看護学生や新人看護師の皆さん、患者さんのアセスメントで何から手をつけていいか分からず悩んでいませんか。
ヘンダーソンの14項目は、看護の基礎となる理論であり、患者さんの全体像を把握するために欠かせないフレームワークです。
この記事では、ヘンダーソン14項目チェックリストの具体的な使い方や各項目のポイントを分かりやすく解説していきます。
- ヘンダーソン看護理論の基礎知識
- 正常に呼吸する:第1項目の観察ポイント
- 適切に飲食する:第2項目の評価方法
- あらゆる排泄経路から排泄する:第3項目の観察
- 身体の位置を動かし良い姿勢を保持する:第4項目
- 睡眠と休息をとる:第5項目の重要性
- 適切な衣類を選び着脱する:第6項目
- 体温を生理的範囲内に維持する:第7項目
- 身体を清潔に保ち身だしなみを整える:第8項目
- 環境の危険因子を避ける:第9項目
- 他者とコミュニケーションをもつ:第10項目
- 自分の信仰に従って礼拝する:第11項目
- 達成感をもたらす仕事をする:第12項目
- レクリエーションに参加する:第13項目
- 正常な発達と健康を導く学習をする:第14項目
- まとめ:ヘンダーソン14項目を活用した看護実践
ヘンダーソン看護理論の基礎知識
ヴァージニア・ヘンダーソンが提唱した看護理論は、患者の基本的欲求を14の項目に分類し、看護師がどのように援助すべきかを示したものです。
この理論の特徴は、人間を生物学的・心理的・社会的な統合体として捉え、患者の自立を目指す点にあります。
看護過程を展開する際、ヘンダーソンの14項目を用いることで、患者さんの状態を体系的に観察し、適切な看護計画を立案できるようになります。
正常に呼吸する:第1項目の観察ポイント
呼吸は生命維持に最も重要な機能です。
主観的情報としては、患者さんの呼吸困難感や酸素療法への反応、喫煙習慣の有無などを確認します。
客観的情報では、呼吸音・呼吸数・呼吸リズムを観察し、痰の量や色、性状もチェックします。
チアノーゼの有無や苦痛表情、動脈血ガス分析のデータなども重要な指標となります。
呼吸器疾患の既往歴や職場環境による影響も見逃せません。
室内環境については、温度や湿度、換気状態が適切かどうかも評価項目に含まれます。
適切に飲食する:第2項目の評価方法
栄養摂取は健康維持の基本です。
患者さんの食欲や嗜好、食物アレルギーの有無を聴取し、普段の食習慣との違いを把握します。
身長・体重からBMIを算出し、血液検査データで栄養状態を評価します。
経口摂取が可能か、経管栄養が必要か、嚥下状態はどうかといった観察も欠かせません。
食事介助の程度や義歯の使用状況、口腔内の状態もチェックポイントです。
静脈栄養やIVHを実施している場合は、ルート管理や感染徴候の観察も重要になります。
あらゆる排泄経路から排泄する:第3項目の観察
排泄は人間の基本的な生理機能であり、プライバシーへの配慮が必要な領域です。
排便・排尿の回数や間隔、排泄物の性状を観察します。
残便感や残尿感、腹部膨満感などの訴えにも注意を払います。
排泄動作が自立しているか、トイレまでの移動は可能か、プライバシーが守られているかも評価します。
発汗や月経の状態、ドレーンからの排液状況なども排泄の項目に含まれます。
身体の位置を動かし良い姿勢を保持する:第4項目
体位変換や姿勢保持は、褥瘡予防や肺炎予防に直結します。
患者さんが自力で体位変換できるか、どのような姿勢を取ることが多いかを観察します。
安静度の指示や禁止されている体位、関節可動域の制限についても確認が必要です。
褥瘡の有無や皮膚の発赤、圧迫痕の観察も欠かせません。
車椅子や歩行器、杖などの補助具が適切に使用されているかもチェックします。
リハビリテーションの進捗状況や病棟でのリハビリ実施状況も評価項目です。
睡眠と休息をとる:第5項目の重要性
質の良い睡眠は回復力を高めます。
入眠困難や中途覚醒、熟睡感の欠如などの不眠症状を聴取します。
実際の睡眠時間や睡眠パターン、睡眠薬の使用状況を把握します。
睡眠を妨げる環境要因として、騒音や照明、室温なども評価対象です。
疼痛や呼吸困難などの身体症状が睡眠に影響していないかも確認します。
適切な衣類を選び着脱する:第6項目
衣類の選択と着脱は、患者の自立度や快適性を示す指標です。
季節や室温に応じた適切な衣類を選択できているか観察します。
