分娩第1期の看護を行うとき「陣痛の観察ポイントがわからない」「いつ分娩室に移すべき?」「母児の安全をどう守ればいい?」と不安に感じていませんか?
この記事では、分娩第1期における包括的な看護計画を、安全で快適な分娩支援の視点で詳しく解説します。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 産科病棟で働く新人看護師・助産師
- 母性看護学実習を控えている看護学生
- 分娩介助技術を向上させたい方
- 母児の安全管理を学びたい方
この記事を読めば、分娩第1期の生理的変化を理解し、安全で満足度の高い分娩支援ができるようになります。
分娩第1期看護で最も重要なこと
分娩第1期の看護において最も重要なのは、母児の安全確保と分娩進行の正確な評価です。
分娩は生理的な過程ですが、急変のリスクを常に伴います。母体と胎児の状態を継続的に観察し、異常の早期発見と適切な対応により、安全で満足度の高い分娩体験を支援することが看護師・助産師の重要な役割です。
分娩第1期とは?基礎知識の確認
分娩第1期の定義
分娩第1期は、規則的な陣痛が開始してから子宮口が全開大(直径10cm)するまでの期間です。
分娩第1期の生理的変化
陣痛の変化
陣痛の特徴:
- 規則性:一定間隔で反復する子宮収縮
- 持続性:時間の経過とともに強度・持続時間が増加
- 進行性:間欠時間が短縮し、発作時間が延長
陣痛の進行パターン:
- 潜伏期:間欠10-20分、持続20-40秒
- 活動期:間欠3-5分、持続40-60秒
- 移行期:間欠1-3分、持続60-90秒
子宮頸管の変化
子宮口開大の過程:
- 頸管の展退:厚さ2-3cmから薄くなる
- 子宮口の開大:0cmから10cmまで徐々に拡張
- 下部子宮節の形成:胎児下降のための空間確保
卵膜と羊水の変化
胎胞の形成:
- 陣痛により児頭が下降
- 先進部周囲の卵膜に羊水が貯留
- 胎胞が子宮口開大を促進
破水の過程:
- 子宮口全開大前後に胎胞が破綻
- 羊水の流出により産道が滑らかになる
- 胎児の回旋・下降が促進
分娩第1期の分類
初産婦と経産婦の違い
初産婦:
- 平均所要時間:10-12時間
- 子宮口開大:1cm/時間
- 潜伏期が長い傾向
経産婦:
- 平均所要時間:6-8時間
- 子宮口開大:1.5cm/時間
- 活動期以降の進行が早い
分娩進行の評価
Bishop Score: 子宮口開大、展退、児頭の下降、硬度、位置の5項目で評価
分娩曲線(パルトグラム): 時間経過と子宮口開大の関係をグラフ化し、分娩進行を評価
看護問題と目標設定
看護問題
分娩に伴う母児のリスク状態
分娩第1期における陣痛ストレス、分娩進行の変動、合併症発生の可能性により、母体と胎児の健康状態に影響を及ぼす可能性がある状態
長期目標
分娩終了後2時間まで:母児が身体的・心理的・社会的に良好な状態を維持し、安全で満足度の高い分娩体験を得ることができる
具体的指標:
- 母体のバイタルサインが正常範囲内
- 胎児の心拍数が正常範囲内(120-160bpm)
- 分娩進行が順調(分娩曲線内)
- 母体の満足度が高い
短期目標
30分ごとに評価:
- 母体の健康状態が正常範囲内を維持する
- バイタルサイン安定
- 出血量正常
- 疼痛管理良好
- 母体の心理的・社会的状態が良好に維持される
- 不安レベルの軽減
- 分娩への適応良好
- 家族のサポート活用
- 分娩が順調に進行する
- 陣痛の規則的進行
- 子宮口開大の適切な進行
- 胎児の下降良好
観察計画(OP):系統的モニタリング
陣痛の観察
陣痛の測定方法
用手的測定:
- 子宮底に手掌を当てて収縮を触知
- 陣痛の強度を硬度で評価
- 間欠・持続時間を正確に測定
機械的測定:
- 分娩監視装置(CTG):連続的モニタリング
- 子宮内圧測定:より正確な評価
陣痛評価のポイント
間欠(頻度):
- 陣痛の開始から次の陣痛開始までの時間
- 進行とともに短縮(10分→5分→3分→1-2分)
持続時間:
- 1回の陣痛が続く時間
- 進行とともに延長(20秒→40秒→60秒→90秒)
強度:
- 弱:指で圧迫できる程度
- 中等度:指で圧迫が困難
