「ゴードンの11の機能的健康パターンって、結局どう書けばいいの?」
看護学生なら誰もが一度はぶつかる壁ですよね。教科書を読んでもピンとこないし、事例に当てはめようとすると手が止まってしまう……。
この記事では、終末期がん患者さんの在宅療養事例を使って、ゴードンの11パターンすべてのアセスメントを一つずつ丁寧に解説していきます。
まずはこの記事で事例の全体像とゴードン11パターンの基本をしっかり押さえましょう。各パターンの詳しいアセスメントは、それぞれの個別記事で解説していますので、気になるパターンからどんどん読み進めてくださいね。
そもそもゴードンの11の機能的健康パターンとは?
マージョリー・ゴードンが提唱した「11の機能的健康パターン」は、患者さんの健康状態を11の視点から体系的に整理するための枠組みです。
ざっくり言うと、「患者さんのことを漏れなく・偏りなく理解するための11個のチェックポイント」だと思ってもらえればOKです。
看護過程でアセスメントを行うとき、この枠組みに沿って情報を整理すると、何が問題で何がうまくいっているのかが見えやすくなりますよね。
11パターンの一覧
| No. | パターン名 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 1 | 健康知覚−健康管理 | 自分の健康をどう捉えて、どう管理しているか |
| 2 | 栄養−代謝 | 食事・水分の摂取状況、体の栄養状態 |
| 3 | 排泄 | 排尿・排便の状態とその管理 |
| 4 | 活動−運動 | 日常の動き、運動能力、セルフケア能力 |
| 5 | 睡眠−休息 | 眠れているか、十分に休めているか |
| 6 | 認知−知覚 | 感覚機能(視覚・聴覚など)と痛みの状態 |
| 7 | 自己知覚−自己概念 | 自分自身をどう感じているか、自己イメージ |
| 8 | 役割−関係 | 家族や社会での役割、人間関係 |
| 9 | セクシュアリティ−生殖 | 性に関する認識、生殖に関する問題 |
| 10 | コーピング−ストレス耐性 | ストレスへの対処方法とその効果 |
| 11 | 価値−信念 | 大切にしている価値観、信仰、人生観 |
それぞれのパターンは独立しているわけではなく、互いに関連し合っているのがポイントです。たとえば「栄養が摂れない」→「活動量が落ちる」→「気分も落ち込む」→「コーピングに影響する」……といった具合に、一つのパターンの変化が他のパターンにも波及していきますよね。
だからこそ、11パターンすべてを丁寧に見ていくことが大切なんです。
今回使用する事例の全体像
これから11パターンのアセスメントで使用する事例を紹介します。まずは全体をざっと読んで、Aさんのイメージをつかんでおきましょう。
事例:Aさん 80歳 女性|膵臓がん(ステージIV)・在宅療養中
▼ 診断・経過
3年前に膵臓がん(ステージIV)と診断を受け、外科的切除は行わず、抗がん剤治療および放射線治療を継続していた。今年の春頃から次第に経口摂取が困難となり、入院加療となった。現在は輸液による対症的な管理のみを行っている。
Aさんの言葉:
「病院にいたって治るわけじゃないし、お金ばかりかかって申し訳ない」
Aさん自身の意思により退院を決断。担当医からは余命およそ6週間から3ヶ月程度であるとAさん本人に告知されている。かかりつけ医による在宅診療と、訪問看護ステーションからの訪問看護師による支援(医療保険適用)を受けながら、自宅での療養生活を送ることとなった。
退院に先立ち、病院主治医、病棟看護師、退院支援担当の相談員、在宅かかりつけ医、訪問看護師、甥、友人、民生委員を交えた退院前カンファレンスが実施された。
退院直後は壁や家具を支えにゆっくり移動することができていたが、退院からおよそ10日後には両下肢のむくみが増強し、食事もほぼ摂れなくなり、自分の力で立ち上がることが不可能となった。入院期間中に介護保険の認定申請を行い、要介護5の判定を受けている。
▼ 服薬内容
- オキシコドン徐放錠 1日2回(30mg/日)
