間食は和菓子を1日2回程度
入院後は1600kcal/日の糖尿病食を提供
病院食は完食しているが、不満の表情あり
アセスメントの要点
BMI 29.4と肥満があり、間食習慣が肥満と血糖コントロール不良の主要因となっています。
和菓子は糖質が多く、血糖値を急激に上昇させるため、間食の内容と頻度の見直しが必要です。
夫が甘いものを買ってくる習慣があり、B氏も断れない状況から、夫婦で食生活を改善する必要性が示唆されます。
入院後の食事量に対する不満があり、退院後にリバウンドする可能性があるため、段階的な食習慣の変容が求められます。
標準体重は約50kgであり、現在より18kg程度の減量が望ましいですが、急激な減量ではなく継続可能な食事療法の確立が重要です。
排泄パターン
主観的データ(S情報)
トイレが近くて、夜中に2〜3回は起きます
便は普通に出ています
客観的データ(O情報)
排尿約8〜10回/日、夜間排尿2〜3回
排便1回/日(褐色・普通便)
尿糖(3+)、尿蛋白(−)
BUN 18mg/dL、Cre 0.9mg/dL(腎機能は正常範囲)
アセスメントの要点
高血糖による浸透圧利尿のため、日中の排尿回数が8〜10回と多く、夜間も2〜3回の排尿があります。
夜間頻尿は睡眠の質を低下させ、日中の疲労感や活動性の低下につながる可能性があります。
腎機能は現時点で正常範囲内にあり、尿蛋白も陰性であることから、糖尿病性腎症への進行はまだ見られていません。
排便は規則的で問題ありませんが、今後、糖尿病神経障害が進行すると便秘のリスクがあるため、継続的な観察が必要です。
血糖コントロールが改善されれば、頻尿症状も軽減すると考えられます。
活動-運動パターン
主観的データ(S情報)
足がしびれて歩きにくいです
運動は苦手で、ほとんどしていません
買い物に行く時に少し歩くくらいです
最近、疲れやすくなりました
客観的データ(O情報)
運動習慣:ほとんどなし、買い物時に週2〜3回、徒歩15分程度
日常生活動作は自立しているが、動作緩慢
両足のしびれと冷感あり
バイタルサイン:BP 142/88mmHg、HR 78回/分、RR 18回/分
筋力低下あり、特に下肢筋力の低下が顕著
アセスメントの要点
運動習慣がほとんどなく、肥満と筋力低下が見られます。
糖尿病性神経障害により両足にしびれと冷感があり、歩行時の不安定感や転倒リスクが高まっています。
運動は血糖コントロールとインスリン感受性の改善に有効ですが、神経障害がある状態での過度な運動は足部潰瘍のリスクもあるため、適切な運動強度の設定が必要です。
疲労感が強いことから、急激な運動開始ではなく、段階的に活動量を増やす計画が望ましいです。
日常生活動作は自立していますが、転倒予防のための環境整備と歩行時の注意喚起が重要です。
睡眠-休息パターン
主観的データ(S情報)
夜中にトイレで2〜3回起きるので、ぐっすり眠れません
朝起きても疲れが取れていない感じがします
足がしびれてジンジンするので、寝つきが悪い日もあります
客観的データ(O情報)
夜間排尿2〜3回
入眠に時間がかかる様子
日中、傾眠傾向が見られることあり
アセスメントの要点
夜間頻尿により睡眠が中断され、睡眠の質が低下しています。
足のしびれ感が睡眠を妨げる要因となっており、神経障害症状のコントロールが睡眠改善にも重要です。
睡眠不足は血糖コントロールを悪化させる要因にもなるため、悪循環を断ち切る必要があります。
日中の傾眠は夜間の睡眠不足が影響していると考えられ、生活リズムの調整も必要です。
血糖コントロールが改善し、頻尿が軽減されれば、睡眠の質も向上すると期待されます。
認知-知覚パターン
主観的データ(S情報)
両足がしびれてジンジンします
足の裏の感覚が鈍い気がします
足が冷たく感じます
物を踏んでも気づかないことがあります
客観的データ(O情報)
糖尿病性神経障害あり
両足にしびれ感、冷感あり
触覚・痛覚の低下あり
温度感覚の低下あり
視力・聴力に異常なし
アセスメントの要点
糖尿病性神経障害により、両足にしびれ、冷感、感覚鈍麻が出現しています。
感覚低下により、足部の外傷や熱傷に気づきにくく、足病変のリスクが高い状態です。
物を踏んでも気づかないという訴えから、保護感覚の低下が示唆され、足底の観察と足のケアに関する指導が必要です。
現時点で視覚や聴覚に異常はありませんが、血糖コントロール不良が続けば網膜症のリスクもあるため、定期的な眼科受診の必要性を説明します。
神経障害の進行予防のため、血糖コントロールの改善が最優先課題です。
自己知覚-自己概念パターン
主観的データ(S情報)
薬を毎日飲むのは面倒で、つい忘れてしまいます
甘いものを我慢するのは辛いです
このまま悪くなったらどうしようと不安です
夫に迷惑をかけたくないです
客観的データ(O情報)
服薬アドヒアランス不良
治療への消極的な態度
病状悪化への不安を表現
夫への負担を気にする発言あり
アセスメントの要点
B氏は治療の必要性を理解しながらも、日々の服薬や食事制限を継続することに困難を感じています。