着脱動作が自立しているか、介助が必要な場合はどの程度かを評価します。
治療上の配慮として、点滴ルートや創部への負担がない衣類かどうかもチェックします。
清潔な衣類を定期的に交換できているか、洗濯は誰が行っているかも確認事項です。
体温を生理的範囲内に維持する:第7項目
体温調節は生命維持に不可欠な機能です。
体温測定値と発熱や低体温の有無を確認します。
発汗や悪寒戦慄、顔色の変化などの身体症状を観察します。
室温や湿度などの環境条件が適切に調整されているか評価します。
衣類や寝具の素材が季節に適しているか、保温性や通気性は十分かもチェックします。
身体を清潔に保ち身だしなみを整える:第8項目
清潔保持は感染予防と自尊心の維持につながります。
皮膚や毛髪、爪、口腔などの清潔状態を観察します。
入浴やシャワー浴の頻度、清拭の実施状況を把握します。
清潔行動が自立しているか、介助が必要な場合は誰がどのように行っているかを確認します。
不潔による皮膚トラブルや口腔内の問題が生じていないかもチェックポイントです。
患者さん自身の清潔に対する価値観や習慣も尊重することが大切です。
環境の危険因子を避ける:第9項目
安全な療養環境の提供は看護の重要な役割です。
転倒や転落のリスク要因を評価し、環境整備の状況を確認します。
ベッドの高さや柵の使用、床の濡れや障害物の有無をチェックします。
感染症のリスク管理として、手指衛生や隔離の必要性を判断します。
精神状態による危険行動の可能性についても評価が必要です。
同室者との関係性やトラブルの有無も安全管理の観点から重要です。
他者とコミュニケーションをもつ:第10項目
コミュニケーションは人間の基本的欲求です。
言語的コミュニケーションが可能か、筆談や文字盤などの代替手段が必要かを確認します。
表情や身振り、心拍数の変化など非言語的コミュニケーションも観察します。
面会者の有無や頻度、面会時の様子も評価項目です。
気管切開や失語症など、コミュニケーションを阻害する要因がないかチェックします。
自分の信仰に従って礼拝する:第11項目
宗教的ニーズへの配慮は全人的ケアに欠かせません。
患者さんの信仰や価値観を尊重し、礼拝の機会を確保できているか確認します。
宗教上の食事制限や断食、安息日などの習慣への対応状況を把握します。
プライバシーの保護や個人情報の守秘も重要な評価ポイントです。
患者の自己決定権が尊重され、思想の強要がないかもチェックします。
達成感をもたらす仕事をする:第12項目
生産的活動への参加は生きがいにつながります。
患者さんの職歴や興味、趣味について情報収集します。
作業療法やリハビリテーションへの参加状況と意欲を評価します。
活動から得られる達成感や充実感の有無を観察します。
離職期間や復職への希望、経済的な心配事なども把握します。
レクリエーションに参加する:第13項目
余暇活動は心身のリフレッシュに役立ちます。
趣味や娯楽活動の習慣について聴取します。
病棟レクリエーションや作業療法への参加状況を確認します。
テレビや読書、音楽鑑賞などの環境が整っているか評価します。
外出や外泊の機会、家族や友人との交流状況もチェックします。
正常な発達と健康を導く学習をする:第14項目
健康教育は患者の自己管理能力を高めます。
疾患や治療法に関する理解度を確認します。
服薬管理や生活習慣の改善について、患者の動機づけと実践状況を評価します。
健康指導の内容が患者に適しているか、理解を阻害する要因はないかをチェックします。
家族の協力体制や社会資源の活用状況も把握します。
患者の学習意欲や前向きな姿勢、自己決定の状況も重要な観察ポイントです。
まとめ:ヘンダーソン14項目を活用した看護実践
ヘンダーソンの14項目チェックリストは、患者さんの全体像を把握し、個別性のある看護を提供するための強力なツールです。
各項目について主観的情報と客観的情報を丁寧に収集することで、患者さんのニーズを的確に捉えることができます。
看護過程の展開においては、この14項目を基に情報を整理し、看護問題を明確化していきます。
実習や臨床現場では、このチェックリストを活用しながら、患者さん一人ひとりに寄り添った看護実践を目指しましょう。
繰り返し使用することで、アセスメント能力が向上し、より質の高い看護を提供できるようになります。








