ゴードンの11の機能的健康パターン、最初の関門が「健康知覚−健康管理パターン」ですよね。
「健康知覚って何を書けばいいの?」「情報が多すぎてどこから手をつければ……」と悩む看護学生さんはとても多いです。
この記事では、80歳・膵臓がんステージIVで在宅療養中のAさんの事例を使って、情報の整理からアセスメントの書き方まで、順を追って解説していきます。
※ 事例の全体像やゴードン11パターンの概要については、こちらのまとめ記事をご覧ください。
事例のおさらい(簡易版)
Aさん 80歳 女性 膵臓がん(ステージIV)
3年前に診断。抗がん剤・放射線治療を受けていたが、今年の春から経口摂取困難となり入院。現在は輸液による対症療法のみ。本人の意思で退院し、在宅療養中。担当医からは余命6週間〜3ヶ月と告知されている。要介護5。独居(市営住宅1階)。訪問看護・訪問介護・訪問診療などを利用。甥、友人2人、民生委員がサポート。国民年金(約5万5千円/月)で生活。
それでは、このAさんの事例を使って「健康知覚−健康管理パターン」のアセスメントを一緒に組み立てていきましょう。
そもそも「健康知覚−健康管理パターン」って何を見るの?
このパターンでは、大きく分けて3つの視点からアセスメントします。
① 健康知覚(健康をどう捉えているか)
患者さん自身が、自分の健康状態や病気のことをどう理解して、どう受け止めているか、という部分です。
たとえば……
- 自分の病気をどう認識しているか
- 予後についてどう理解しているか
- 治療や療養の場所について、どんな判断をしているか
② 健康管理(健康をどう管理しているか)
実際に患者さんがどのように健康を維持・管理しているかを見ます。
- 服薬管理はできているか
- 医療サービスをどう利用しているか
- 健康を維持するための行動ができているか
③ 安全管理(安全が守られているか)
特に在宅療養の場合、独居かどうか、緊急時の連絡体制があるかなど、安全面の体制もこのパターンで評価しますよ。
つまりこのパターンは、「患者さんが自分の健康をどう理解していて、実際にどう管理していて、安全は守られているか」を総合的に見るパターンなんですね。
ステップ① 事例から情報を抜き出す
まずはAさんの事例から、このパターンに関連する情報を拾い出しましょう。ここが最初の大事な作業です。
情報を整理するときは、S情報(主観的情報:患者さん本人の言葉)とO情報(客観的情報:観察や検査データなど)に分けるのが基本です。
S情報(Aさんの言葉)
❶「病院にいたって治るわけじゃないし、お金ばかりかかって申し訳ない」
❷「もうそんなに長くはないだろうから、通帳のお金を引き出して準備しておかないと」
❸「息子も先に逝ってしまったし、父も母ももういない。あちらでみんなに再会できると思えば、怖いという気持ちはないですよ」
O情報(客観的な事実・観察情報)
- 80歳、女性、膵臓がんステージIV
- 3年前に診断、抗がん剤・放射線治療を受けていた
- 今年春頃から経口摂取困難となり入院、現在は輸液による対症療法のみ
- 本人の意思により退院を決断
- 担当医から余命6週間〜3ヶ月と告知されている
- オキシコドン徐放錠30mg/日、レスキュー用モルヒネ10mg/回(1日6回まで)を自己管理で服用
- 独居(市営住宅1階)
- 義理の弟家族(甥)との交流あり
- 友人2人が交代で訪問し、食事の差し入れ・洗濯・掃除を支援
- 同じ棟の元介護福祉士の民生委員が合鍵を管理、毎朝7時半に解錠・夜20時半に施錠・ごみ出し
- 訪問看護ステーションへの安否確認電話:毎日朝7時半・21時半
- 訪問看護(医療保険):火・木・土 10時〜11時
- 訪問介護(身体介護):毎日19時半
- 訪問入浴介護:月・金 10時
- 訪問診療:水 15時(隔週)
- 介護保険で電動介護ベッド・エアマットレスをレンタル
- 要介護5と判定
- 退院前カンファレンスが実施された
- 自宅で最期まで過ごすことに迷いがある
- 甥や友人に負担をかけたくないという気持ちがある
こうして並べてみると、結構な量の情報がありますよね。でも安心してください。ここからアセスメントとして「まとめて→解釈する」作業に入っていきます。
ステップ② アセスメントを書く
情報を整理したら、いよいよアセスメントです。このパターンでは、先ほどの3つの視点に沿って書いていくとスムーズですよ。
【書き方の構造】
一般論(その疾患・状態で一般的に言えること)
↓
この患者さんの場合はどうか(情報の提示と解釈)
↓
