病態
脳は、3層の膜(まく)でおおわれています。脳の表面を直接おおっている膜を軟膜(なんまく)といい、その上をくも膜が、さらにその上を硬膜(こうまく)がおおっています。 くも膜と軟膜の間には、くも膜下腔(まくかくう)というすき間(腔(くう))があって、ここには、脳脊髄液(のうせきずいえき)が循環しています。血管が破れ、このくも膜下腔に出血するのが、くも膜下出血です。 くも膜下出血も脳卒中(のうそっちゅう)の一種ですが、脳卒中のなかに占めるくも膜下出血の割合は12%で、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血(のうしゅっけつ)と比べると頻度はそう高くはありません。しかし、生命にかかわる危険が高く、心臓まひなどを含めた全突然死の4.7%を占めます。 また、中高年のいわゆる過労死(かろうし)の原因の1つとしても、しばしば取り上げられています。
症状
最も典型的な症状は、ほとんどが激しい突然の頭痛を呈します。さらに、出血の程度により、脳圧が上がり、呼吸が止まって即死する方、意識障害を起こして救急車で搬送される方から、比較的軽症で、頭痛のみを訴えて日中の外来を歩いて受診する方まで重症度は様々です。軽症例を除きますと、通常は救急車で病院に搬送されることが多く、しばしば脳圧上昇を示す血圧上昇や嘔吐がみられます。動脈瘤が再破裂を起こすと通常は重症化します。消化管出血や肺水腫などを合併することもあります。
検査・診断
くも膜下出血の診断は通常は頭部CTによってなされます。くも膜下出血と診断した場合、前述のように外傷性でなければ、最も考えられるのが脳動脈瘤の破裂ですので、脳動脈瘤を探す作業に移ります。その方法は、造影剤を用いた特殊なCT検査(3D-CTA)、MRA、脳血管撮影があります。
治療
くも膜下出血は、発症後1時間ぐらいの間の状態の変化が、その後の病状を左右することが多いものです。また、6時間以内に再び出血することも少なくありません。したがって救急車を呼ぶなどして、患者さんを一刻も早く脳神経外科のある病院へ運ぶことが必要です。乱暴な運び方をしてはいけないのはもちろん、手当をしながら静かに運ばなければいけないので、救急車の出動を依頼したほうがよいのです。 病院では、呼吸、血液循環などの全身状態を改善する治療を開始し、興奮や苦痛を除いて安静をはかります。血圧や脳圧を下げる薬剤も使用します。さらに脳動脈瘤など、出血の原因を探す検査が行なわれます。