拡張型心筋症は若年層から中高年まで幅広い年齢層で発症する深刻な心疾患です。
この病気は心臓のポンプ機能が徐々に低下し、最終的には重度の心不全を引き起こす可能性があります。
本記事では拡張型心筋症の病態から具体的な症状、最新の治療法、そして日常生活での注意点まで詳しく解説していきます。
拡張型心筋症とは何か
拡張型心筋症は左心室のポンプ機能が障害され、心臓が徐々に拡大していく病気です。
うっ血性心不全の約3分の1がこの病気によって引き起こされており、決して珍しい疾患ではありません。
多くの場合は原因不明の特発性とされていますが、約20から30パーセント程度は家族性であることが分かっています。
遺伝形式は常染色体優性遺伝が多く、血縁者に同じ病気を持つ人がいる場合は注意が必要です。
また急性のウイルス感染後の免疫反応が原因となるケースもあると考えられています。
発症年齢は20代から30代が多いという特徴があります。
青年期には運動中の突然死が問題となることがあり、中高年以降では症状が現れてから5年以内に半数が死亡するという厳しい予後が報告されています。
心臓の構造と位置
心臓は胸壁の胸骨と肋軟骨の後ろに位置し、握りこぶしほどの大きさがあります。
左右の肺にはさまれた縦隔という場所にあり、心膜という膜に包まれて保護されています。
心臓の形は丸みを帯びた円錐形で、後方に倒れて左方に傾いているため、円錐形の頂点にあたる心尖は左前下方にあります。
体表から見ると心臓全体の約3分の2が正中線の左側にあり、心尖は第5肋間隙で左乳頭線のやや内側に位置しています。
成人の心臓の重量は200グラムから300グラム程度です。
拡張型心筋症の主な症状
拡張型心筋症ではうっ血性の左心不全と右心不全の症状が徐々に進行します。
数か月から数年にわたって無症状のこともありますが、やがて心不全症状が現れ、進行すると狭心痛や失神が生じることがあります。
心不全の自覚症状として最も多いのは呼吸困難です。
安静時や労作時の呼吸困難、夜間に突然息苦しくなる発作性夜間呼吸困難、横になると苦しく座ると楽になる起坐呼吸などが特徴的です。
咳や喀痰も重要な症状で、ピンク色の泡沫状の痰は肺うっ血や肺水腫のサインとなります。
その他に浮腫、悪心、嘔吐、便秘、食欲不振などの消化器症状も現れることがあります。
身体所見としてはチアノーゼ、網状皮斑、浮腫、腹水、顔色不良、冷汗、頻呼吸、頚静脈怒張などが観察されます。
聴診では肺湿性ラ音、Ⅲ音、Ⅳ音、心雑音、頻脈、不整脈などが確認されることが多いです。
NYHA分類による重症度評価
心不全の重症度はNYHA分類で評価されます。
クラスⅢの患者では通常以下の身体活動で疲労や動悸、呼吸困難、狭心痛が生じる状態となります。
短い平地歩行、家の中の移動、軽い家事などでも息切れを感じるようになり、日常生活に大きな支障をきたします。
診断に必要な検査
拡張型心筋症の診断には複数の検査が必要です。
身体所見では心音でⅢ音やⅣ音が聴取されることが多く、これは心機能低下の重要なサインです。
胸部X線検査では心陰影の拡大が認められ、症状が進行すれば肺うっ血像が見られます。
心電図では洞性頻脈、心房細動、心室期外収縮、広範な非特異的ST変化が認められることが多いです。
心エコー法は最も重要な検査の一つで、左室腔の拡大と左室収縮力の著名な低下を確認できます。
通常は血中のBNPという心不全マーカーの上昇が見られます。
BNPは脳性ナトリウム利尿ペプチドといい、主に心室から分泌されるホルモンです。
その血中濃度は心室の負荷に比例して上昇するため、心不全の診断と重症度評価に非常に有用です。
15分程度で測定できるキットもあるため、呼吸困難で来院した外来患者の診断にも活用されています。
冠状動脈造影法は虚血性心疾患を除外するために有用であり、左室造影法では左室の全体的な収縮低下が認められます。
しばしば僧帽弁閉鎖不全の合併も確認されます。
心内膜心筋生検は二次性心筋症との鑑別に役立ちます。
拡張型心筋症の治療法
拡張型心筋症の治療は心不全の標準的な治療が基本となります。
心腔内にできた血栓による全身性の塞栓症も問題となるため、抗凝固療法が必要になる場合が多いです。
アルコールには心毒性があるため飲酒は控えるべきとされています。
重症例では心室再同期療法や植込み型除細動器の適応となることがあります。
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これらの治療が無効になった場合は心臓移植も選択肢となりますが、日本ではドナー不足から少数にしか行われていないのが現状です。
