ゴードンの11パターンの中で、「セクシュアリティ−生殖パターン」は「何を書けばいいのか一番困る」と感じる学生さんが圧倒的に多いパターンではないでしょうか。
特に高齢の終末期患者さんの事例だと、「書くことがない……」と手が止まってしまいますよね。でも大丈夫です。書くことが少ないパターンでも、きちんとした論理で「問題なし」と判断するプロセスを示すことがアセスメントの力になります。
この記事では、80歳・膵臓がんステージIVで在宅療養中のAさんの事例を使って、このパターンの考え方と記載のコツを解説していきます。
※ 事例の全体像やゴードン11パターンの概要については、こちらのまとめ記事をご覧ください。
事例のおさらい(簡易版)
Aさん 80歳 女性 膵臓がん(ステージIV)
3年前に診断。在宅療養中。余命6週間〜3ヶ月と告知済み。独居。40代で離婚、一人息子は30歳で病気により他界。婚姻期間中は専業主婦。
そもそも「セクシュアリティ−生殖パターン」って何を見るの?
このパターンでは、大きく分けて2つの視点から評価します。
① 生殖機能
妊娠・出産に関わる機能の状態を評価します。女性の場合は月経の有無、閉経の状況、過去の妊娠・出産歴なども含まれます。
② セクシュアリティ
性に関する自己認識、性的な関係性への満足度、病気や治療がセクシュアリティに与えている影響などを評価します。ただし、セクシュアリティは性行為だけを指すものではなく、自分の性別をどう認識しているか、親密な関係性をどう感じているかなど、幅広い概念です。
このパターンは、患者さんの年齢や状況によっては情報が限られることもありますが、それ自体は問題ではありません。「情報が限られている中で、どのように判断したか」を論理的に示すことが大切です。
ステップ① 事例から情報を抜き出す
S情報(Aさんの言葉)
※ セクシュアリティ−生殖パターンに関連するAさんの直接的な発言は、事例中にありません。
O情報(客観的な事実・観察情報)
- 80歳、女性
- 膵臓がんステージIV、余命6週間〜3ヶ月と告知されている
- 独居
- 40代で離婚
- 一人息子がいたが、30歳で病気により他界
このパターンに関する情報は非常に限られていますよね。でも、それでいいんです。少ない情報の中からどう判断するかを書くことが、このパターンのアセスメントです。
ステップ② アセスメントを書く
アセスメント例:セクシュアリティ−生殖パターン
【生殖機能の状況】
Aさんには一人息子がいた(30歳で他界)ことから、過去に妊娠・出産の経験があり、生殖機能に問題はなかったと考えられる。現在80歳であり、すでに閉経している年齢であるため、生殖機能に関する問題は存在しない。
【セクシュアリティの状況】
セクシュアリティに関する直接的な情報は事例中に得られていない。Aさんは80歳であり、40代で離婚して以降は単身で生活を続けている。現在は膵臓がんの末期で余命が限られている状況にある。これらの状況を総合的に考慮すると、現時点でセクシュアリティに関して看護上の問題が生じていることを示す情報はない。
ただし、セクシュアリティとは性行為に限定されるものではなく、性別に基づくアイデンティティや、人とのつながりの中で感じる親密さ、自分らしさの表現など、広い意味を持つ概念である。Aさんの場合、友人や甥、神父との温かい関係性の中で、人とのつながりや親密さは保たれていると考えられる。この点は、広義のセクシュアリティという視点からも肯定的に評価できる。


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【結論】
以上のことから、生殖機能については閉経後であり問題は存在しない。セクシュアリティに関しても、現時点で看護上の問題を示す情報はなく、広義の親密さや人とのつながりも保たれている。このことから、セクシュアリティ−生殖パターンは機能的パターンであると判断する。
アセスメントの書き方のコツ:ここを押さえよう
コツ① 「書くことがない」を恐れない
このパターンは、事例によっては情報がほとんどないこともあります。それは事例が不完全なのではなく、このパターンに関して問題が生じていないことの表れだと捉えましょう。
大切なのは「書くことがないから省略する」のではなく、「情報が限られた中で、問題がないと判断した根拠を述べる」ことです。短くてもいいので、論理的に書けばアセスメントとして成立します。
コツ② 生殖機能は「過去の情報」から推測する
80歳の女性患者さんに対して、生殖機能を現在進行形で評価する必要はありません。ポイントは以下の2点です。
① 過去の妊娠・出産歴 → 息子がいた = 過去に生殖機能に問題はなかった
② 現在の年齢 → 80歳 = すでに閉経しており、生殖機能の問題は存在しない
この2点を書けば、生殖機能の評価としては十分です。
コツ③ セクシュアリティを「性行為」だけで捉えない
セクシュアリティと聞くと性的な行為を連想しがちですが、看護におけるセクシュアリティはもっと広い概念です。
- 性別に基づく自己認識(ジェンダーアイデンティティ)
- 人とのつながりの中で感じる親密さや安心感
- 自分らしさの表現
Aさんの場合、友人との深い絆、甥との信頼関係、神父との精神的なつながりなどは、広い意味でのセクシュアリティの一部として評価できます。この視点を加えることで、「情報がないから何も書けない」という状態を脱することができますよ。
コツ④ 短くても「構造」は守る
このパターンのアセスメントは他のパターンに比べて短くなりがちですが、それでも「情報の提示 → 判断 → 結論」という構造は維持しましょう。
「問題ないです。機能的です。」の2行で終わるのではなく、なぜ問題がないと判断したのかを簡潔に説明することで、論理的なアセスメントになります。
よくある間違い・つまずきポイント
❌ 丸ごと省略する
「このパターンは高齢者だから関係ない」と判断して、アセスメントそのものを省略してしまうケースがあります。11パターンすべてを評価することがゴードンのアセスメントの基本です。短くてもいいので必ず記載しましょう。
❌ 「年齢的に問題なし」の一言で終わる
「80歳なので問題ありません」だけでは根拠が不十分です。少なくとも、生殖機能の評価(閉経後であること)とセクシュアリティの評価(問題を示す情報がないこと)の2点に分けて記述しましょう。
❌ 不必要に踏み込みすぎる
逆に、事例に情報がないにもかかわらず、性的な内容について推測を広げすぎるのもNGです。事例に示されている情報の範囲内で、簡潔かつ論理的に判断することがポイントですよ。
まとめ
セクシュアリティ−生殖パターンでは、以下の2つの視点が軸になります。
- 生殖機能:過去の妊娠・出産歴、現在の閉経状況
- セクシュアリティ:性に関する自己認識、親密な関係性、問題を示す情報の有無
Aさんの場合、閉経後であり生殖機能の問題はなく、セクシュアリティに関しても問題を示す情報はないことから、機能的パターンと判断しました。このパターンは短い記述でも構いませんが、「なぜ機能的か」の根拠は必ず示しましょう。
次の記事では、パターン10:コーピング−ストレス耐性パターンを解説します。Aさんの療養の場への迷い、経済的不安、ラジオや友人との交流によるコーピングをどう評価するか、見ていきましょう。
ゴードン11パターン|記事一覧
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