- 強:圧迫不可能、鉄のように硬い
陣痛の異常パターン:
- 過強陣痛:間欠1分以内、持続2分以上
- 微弱陣痛:間欠10分以上、持続30秒以下
- 不協調性陣痛:不規則な陣痛パターン
胎児心拍数の観察
胎児心拍数の正常値
基線心拍数:
- 正常:110-160bpm
- 頻脈:160bpm以上
- 徐脈:110bpm未満
心拍数パターンの評価
基線細変動:
- 正常:6-25bpm
- 減少:5bpm以下(胎児低酸素症の疑い)
- 消失:0-2bpm(重篤な胎児低酸素症)
一過性変動:
- 早発一過性徐脈:陣痛と同時に出現、生理的
- 遅発一過性徐脈:陣痛後に出現、胎盤機能不全の疑い
- 変動一過性徐脈:不規則出現、臍帯圧迫の疑い
胎児機能不全の徴候
重篤なサイン:
- 基線心拍数100bpm以下または180bpm以上
- 基線細変動の消失
- 遅発一過性徐脈の反復
- 高度変動一過性徐脈
対応の必要性:
- 体位変換(左側臥位)
- 酸素投与
- 輸液による循環血液量増加
- 急速遂娩の検討
分娩進行の観察
子宮口開大の評価
内診による評価:
- 子宮口の開大度(cm)
- 頸管の展退度(%)
- 児頭の下降度(Station)
- 児頭の回旋状態
評価頻度:
- 潜伏期:4時間ごと
- 活動期:2時間ごと
- 移行期:1時間ごと
産徴と分泌物の観察
正常な産徴:
- 血液混じりの粘液
- 分娩進行とともに量増加
- 暗赤色から明るい色へ変化
異常出血のサイン:
- 鮮紅色の血液
- 大量出血(パッド1枚/30分以上)
- 凝血塊の混入
破水の確認:
- 羊水の流出量・性状
- pH試験紙による確認
- 顕微鏡による羊歯状結晶確認
母体の全身状態観察
バイタルサインの測定
測定頻度と正常値:
- 血圧:1時間ごと、収縮期140mmHg未満
- 脈拍:30分ごと、60-100回/分
- 体温:4時間ごと、37.5℃未満
- 呼吸:必要時、16-20回/分
異常値の対応:
- 高血圧:妊娠高血圧症候群の疑い
- 頻脈:脱水、感染、出血の疑い
- 発熱:感染症の疑い
疼痛の評価
疼痛評価スケール:
- VAS(Visual Analog Scale):0-10の数値評価
- フェイススケール:表情による評価
- 行動評価:体動、表情、発言
疼痛の特徴:
- 陣痛時の疼痛強度
- 間欠時の疼痛の有無
- 疼痛の部位(下腹部、腰部)
- 疼痛への対処能力
心理社会的状態の観察
不安・ストレスの評価
不安のサイン:
- 表情の緊張
- 体動の増加
- 呼吸の乱れ
- 発言内容
ストレス反応:
- 過度の興奮状態
- 無気力・抑うつ状態
- 協力性の低下
- パニック状態
家族のサポート状況
サポート体制の確認:
- 付き添い者の有無
- 家族の理解・協力
- コミュニケーション状況
- 文化的・宗教的配慮
援助計画(TP):快適で安全な分娩支援
環境調整と体位管理
分娩環境の整備
物理的環境:
- 室温調整:22-25℃、湿度50-60%
- 照明調整:明るすぎず、暗すぎない適切な照明
- 騒音管理:静かで落ち着いた環境
- プライバシー保護:カーテンやパーテーションの使用
感染予防対策:
- 清潔な環境の維持
- 手指衛生の徹底
- 必要時の消毒・滅菌
- 標準予防策の実施
体位と活動の指導
分娩第1期前半:
- 歩行:陣痛促進効果、重力の活用
- 座位:楽な椅子でのリラックス
- 軽い活動:読書、音楽鑑賞、会話
分娩第1期後半:
- 側臥位:子宮血流改善、リラクゼーション
- シムス位:腰部の圧迫軽減
- 膝胸位:児頭回旋異常時の体位
避けるべき体位:
- 長時間の仰臥位(仰臥位低血圧症候群)
- 不安定な体位
- 疲労を増強する体位
疼痛管理と快適性の向上
非薬物的疼痛緩和
呼吸法の指導:
- 腹式呼吸:潜伏期の基本呼吸
- 胸式呼吸:活動期の浅く速い呼吸
- 息こらえ法:移行期の呼吸コントロール
リラクゼーション技法:
- 筋弛緩法:全身の筋肉を意識的に弛緩
- イメージ法:心地よい場面を想像
- 音楽療法:好みの音楽でリラックス
- アロマセラピー:ラベンダーなどの鎮静効果
物理的comfort care:
- 温罨法:腰部や下腹部への温湿布
- 冷罨法:額や首筋への冷却