- 経口モルヒネ速放製剤レスキュー用 1回10mg(1日6回まで)→ 自己管理にて服用可能
- 便秘時:グリセリン浣腸40ml・摘便の指示あり → 訪問看護師が対応
▼ 看護師訪問時のバイタルサイン
- 体温 36.8℃
- 脈拍 100回/分(不整なし)
- 呼吸数 20回/分(異常呼吸音なし)
- SpO₂ 95%
- 血圧 92/62mmHg
- 腹部の痛み:コントロールされており、レスキュー薬は1日2〜3回使用
▼ 身体状況
身長 148cm、体重 32kg
腹水の貯留により腹部の張りが強く、食欲は消失。両下肢の浮腫および全身の倦怠感が顕著で、歩行は不可能な状態。腹部痛は持続しているが、オピオイドの使用により耐えられる範囲に抑えられている。自力での起立は困難だが、ベッド上で臀部をわずかに持ち上げる動作は可能。
介護用電動ベッドを導入済み。尿意の自覚はあるものの、日中のほとんどを一人で過ごしているため、リハビリパンツに排尿し、ベッド上で自力にてパンツの交換を行っている。排便は3〜4日に1回のペースで、訪問看護師による腹部のマッサージ、浣腸、摘便にて対応。
覚醒時はラジオをつけていることが多い。
Aさんの言葉:
「特に聴きたい番組があるってわけじゃないんだけど、音がないとどうにも落ち着かなくてね」
小柄で痩せが著しく、尾骨部に骨突出が確認される。両下肢の浮腫は高度。食事は友人が毎日昼と夕方に届けてくれるおかゆやポタージュをわずかに口にする程度。部分義歯を使用。意思疎通は明瞭に行え、聴力や視力に大きな支障はない。入浴は体力的に不可能であるため、訪問看護時に全身の清拭、手浴・足浴、洗髪、口腔内の清潔ケアなどを実施している。


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▼ 家族構成・家族の状況
独居。40代の頃に離婚しており、一人息子は30歳のときに病気で他界。婚姻期間中は専業主婦として過ごしていた。車でおよそ40分の距離にある隣接市に住む義理の弟家族と行き来があるが、それ以外の親族との付き合いはほぼない。甥(義理の弟の長男)が紹介してくれた教会の神父との語り合いを精神的な拠り所としている。
離婚後は市営住宅に単身で暮らしており、以前の勤め先で親しくなった友人(2人)との関係が深く、体調が良かった頃には3人で旅行に出かけたり、外食を楽しんだりしていた。発病後も友人が代わる代わる訪ねてきてくれ、食事を届けてくれている。友人は身の回りの家事も手伝ってくれており、朝に訪れた友人が洗濯物を干し、夕方に来た友人がそれを取り込んでたたむといった具合に、連携しながら支えてくれている。
同じ棟に元介護福祉士の民生委員が暮らしており、在宅での療養が始まってからは積極的に声をかけ、生活面の世話を引き受けてくれるようになった。
▼ 経済状況
国民年金を受給(約5万5千円/月)。わずかではあるが預貯金がある。
▼ 生活状況
一日のほぼすべてをベッド上で過ごしている。夜中の2時頃にようやくうとうとし始めるが眠りは浅く、朝は4時半頃には目が覚めてしまう。入眠困難があるが、睡眠導入剤は希望しておらず服用していない。住まいは市営住宅の1階で、周囲に畑や空き地が広がるのどかな環境。
▼ 利用サービス
- 訪問看護(医療保険):火・木・土 10時〜11時
- 安否確認電話(訪問看護ステーション):毎日 朝7時半・21時半
- 訪問介護(身体介護20分未満):毎日19時半
- 訪問入浴介護:月・金 10時
- 医師による訪問診療:水 15時(隔週)
- 民生委員が合鍵を管理(毎朝7時半に解錠、夜20時半に施錠、朝のごみ出し)
- 介護保険にて電動介護ベッド・エアマットレスをレンタル
▼ Aさんの希望と心境
このまま自宅で最期の時を迎えられるのか、心の中に揺れがある。甥や友人たちにこれ以上の苦労をかけることが心苦しく、自宅で過ごし続けることが周囲への重荷になっているのではないかと感じている。一方で、経済的なゆとりもなく、再入院した場合に費用の負担が不安だという思いもある。
Aさんの言葉:
「もうそんなに長くはないだろうから、通帳のお金を引き出して準備しておかないと」