面倒という表現から、自己管理に対する自信の低さが伺えます。
病状悪化への不安を抱えながらも、具体的な行動変容につながっていない状況です。
夫への負担を気にする発言があり、家族に迷惑をかけたくないという思いが、治療への動機づけになる可能性があります。
小さな成功体験を積み重ねることで、自己効力感を高める支援が必要です。
役割-関係パターン
主観的データ(S情報)
夫と2人暮らしで、家事は私がやっています
娘は結婚して遠くにいるので、なかなか会えません
夫が心配してくれています
近所の人とたまにお茶を飲みます
客観的データ(O情報)
夫(68歳)との2人暮らし
長女は県外在住、孫が2人
家事は主にB氏が担当
夫は協力的な様子
アセスメントの要点
B氏は夫との2人暮らしで、主に家事を担当しており、家庭内での役割を持っています。
娘は県外在住で日常的なサポートは期待できないため、夫の協力が重要です。
夫は協力的な様子であり、甘いものを買ってくる習慣を変えることで、B氏の食生活改善をサポートできる可能性があります。
近所との交流もあり、社会的孤立はありませんが、糖尿病管理について相談できる仲間がいると、継続的な治療の助けになります。
退院後は夫婦で疾患管理に取り組めるよう、夫への教育も並行して行う必要があります。
セクシュアリティ-生殖パターン
主観的データ(S情報)
特記すべき訴えなし
客観的データ(O情報)
65歳女性、閉経後
2児の母
特記すべき問題なし
アセスメントの要点
閉経後であり、生殖機能に関する特別な問題は見られません。
セクシュアリティに関する訴えもなく、現時点で看護問題はありません。
コーピング-ストレス耐性パターン
主観的データ(S情報)
甘いものを食べると落ち着きます
ストレスがたまると、つい食べてしまいます
夫とケンカした時は、甘いものを食べて気を紛らわせます
運動は続かないんです
客観的データ(O情報)
間食習慣あり、特にストレス時に増加
和菓子を1日2回程度摂取
運動習慣の継続困難
ストレス対処として食行動に依存
アセスメントの要点
B氏はストレスへの対処方法として、甘いものを食べることに依存しています。
この不適切なコーピングが、血糖コントロール不良と肥満の悪化につながっています。
運動も続かないという発言から、ストレス対処の選択肢が限られており、新しい対処方法の獲得が必要です。
夫との関係性の中でストレスを感じることもあり、夫婦でのコミュニケーション改善も有効かもしれません。
食べる以外のストレス解消方法、例えば趣味活動や軽い運動、友人との交流などを見つける支援が重要です。
価値-信念パターン
主観的データ(S情報)
家事は私の役目だと思っています
夫に迷惑をかけたくないです
孫の成長を見守りたいです
健康でいたいとは思っています
客観的データ(O情報)
家事を自分の役割と認識
家族を大切にする価値観
健康への意識はあるが行動に結びついていない
アセスメントの要点
B氏は家事を自分の役割と認識しており、家庭内での役割を果たすことに価値を置いています。
夫への負担を避けたいという思いや、孫の成長を見守りたいという願いは、治療への動機づけとして活用できます。
健康でいたいという意識はありますが、具体的な行動変容につながっていない状況です。
家族のため、孫のために健康を維持するという価値観を軸に、治療の必要性を再認識させる支援が効果的です。
B氏の価値観を尊重しながら、小さな目標設定と達成を繰り返すことで、行動変容を促します。
看護問題の優先順位と看護計画の立案
ゴードンの11パターンでアセスメントを行った結果、以下の看護問題が抽出されます。
優先度の高い看護問題
血糖コントロール不良に関連した健康管理能力の低下
間食習慣と運動不足に関連した栄養摂取過剰
糖尿病性神経障害に関連した転倒リスク状態
看護目標の例
退院時までに、HbA1cが8.0%以下に低下する
退院までに、間食を1日1回以内にコントロールできる
退院までに、足部の観察方法とケア方法を習得できる
看護計画(OP・TP・EP)の例
OP:血糖値、HbA1c、体重、食事摂取状況、間食の有無、足部の状態、神経障害症状の観察
TP:血糖測定の実施、糖尿病食の提供、足浴の実施、転倒予防の環境整備
EP:糖尿病の病態と合併症について説明、間食の影響について説明、足のケア方法の指導、夫を含めた栄養指導の実施
まとめ|糖尿病看護過程のポイント
糖尿病患者の看護過程をゴードンで展開する際は、単に血糖値のコントロールだけでなく、患者の生活習慣、価値観、家族関係を総合的にアセスメントすることが重要です。
本事例のB氏のように、疾患の理解不足や不適切なコーピング、家族のサポート体制などが複雑に絡み合っている場合、優先順位をつけて段階的に介入する必要があります。
看護学生の皆さんは、このような架空事例を参考にしながら、実際の患者さんの個別性を大切にした看護過程を展開してください。
糖尿病看護は長期的な視点が必要であり、患者さんが退院後も継続できる現実的な目標設定が成功の鍵となります。