- マッサージ:腰部、仙骨部の軽擦
- 圧迫法:腰部や仙骨部への圧迫
薬物的疼痛緩和
使用される薬剤:
- 硬膜外麻酔:最も効果的な方法
- 笑気ガス:軽度から中等度の疼痛緩和
- オピオイド系薬剤:ペチジンなど
薬物使用時の観察:
- 母体への副作用
- 胎児への影響
- 分娩進行への影響
- 効果の持続時間
栄養・水分・排泄管理
栄養と水分摂取
経口摂取の原則:
- 潜伏期:軽食、十分な水分摂取可能
- 活動期:水分中心、少量の糖分補給
- 移行期:氷片、少量の水分のみ
誤嚥予防:
- 嘔吐リスクの評価
- 適切な体位での摂取
- 少量ずつの摂取
- 必要時の絶食
輸液管理:
- 脱水予防のための輸液
- 電解質バランスの維持
- 血糖値のモニタリング
- 適切な輸液速度
排泄の管理
排尿管理:
- 頻回の排尿促進:2-3時間ごと
- 膀胱充満の確認:内診時に評価
- 導尿の適応:自然排尿困難時
- 感染予防:清潔な導尿手技
排便管理:
- 便秘の予防と対処
- 分娩進行への影響評価
- 必要時の浣腸
- 清潔保持
安全管理と感染予防
母児安全管理
転倒・転落防止:
- ベッド柵の適切な使用
- 移動時の介助
- 足元の障害物除去
- 適切な履物の使用
急変時対応準備:
- 緊急薬品の準備
- 蘇生器具の点検
- 医師への連絡体制
- 手術室への搬送準備
感染予防対策
標準予防策:
- 手指衛生の徹底
- 個人防護具の適切な使用
- 血液・体液への曝露防止
- 鋭利物損傷の予防
特別な注意:
- 破水後の感染リスク管理
- 内診回数の最小限化
- 清潔操作の徹底
- 発熱時の早期対応
心理的支援とコミュニケーション
不安・恐怖の軽減
情報提供:
- 分娩進行状況の説明
- 予想される経過の説明
- 医療処置の必要性説明
- 質問への丁寧な回答
精神的支援:
- 共感的な態度での関わり
- 励ましと肯定的声かけ
- 不安な気持ちの受容
- 自信の回復支援
家族との連携
パートナーの支援:
- 分娩過程の説明
- 具体的なサポート方法指導
- 不安の共有と軽減
- 役割の明確化
コミュニケーション促進:
- 家族間の対話支援
- 意思決定への参加促進
- 文化的背景の尊重
- 価値観の理解
教育計画(EP):知識とスキルの向上
分娩過程の理解促進
分娩の生理的変化
教育内容:
- 陣痛のメカニズム
- 子宮口開大の過程
- 胎児の回旋・下降
- ホルモンの働き
個別指導:
- 初産婦・経産婦の違い
- 予想される所要時間
- 正常な分娩進行
- 異常のサイン
痛みの理解と対処
疼痛の説明:
- 陣痛の意味と役割
- 痛みの種類と強度
- 時期による変化
- 個人差の存在
対処法の指導:
- 効果的な呼吸法
- リラクゼーション
- 体位の工夫
- パートナーとの協力
実践的スキルの指導
呼吸法の習得
段階別呼吸法:
- 潜伏期:ゆっくりとした腹式呼吸
- 活動期:浅く速い胸式呼吸
- 移行期:「ヒッヒッフー」の呼吸
練習方法:
- 陣痛間欠時の練習
- パートナーとの共同練習
- 音楽に合わせた練習
- 実際の陣痛時の応用
リラクゼーション技法
筋弛緩法:
- 全身の筋肉の意識化
- 段階的な弛緩練習
- 陣痛時の応用
- 効果の確認
イメージ法:
- 心地よい場面の想像
- 子宮口開大のイメージ
- 赤ちゃんとの対面イメージ
- ポジティブな分娩体験
セルフケア能力の向上
自己管理スキル
体調管理:
- 適切な休息と活動
- 栄養と水分摂取
- 排泄のタイミング
- 体位変換の方法
症状の観察:
- 陣痛の変化の認識
- 破水の判断
- 異常サインの識別
- 報告すべき症状
パートナーの役割
サポート方法:
- 励ましの言葉かけ
- 物理的サポート(マッサージなど)
- 水分摂取の支援
- 医療者との連絡
コミュニケーション:
- 妻の気持ちの理解
- 適切な距離感の保持
- 医療者との協力
- 冷静な判断力の維持
分娩室移床の判断
移床の適応基準
客観的指標
陣痛の状態:
- 間欠3-5分以内
- 持続時間45-60秒以上
- 規則的な陣痛パターン
- 中等度以上の強度
子宮口開大:
- 初産婦:8-9cm
- 経産婦:6-7cm
