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ゴードンの考えによる看護の展開看護過程

【ゴードン】排泄パターンのアセスメント|終末期がん事例でわかりやすく解説

この記事は約9分で読めます。

ゴードンの11パターンの中で、「排泄パターン」は情報が比較的整理しやすい反面、便秘の原因分析で差がつくパターンです。

「排尿と排便をそれぞれ書けばいいんでしょ?」と思いがちですが、それだけでは浅いアセスメントになってしまいます。特に終末期がんの患者さんでは、便秘の原因が複数絡み合っているので、一つひとつ丁寧に分析していくことが求められますよ。

この記事では、80歳・膵臓がんステージIVで在宅療養中のAさんの事例を使って、排尿・排便・汗の排泄それぞれの評価の仕方を具体的に解説していきます。

※ 事例の全体像やゴードン11パターンの概要については、こちらのまとめ記事をご覧ください。


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事例のおさらい(簡易版)

Aさん 80歳 女性 膵臓がん(ステージIV)

3年前に診断。在宅療養中。要介護5。独居。一日のほぼすべてをベッド上で過ごす。腹水貯留あり、腹部膨満感が持続。オキシコドン徐放錠30mg/日、レスキュー用モルヒネ10mg/回を自己管理で服用。尿意はあるがリハビリパンツに排尿し、ベッド上で自力交換。排便は3〜4日に1回、訪問看護師が腹部マッサージ・浣腸(グリセリン浣腸40ml)・摘便で対応。入浴不可のため訪問看護時に全身清拭・手浴・足浴・洗髪・口腔ケアを実施。訪問看護:火・木・土10時。訪問介護:毎日19時半。訪問入浴:月・金10時。


そもそも「排泄パターン」って何を見るの?

このパターンで評価するのは、大きく分けて3つの排泄機能です。

① 排尿

尿意はあるか、排尿の方法(トイレ・ポータブルトイレ・おむつなど)、尿量・性状、失禁の有無などを評価します。

② 排便

排便の頻度・性状・量、便秘や下痢の有無、排便を促すために行っている処置(浣腸・摘便・下剤など)を評価します。便秘がある場合はその原因を分析することが重要です。

③ 汗の排泄(発汗・皮膚の清潔)

見落としがちですが、汗の排泄もこのパターンの評価項目です。発汗の状況や、皮膚の清潔が保たれているかを確認します。

つまり「体の中から外へ出るもの全般」を評価するパターンだと覚えておくとわかりやすいですね。


ステップ① 事例から情報を抜き出す

S情報(Aさんの言葉)

※ 排泄パターンに直接関連するAさんの発言は事例中に明示されていません。排便時の苦痛や不快感、排泄に対する思いなどについて、訪問時に聴取できる情報があればS情報として活用しましょう。

O情報(客観的な事実・観察情報)

  • 80歳、女性、膵臓がんステージIV
  • 腹水貯留による腹部膨満感あり
  • 腹部痛はオピオイドにより自制内
  • オキシコドン徐放錠 30mg/日、レスキュー用モルヒネ 10mg/回を服用中
  • 便秘時グリセリン浣腸40ml、摘便の指示あり → 訪問看護師が実施
  • 尿意はあるが、日中のほとんどを一人で過ごしているためリハビリパンツに排尿
  • ベッド上で自力にてリハビリパンツの交換が可能
  • 排便は3〜4日に1回のペース
  • 訪問看護師による腹部マッサージ、浣腸、摘便にて排便管理
  • 一日のほぼすべてをベッド上で過ごしている
  • 下肢浮腫および全身の倦怠感が顕著、歩行不可能
  • 自力での起立は困難だが、ベッド上で臀部をわずかに持ち上げることは可能
  • 入浴不可 → 訪問看護時に全身清拭、手浴・足浴、洗髪、口腔ケアを実施
  • 訪問看護:火・木・土 10時、訪問介護:毎日19時半、訪問入浴:月・金 10時

ステップ② アセスメントを書く

排泄パターンでは、排尿→汗の排泄→排便の順に書いていくと、最も問題が大きい「排便」を丁寧に分析する流れが作りやすいですよ。


アセスメント例:排泄パターン

【排尿の状況】

 Aさんは尿意を自覚することができており、リハビリパンツを使用して排尿している。また、リハビリパンツの交換もベッド上で自力にて行うことが可能である。自力での起立やトイレへの移動は困難であるが、臀部を持ち上げる動作ができるため、パンツの上げ下ろしを含めた交換動作が自立している。加えて、訪問看護や訪問介護による支援も日常的に行われていることから、排尿に関する管理には現時点で大きな問題はないと判断できる。