結論(機能的か、機能的だが潜在的リスクがあるか、機能障害か)
では、実際にAさんの事例で書いてみましょう。
アセスメント例:健康知覚−健康管理パターン
【一般論】
末期がん患者が自宅で療養する場合、病状の進行に伴って全身の衰弱が強まり、倦怠感や食欲低下、疼痛、便秘、呼吸困難といった症状が増していく。日常生活動作も次第に困難となり、一日の大半をベッド上で過ごすようになることが多い。自宅での療養を継続するためには、患者本人が自分の病状や予後をどのように認識しているかが重要であり、その認識に基づいて療養の場の選択や今後の生活設計がなされていく。また、在宅療養においては医療・介護の専門サービスによる支援体制に加え、家族やインフォーマルな支援者の協力が不可欠となる。患者自身が可能な範囲で自立した生活を送りたいという思いを尊重しつつ、疼痛の増強や急変時に速やかに対応できるよう、在宅ケアチームとの連携体制を確保しておくことが求められる。
【健康知覚(Aさんの病状認識と療養に対する姿勢)】
Aさんは3年前に膵臓がん(ステージIV)と診断され、抗がん剤治療と放射線治療を受けてきた。しかし今年の春頃から経口摂取が困難となり入院し、現在は輸液による対症療法のみとなっている。担当医からは余命6週間から3ヶ月程度であることが本人に告知されている。
Aさんは「病院にいたって治るわけじゃないし、お金ばかりかかって申し訳ない」と述べ、自らの意思で退院を決断している。また「もうそんなに長くはないだろうから、通帳のお金を引き出して準備しておかないと」という発言からも、自身の予後が限られていることを現実的に受け止め、残された時間のなかで経済面の整理を進めようとしている姿がうかがえる。死に対しても「息子も先に逝ってしまったし、父も母ももういない。あちらでみんなに再会できると思えば、怖いという気持ちはないですよ」と語っており、恐怖よりも故人との再会への期待を支えとしながら、穏やかに死を受け入れている様子がみられる。
一方で、自宅で最期まで過ごすことへの迷いも抱えており、甥や友人に負担をかけているのではないかという気がかりがある。これは周囲への気遣いが強いAさんの性格を反映したものであり、病状認識そのものに問題があるわけではないが、迷いが強まった際には療養方針の再確認と精神的な支えが必要になる可能性がある。


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以上から、Aさんは自分の病状と予後を適切に理解し、それに基づいて退院や在宅療養という意思決定を行っていると判断できる。健康知覚は現実に即しており、適切であるといえる。
【健康管理(服薬管理・医療サービスの利用状況)】
現在の服薬内容は、オキシコドン徐放錠30mg/日(1日2回)と、レスキュー用の経口モルヒネ速放製剤10mg/回(1日6回まで)であり、いずれもAさんが自己管理にて服用できている。疼痛コントロールに必要な基本薬とレスキュー薬の両方を適切に使い分けられていることは、Aさんの服薬管理能力が保たれていることを示している。
医療サービスの利用状況としては、訪問看護(医療保険)を週3回、訪問診療を隔週で受けている。加えて訪問介護を毎日、訪問入浴を週2回利用しており、さらに介護保険を活用して電動介護ベッドとエアマットレスをレンタルしている。退院前にはカンファレンスも実施されており、在宅ケアチームの連携体制は整えられている。要介護5の認定を受け、ADLの低下に応じたサービスの見直しも行われていることから、健康管理体制は適切に機能している。
【安全管理(独居での安全対策)】
Aさんは独居であるが、安全を確保するための体制が複数整えられている。同じ棟に住む元介護福祉士の民生委員が合鍵を管理しており、毎朝7時半に解錠、夜20時半に施錠を行い、朝のごみ出しも担っている。また、訪問看護ステーションへの安否確認電話が毎日朝7時半と21時半に実施されており、日中は友人が交代で訪問して食事の差し入れや洗濯・掃除などの家事支援を行っている。毎日19時半には訪問介護も入っているため、朝から夜まで何らかの形で外部の目が入る体制が構築されている。さらに、電動介護ベッドの導入により、ベッドからの転落リスクも軽減されている。
【結論】
以上のことから、Aさんは末期膵臓がんという重篤な状態にあるものの、病状の進行と予後を適切に理解したうえで、自らの意思で在宅療養を選択している。オピオイドの服薬管理も自己管理が可能であり、訪問看護・訪問診療・訪問介護・訪問入浴といった医療・介護サービスを適切に利用している。さらに、民生委員による鍵の管理と施錠・解錠、訪問看護ステーションによる毎日の安否確認電話、友人による日常的な訪問支援など、独居であっても多層的な安全対策が整えられている。これらのことから、現時点では健康知覚−健康管理パターンは機能的であると判断する。