- 頸管の十分な展退
- 児頭の下降確認
主観的症状
母体の訴え:
- 強い怒責感
- 肛門圧迫感
- 排便感
- 「赤ちゃんが出そう」という感覚
行動の変化:
- 体動の増加
- 発声の変化
- 集中力の変化
- 協力性の変化
移床時の注意点
安全な移送
移送前の確認:
- バイタルサインの安定
- 胎児心拍数の確認
- 出血量の確認
- 陣痛の間欠時に移送
移送中の観察:
- 陣痛の状態
- 母体の状態
- 緊急事態への準備
- 迅速かつ安全な移送
分娩室での準備
環境整備:
- 分娩台の準備
- 器械類の準備
- 蘇生器具の確認
- 感染予防対策
スタッフの準備:
- 医師・助産師の待機
- 新生児ケア担当者
- 必要時の小児科医
- 麻酔科医(必要時)
異常の早期発見と対応
分娩進行異常
遷延分娩
定義と基準:
- 初産婦:30時間以上
- 経産婦:15時間以上
- 子宮口開大速度の遅延
- 分娩曲線からの逸脱
対応策:
- 陣痛促進剤の使用検討
- 人工破膜の実施
- 帝王切開の検討
- 母児の状態評価
微弱陣痛
原因と症状:
- 原発性:最初から陣痛が弱い
- 続発性:途中から陣痛が弱くなる
- 間欠時間の延長
- 持続時間の短縮
看護ケア:
- 歩行の促進
- 体位変換
- 乳頭刺激
- 精神的支援
胎児機能不全
胎児心拍数異常
重篤なパターン:
- 高度遅発一過性徐脈
- 高度変動一過性徐脈
- 基線細変動の消失
- 基線心拍数の異常
緊急対応:
- 左側臥位への体位変換
- 酸素投与(6-8L/分)
- 輸液による循環血液量増加
- 急速遂娩の準備
出血性合併症
前置胎盤・胎盤早期剥離
症状と徴候:
- 突然の大量出血
- 腹痛(胎盤早期剥離)
- 子宮の硬直(胎盤早期剥離)
- ショック症状
緊急対応:
- バイタルサインの安定化
- 輸液・輸血の準備
- 緊急帝王切開の準備
- 医師への緊急連絡
実践で使えるチェックリスト
入院時アセスメントチェックリスト
- [ ] 分娩歴・妊娠経過の確認
- [ ] 現在の陣痛状態評価
- [ ] 胎児心拍数の確認
- [ ] 内診による子宮口開大度
- [ ] 破水の有無・性状確認
- [ ] バイタルサインの測定
- [ ] 疼痛レベルの評価
- [ ] 心理状態の評価
- [ ] 家族のサポート状況
- [ ] 分娩に関する希望の確認
継続観察チェックリスト
- [ ] 陣痛の間欠・持続・強度
- [ ] 胎児心拍数パターンの評価
- [ ] 子宮口開大の進行度
- [ ] 児頭下降の程度
- [ ] 破水・出血の状態
- [ ] 母体のバイタルサイン
- [ ] 疼痛レベルの変化
- [ ] 排尿・排便状況
- [ ] 心理状態・不安レベル
- [ ] 異常徴候の有無
分娩室移床判定チェックリスト
- [ ] 陣痛間欠3-5分以内
- [ ] 陣痛持続45秒以上
- [ ] 子宮口開大度(初産8cm、経産6cm)
- [ ] 怒責感・肛門圧迫感の訴え
- [ ] 血性分泌物の増量
- [ ] 胎児心拍数の安定
- [ ] 母体バイタルサインの安定
- [ ] 分娩室の受け入れ準備完了
- [ ] 医師・助産師の待機確認
- [ ] 移送時の安全確保
よくある質問(FAQ)
Q1. 陣痛が不規則な場合はどう評価すべきですか?
A. 不規則な陣痛は前駆陣痛や微弱陣痛の可能性があります。少なくとも1時間は観察を継続し、規則性の出現を待ちます。歩行や体位変換を促し、自然な陣痛発来を支援します。
Q2. 胎児心拍数に一過性徐脈が出現した場合は?
A. まず体位を左側臥位に変換し、酸素投与を開始します。陣痛との関係を確認し、遅発一過性徐脈の場合は緊急度が高いため、直ちに医師に報告し対応を協議します。
Q3. 破水したかどうかの判断が困難な場合は?
A. pH試験紙やニトラジンテストを使用して羊水かどうかを確認します。疑わしい場合は破水として対応し、感染予防策を講じながら医師の診察を受けます。
Q4. 産婦が分娩に対して強い恐怖を示す場合は?
A. まず産婦の気持ちを受容し、恐怖の具体的内容を聞き取ります。正確な情報提供と継続的な励ましを行い、必要に応じて心理的サポートの専門家に相談します。