【汗の排泄・皮膚の清潔】

 発汗に関する詳細な情報は得られていないが、Aさんは入浴が体力的に不可能であるため、訪問看護時に全身清拭、手浴・足浴、洗髪が実施されている。また、週2回の訪問入浴介護も利用している。これらのケアにより、皮膚の清潔を保つための対応は適切に実施されていると考えられる。

【排便の状況】

 Aさんの排便頻度は3〜4日に1回であり、自力での排便が困難な状態にある。排便時には訪問看護師が腹部マッサージ、グリセリン浣腸(40ml)、摘便を行っており、これらの介入なしには排便が得られない状況である。このことから、排便習慣は適切に維持されているとはいえない

 また、便の性状(硬さ・形状)に関する詳細な情報は記載されていないが、排便頻度の低さと浣腸・摘便が必要な状態であることを踏まえると、便が硬化している可能性が高い。便の性状について継続的に観察・記録し、排便コントロールの指標として活用する必要がある。

【便秘の原因分析】

 Aさんの便秘には、以下の複数の要因が複合的に関与していると考えられる。

 第一に、加齢による腸蠕動運動の低下である。80歳という高齢であるAさんは、加齢に伴う身体機能の低下により腸管の蠕動運動が減弱しており、腸内容物の移送が遅延しやすい状態にある。大便が腸内に長時間とどまることで水分が過剰に吸収され、便が硬くなって排出困難となる。また、排便に必要な腹筋や肛門括約筋の筋力も加齢とともに低下しており、便を押し出す力が弱まっている。さらに、直腸の知覚が鈍化して便意を感じにくくなることも、便秘を助長する要因となる。

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 第二に、腹水貯留による腸管への影響である。Aさんには腹水の貯留があり、これにより腸管のうっ血が引き起こされている。腸管がうっ血すると消化機能が低下し、食欲不振にもつながるため、便そのものが形成されにくくなる。腹部膨満感の持続も、腸管の正常な運動を阻害する因子となっている。

 第三に、長時間の臥床である。Aさんは全身の倦怠感と疼痛のため、一日のほぼすべてをベッド上で過ごしている。身体活動の著しい低下は腸管の蠕動運動をさらに減弱させ、腸内容物の通過時間が延長することで便秘が悪化する。

 第四に、オピオイド系鎮痛薬の副作用である。Aさんが服用しているオキシコドンおよび経口モルヒネは、消化管の蠕動運動を抑制する作用を持つ。オピオイドは消化酵素の分泌を抑えるとともに、腸管の運動を直接的に抑制するため、腸管内での食物通過時間が延長する。その結果、腸管内での水分吸収が過剰に進み、便が硬くなって排出が困難となる。オピオイド誘発性便秘(OIC: Opioid-Induced Constipation)は、オピオイド使用患者において非常に高い頻度で発生する副作用であり、Aさんの便秘の主要な原因の一つであると考えられる。

【結論】

 以上のことから、排尿についてはAさんは尿意を自覚しリハビリパンツの自力交換も可能であり、排尿管理に問題はない。汗の排泄に関しても、訪問看護師による全身清拭や訪問入浴介護を通じて皮膚の清潔が保たれている。しかし、排便については、加齢による腸蠕動運動の低下、腹水貯留に伴う腸管のうっ血、長時間の臥床による活動量の低下、オピオイド系鎮痛薬の副作用という複数の要因が重なり、便秘が生じている。排便頻度は3〜4日に1回であり、訪問看護師による浣腸や摘便がなければ排便が得られない状態である。このことから、排泄パターンは機能障害的パターンであると判断する。

 看護上の問題として、腹水貯留、加齢や長時間の臥床に伴う腸蠕動運動の低下、オピオイド系鎮痛薬の副作用によって便秘が生じていることが挙げられる。今後の対応としては、便の性状の継続的な観察・記録、排便スケジュールの調整、腹部マッサージの効果的な実施方法の検討、また主治医と連携した緩下剤の導入の検討などが考えられる。


アセスメントの書き方のコツ:ここを押さえよう

コツ① 排尿・排便・汗を分けて書く

排泄パターンでは、排尿・排便・汗の排泄という3つの領域をそれぞれ分けて評価するのが基本です。ごちゃ混ぜに書いてしまうと、何が問題で何が問題でないのかが見えにくくなりますよね。