ただし、今後の病状進行に伴い、服薬の自己管理が困難になる可能性や、疼痛の増強によりレスキュー薬の使用頻度が増加する可能性がある。また、自宅での療養継続に対する迷いが強まった場合、療養方針の再検討が必要となることも考えられる。これらの変化に対応できるよう、継続的な観察と柔軟な支援体制の維持が重要である。
アセスメントの書き方のコツ:ここを押さえよう
上のアセスメント例を振り返りながら、書き方のコツを整理しておきましょう。
コツ① 「一般論」から始めて、事例に落とし込む
いきなりAさんの話を始めるのではなく、まず「末期がん患者の在宅療養では一般的にこういうことが重要」という大きな枠組みを示してから、Aさんの場合はどうなのか、と展開していく流れです。
この書き方のメリットは、自分が何の根拠をもってアセスメントしているのかが明確になることですね。教員からの「根拠は?」という質問にも対応しやすくなりますよ。
コツ② S情報を「引用」として効果的に使う
Aさんの言葉(S情報)はアセスメントの中で非常に強い根拠になります。今回の例では、以下のように使っています。
- 病状認識の根拠として→「病院にいたって治るわけじゃないし……」
- 予後の理解の根拠として→「もうそんなに長くはないだろうから……」
- 死の受容の根拠として→「あちらでみんなに再会できると思えば……」
S情報をただ書き写すだけではなく、「この発言から〇〇と判断できる」という形でつなげるのが大切ですよね。
コツ③ 「機能的」で終わらず、今後のリスクにも触れる
「機能的である」と結論づけたからといって、それで終わりにしないこと。特に終末期の事例では、今は機能的でも近い将来変化する可能性が高いですよね。
「今後、病状の進行により〇〇が困難になる可能性がある」と書き添えることで、アセスメントに深みが出ます。これは看護計画にもつながっていく部分なので、意識しておきましょう。
コツ④ パターンに合った情報だけを使う
事例の情報は膨大ですが、このパターンで使うべきなのは「健康知覚」「健康管理」「安全管理」に関する情報です。
たとえば「排便は3〜4日に1回」という情報はこのパターンではなく、排泄パターンで使いますよね。情報の「仕分け」を意識すると、各パターンがすっきりまとまりますよ。
よくある間違い・つまずきポイント
最後に、このパターンで看護学生がやりがちなミスをいくつか挙げておきますね。
❌ 情報を並べただけで終わっている
「Aさんは訪問看護を週3回利用している。訪問診療は隔週である。」……これは情報の羅列であって、アセスメントではありません。「だから何が言えるのか」を必ず書きましょう。
❌ 他のパターンの内容を混ぜてしまう
「食欲がなく、BMIが低い」といった情報をこのパターンに書いてしまうケースが多いです。栄養に関する情報は栄養−代謝パターンに回しましょう。
❌ 「機能的」か「機能障害」の結論が曖昧
アセスメントの最後には、必ずこのパターンが機能的なのか、機能障害なのかを明記することが大切です。「〜と思われる」で濁して終わると、評価が伝わりません。
まとめ
健康知覚−健康管理パターンでは、以下の3つの視点が軸になります。
- 健康知覚:患者さんが自分の病状・予後をどう理解しているか
- 健康管理:服薬管理やサービス利用が適切に行われているか
- 安全管理:独居であっても安全が確保される体制があるか
Aさんの場合、病状の理解も服薬管理もサポート体制も整っているため、現時点では機能的と判断しました。ただし終末期という状況を踏まえ、今後の変化への備えについても言及しています。
次の記事では、パターン2:栄養−代謝パターンを解説します。Aさんの経口摂取困難やBMI、腹水、褥瘡リスクなどをどう評価するか、一緒に見ていきましょう。
ゴードン11パターン|記事一覧
| No. | パターン |
| 1 | 健康知覚−健康管理(この記事) |
| 2 | 栄養−代謝 |
| 3 | 排泄 |
| 4 | 活動−運動 |
| 5 | 睡眠−休息 |
| 6 | 認知−知覚 |
| 7 | 自己知覚−自己概念 |
| 8 | 役割−関係 |
| 9 | セクシュアリティ−生殖 |
| 10 | コーピング−ストレス耐性 |
| 11 | 価値−信念 |