死に対しては:
「息子も先に逝ってしまったし、父も母ももういない。あちらでみんなに再会できると思えば、怖いという気持ちはないですよ」
甥の言葉:
「病院に戻ったっていいし、この家にいたいならそれでもいい。おばさんの好きなようにしてくれればそれでいいんだから。お金のことは気にしなくていいよ」
この事例のアセスメントのポイント
Aさんの事例をゴードンの11パターンで分析する際、特に注目しておきたいポイントをまとめておきますね。
この事例が学びやすい理由
この事例には、看護学生がアセスメントで悩みがちな要素がたくさん詰まっています。
- 終末期特有の身体変化(腹水、浮腫、るい痩、疼痛管理など)
- 独居での在宅療養という生活環境
- インフォーマルサポート(友人・民生委員・甥)の存在
- 経済的な不安と療養場所の選択への迷い
- スピリチュアルな側面(死生観、信仰、故人との再会への思い)
どのパターンにも具体的に書ける情報がしっかりあるので、アセスメントの練習素材としてとても適した事例ですよ。
アセスメントで意識してほしい3つのこと
① 情報を「S情報」と「O情報」に分けて整理する
Aさん自身の言葉(主観的情報)と、バイタルサインや観察所見(客観的情報)をきちんと区別して整理することが基本です。
② 「だからどうなのか」を必ず書く
情報の羅列だけで終わらないこと。その情報から何が読み取れるのか、看護上の判断(解釈)を書くことがアセスメントの核ですよね。
③ パターン間のつながりを意識する
たとえばAさんの場合、「栄養が摂れない」→「活動量の低下」→「褥瘡リスク」→「自己概念への影響」と、パターンをまたいだ連鎖が見えてきます。こうしたつながりを意識できると、アセスメントの質がぐっと上がりますよ。
各パターンのアセスメント記事一覧
それでは、ここからが本題です。以下のリンクから、気になるパターンの記事に飛んでみてください。それぞれの記事では、Aさんの事例を使って情報の整理の仕方からアセスメントの書き方まで、具体的に解説しています。
| No. | パターン名 | 記事の内容 |
|---|---|---|
| 1 | 健康知覚−健康管理 | Aさんの病状認識、退院の意思決定、服薬自己管理、安全対策の評価 |
| 2 | 栄養−代謝 | 経口摂取の状況、BMI・るい痩の評価、腹水貯留、褥瘡リスク、皮膚の状態 |
| 3 | 排泄 | 排尿・排便パターン、リハビリパンツの使用、浣腸・摘便の管理 |
| 4 | 活動−運動 | ADL低下の経過、ベッド上の動き、セルフケア能力の評価 |
| 5 | 睡眠−休息 | 入眠困難、睡眠時間の短さ、睡眠薬を使わない意向への対応 |
| 6 | 認知−知覚 | 疼痛管理(オピオイド使用状況)、感覚機能、意思疎通能力 |
| 7 | 自己知覚−自己概念 | 「迷惑をかけている」という思い、ボディイメージの変化、自己効力感 |
| 8 | 役割−関係 | 独居の背景、友人・甥・民生委員との関係性、サポート体制の評価 |
| 9 | セクシュアリティ−生殖 | 終末期事例での本パターンの考え方と記載のコツ |
| 10 | コーピング−ストレス耐性 | 療養場所への迷い、経済的不安、ラジオや友人との交流によるコーピング |
| 11 | 価値−信念 | 死生観、神父との交流、故人との再会への思い、甥の支え |
順番通りに読んでもいいですし、実習で今まさに書いているパターンから読んでもOKですよ。
アセスメントに取り組む前に
最後に、これから各パターンの記事を読み進めるにあたって、一つだけお伝えしておきたいことがあります。
アセスメントに「たった一つの正解」はありません。同じ事例でも、着目する情報や解釈の切り口は人によって違いますし、それでいいんです。大切なのは、「なぜそう判断したのか」を自分の言葉で論理的に説明できるかどうかです。
この記事シリーズで紹介するアセスメントはあくまで一つの例です。「こういう考え方もあるんだな」というヒントとして活用してもらえたらうれしいです。
それでは、気になるパターンから読んでみましょう!