心不全の急性期治療
急性期の心不全治療では迅速な対応が求められます。
ルート確保の上でループ利尿薬であるラシックスを投与し、余分な水分を体外に排出させます。
血管拡張薬のニトロールを持続投与することで心臓への負担を軽減します。
塩酸モルヒネは不安の軽減と鎮静効果があり、末梢血管拡張による前負荷軽減も期待できます。
必要に応じてカテコールアミン製剤を使用します。
安静、酸素投与、必要時には挿管して人工呼吸管理を行います。
水分制限と適切な食事療法も重要です。
慢性期の管理
慢性期にはループ利尿薬の経口投与、カリウム保持性利尿薬の経口投与が行われます。
ジギタリス製剤、ACE阻害薬、硝酸薬なども病状に応じて使用されます。
看護における重要な観察項目
看護師は患者の状態を細かく観察する必要があります。
呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、息切れの有無と程度を確認します。
前胸部絞扼感やチアノーゼの出現にも注意が必要です。
血液の混じった泡沫状喀痰は肺うっ血や肺水腫の疑いがあるため緊急性が高いサインです。
血圧、心拍数と脈拍を定期的に測定し、脈拍欠損の状態、交互脈、頻脈、徐脈がないか確認します。
冷感、顔面蒼白、末梢冷感は心原性ショックの可能性があるため即座に対応が必要です。
精神的な不安定状態にも注意を払います。
慢性心不全の急性増悪時には頸静脈怒張、消化器症状、肝腫大、中心静脈圧、体重の増加なども重要な観察項目となります。
治療に応じた看護ケア
体位はファーラー位とし、横隔膜を下降させることで換気量の増加を図ります。
人工呼吸器装着時は気道内の分泌物を適切に吸引し、換気障害を最小限にします。
心臓の仕事量を軽減し心拍出量を維持するため、活動、食事内容、水分摂取量に制限が必要となります。
活動制限による日常生活の不足部分を丁寧に支援することが看護師の重要な役割です。
呼吸困難は患者に死の恐怖を与え、治療や処置が緊急に行われるため不安感や恐怖感を増強させます。
そのため患者の言動、表情、行動などを観察し、不安や恐怖に対する心理的支援を行うことが大切です。
利尿薬の使用により電解質バランスに異常をきたしやすくなるため、血液検査の結果に注意します。
日常生活での自己管理
効果的な自己管理が行われるためには、患者や家族が病態や増悪時の服薬の重要性、食事や水分制限、活動制限について十分に理解することが必要です。
心不全の増悪因子の除去と予防に努めることが重要となります。
塩分制限の徹底は最も基本的な食事指導です。
必要な場合は水分制限も行い、栄養バランスの取れた食事を心がけます。
アルコールは原則として禁止され、禁煙の重要性も繰り返し説明する必要があります。
感染予防やインフルエンザの予防接種も大切です。
心不全の程度や心臓の予備能力に応じた生活行動を選択し、適度なレクリエーションなど日常生活での身体活動性を維持します。
服薬管理と服薬継続、定期受診の重要性を理解してもらいます。
患者教育のポイント
再入院を防ぐためには患者が退院後も自分自身の体調をチェックできること、症状増悪時に適切な対処行動をとれるよう教育していくことが重要です。
アドヒアランスが悪いと決めつけず、療養行動がとれなかった理由を患者と一緒に探し出す姿勢が大切です。
長年の生活習慣を変えることは簡単ではないため、医療者側が患者を理解し個人に合わせた指導を行う必要があります。
入院中から記録をつける習慣を身につけることが重要で、急性期を脱し症状が安定したら早期から毎日のバイタルサイン、体重、胸部症状、浮腫などを患者と一緒にチェックし記録していきます。
指導したことをすべて守ってもらうのは難しいため、まずは最低限のことだけ理解してもらうことを目標とします。
生活指導の理解度を確認し以前より少しでもできるようになった部分は褒めることで、患者の自己効力感を高める関わりが効果的です。
まとめ
拡張型心筋症は若年層から発症する可能性がある深刻な心疾患です。
早期発見と適切な治療、そして日常生活での自己管理が予後を大きく左右します。
症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診し、専門医の診断を受けることが重要です。
診断後は医療チームと協力しながら、自分に合った治療法を選択し、生活習慣の改善に取り組んでいくことが大切です。