Aさんの場合、排尿と汗の排泄は問題なし、排便は機能障害あり、と明確に分かれます。この「問題あり・なし」の切り分けをはっきりさせることで、結論に説得力が出ますよ。

コツ② 便秘の原因を「複数」挙げて分析する

「便秘です」で終わると、アセスメントにはなりません。なぜ便秘になっているのかを分析することが最も重要な部分です。

Aさんの場合、便秘の原因は一つではありません。

Aさんの便秘の原因(4つ)

① 加齢 → 腸蠕動の低下、腹筋・括約筋の筋力低下、直腸知覚の鈍化
② 腹水貯留 → 腸管のうっ血、消化機能の低下
③ 長時間の臥床 → 活動量低下による蠕動運動の減弱
④ オピオイド → 消化管蠕動の抑制、腸管通過時間の延長

このように原因を一つずつ丁寧に挙げて、それぞれがどのメカニズムで便秘につながるのかを説明することが求められます。教員が評価するのは「原因を何個挙げたか」ではなく、「メカニズムを理解して説明できているか」ですよ。

コツ③ オピオイド誘発性便秘(OIC)に触れる

終末期がんの事例でオピオイドを使っている場合、OIC(Opioid-Induced Constipation)に言及できると、アセスメントの質がぐっと上がります。

OICはオピオイドを使用している患者さんに非常に高い頻度で起こる副作用です。単に「薬の副作用で便秘になる」と書くのではなく、「蠕動運動の抑制により腸管通過時間が延長し、水分の過剰吸収によって便が硬化する」というメカニズムまで書けると、深い理解を示せますね。

コツ④ 「問題ない領域」もきちんと書く

排便に問題があるからといって、排尿や汗の排泄を省略してはいけません。「問題がない」こともアセスメントの一部です。

「排尿については尿意があり、パンツ交換も自力で可能なため問題はない」と明記することで、排泄パターン全体を評価したうえで排便に焦点を当てていることが伝わります。


よくある間違い・つまずきポイント

❌ 「便秘がある」と書いて原因分析をしない

これが最も多い間違いです。「排便は3〜4日に1回なので便秘である」……それはO情報のまとめであってアセスメントではありません。「なぜ3〜4日に1回なのか」を分析するのがアセスメントですよ。

❌ 汗の排泄を完全に忘れる

排泄パターンというと排尿と排便にばかり目が行きがちですが、汗の排泄(発汗と皮膚の清潔)もこのパターンの評価項目です。情報が少なくても、「発汗に関する詳細な情報はないが、全身清拭が実施されており清潔は保たれている」と記載しましょう。

❌ 排便の問題を栄養パターンに書いてしまう

「食事が摂れていないから便が作られない」という内容は、確かに栄養とも関連しますが、排便の状態や便秘の評価はこのパターンで行います。栄養パターンで「食欲低下」を書き、排泄パターンで「便秘の原因として食事摂取量の低下も影響している」と書く、という形でパターンごとに視点を変えて記載するのがコツですね。

❌ 便の性状について触れない

事例に便の性状(ブリストルスケールなど)の情報がない場合でも、「性状に関する情報は不足しているが、排便間隔の長さから硬便が推測される」と記載すれば、情報不足を認識していることを示せます。「情報がないから書かない」ではなく、「情報がないことを書く」のもアセスメントのスキルですよ。


まとめ

排泄パターンでは、以下の3つの領域を分けて評価します。

  • 排尿:尿意の有無、排尿方法、自力管理の可否
  • 汗の排泄:発汗の状況、皮膚の清潔保持
  • 排便:頻度・性状、便秘の原因分析、必要な介入の評価

Aさんの場合、排尿は自立しており汗の排泄についても清潔ケアが行われていますが、排便については加齢・腹水・臥床・オピオイドという4つの原因が重なって便秘が生じており、看護師の介入なしには排便が困難です。このことから機能障害的パターンと判断しました。

次の記事では、パターン4:活動−運動パターンを解説します。Aさんの著しいADL低下やセルフケア能力の評価をどう書くか、一緒に見ていきましょう。


ゴードン11パターン|記事一覧

No. パターン
1 健康知覚−健康管理
2 栄養−代謝
3 排泄(この記事)
4 活動−運動
5 睡眠−休息
6 認知−知覚
7 自己知覚−自己概念
8 役割−関係
9 セクシュアリティ−生殖
10 コーピング−ストレス耐性
11 価値−信念

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