病態
脳は、4本の脳動脈(左右2本の内頸動脈系と椎骨動脈系)を介して送られてくる血液から、酸素と栄養素の供給を受け、これをエネルギー源として活動している。 4本の脳動脈は、頭蓋内でいくつにも枝分かれして細くなり、脳のすみずみにまで血液を供給する。これらの動脈のどこかが破れたり、詰まったりし、血液が流れなくなると、その動脈から血液の供給を受けていた脳実質(脳そのもの)が障害され、手足のまひや感覚障害、言語障害、失語症などのほか、意識障害や呼吸困難のために生命に危険をおよぼす症状が出現する。 脳梗塞では、動脈の内腔が血栓(血液のかたまり)によって詰まり、その先へ血液が流れなくなってしまう。詰まった部位より先の脳は、酸素不足、栄養不良におちいって障害を受け、さまざまな神経症状が出現する。 脳梗塞は原因となる血栓の生じ方により、さらにつぎのように分けられる。
1.脳血栓症
動脈硬化により、脳動脈の内腔に血栓が生じ、血管を閉塞させるものである。そのおこり方や出現する神経症状、成因、治療方法、予後などが異なるため、最近では、太い脳動脈がつまるアテローム血栓性脳梗塞と、脳の深部にある細い動脈がつまるラクナ梗塞に分けて呼ばれている。
2.脳塞栓症
脳以外の部位(心臓のことが多い)に発生した血栓などが脳の動脈まで流れてきて、突然、内腔をつまらせてしまうものである。
症状
脳梗塞の前兆として、「手足に力が入らない」「重いめまいがする」「いつもはない激しい頭痛がする」「ふつうの頭痛とは明らかにちがう感じの頭痛が、突然起こった」「特に手足やからだの半身が、突然しびれた」「ろれつが回らない、言葉が一瞬でてこなくなる」「片側の視界が一時的に真っ暗になる」「物が二重にみえる」などの症状があらわれる。
まひ・しびれは「体の片側」に起きるのが特徴で、症状は1~2分でおさまる場合もあれば、1時間程度続くこともある。また「顔のゆがみ」や「口もとのしびれ」が前兆として現れることもある。これらは「一過性脳虚血性発作(TIA)」と呼ばれ、小さな血栓が一時的に血管を詰まらせることで起きる症状である。
検査・診断
- CTを行い脳出血との鑑別を行う
- MRIでは発症数時間で脳梗塞部位がわかる
治療
脳梗塞は発作後、病状が不安定な急性期と、それ以上は進行しなくなる安定期とに分けられる。 治療は、ほとんどが内科的治療である。太い脳血管(内頸・中大脳・脳底動脈)に血栓がつまって6時間以内であれば、管(カテーテル)を血管内に入れて、つまった血管内の血栓を薬で溶かす特殊な治療が行なわれることがある。この治療は、発病後早く行なえば効果が期待できるが、病院の設備、専門医の人数、受け入れ体制、時間的制約などのために、いつでも、どこでも受けられるとはかぎらない。 また、内頸動脈に70%以上の狭窄がある場合は、熟練した外科医が細くなっている内頸動脈の傷ついた内膜を切り取ることもある(頸動脈内膜摘除術)。 脳梗塞をおこしてから2週間以内を急性期と呼ぶ。 急性期の治療は、全身状態を改善させるための全身管理と、脳の病変を改善させるための薬物療法が中心となる。